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しおりを挟む「レイ?」
黙ってしまった私を心配そうな眼差しで見つめてくる皇太子殿下。
「私の子を身籠ったことは嬉しくなかったのかい?」
「いいえ。そんなことはありません。とても、嬉しいことです。でも・・・今、私なにかを一瞬思い出したような気がして・・・。」
「何を思い出したの?」
「・・・わかりません。」
本当の一瞬だけ頭をよぎったのだから、あれがいったいなにかと聞かれたら、わからないとしか答えられない。
でも、思い出してはいけない何かを思いだしかけていたような気がする。
「君のお腹にいる子は魔力の量が多いのかな?魔力の量が多いと母体へ何かしらの影響がでると言われている。一週間も待てないな。今すぐ私と一緒暮らそう。」
皇太子殿下はそう言って、私の手をぎゅっと握った。まるで、もう離さないと言っているようにも思えた。
この国では魔力の高い子を身ごもると母体になんらかの影響がでると言われている。一概にどのような影響がでるかはわかっていないが、一般的には感覚が人よりすぐれると言われている。
それ以外にも、妊娠中だけ未来を垣間見ることができたり、人が思っていることがわかるようになるなど様々な影響があるという。
それがお腹の中の子が持つ力に影響されているとも言われているが定かではない。
なぜならば母体に影響をあたえるほどの魔力量を持って産まれてくる子は建国以来数えるほどしかいないのだから。
「私でしたら大丈夫です。今まで母体に悪影響を及ぼした影響はないのでしょう?」
「ない。が、しかし心配だ。私が常にそばにいたいのだ。そばにいさせてはくれないか?」
「はい。皇太子殿下。」
「ありがとう。では、これからすぐに向かおう。レイの部屋の準備ができるまでは私の部屋で暮らすことになるだろう。」
こうして、私は妊娠がわかると同時にエドワード皇太子殿下の住まう皇太子宮に居を移すことになった。
もちろん、両親も心配はしていたが他でもない皇太子殿下が決めたということでもあり、反論はできなかった。
せめてもとして、毎日、母が皇太子宮を訪れて私の話し相手をするということになった。
「レイ。愛している。こうして一緒の部屋にいるのに君を抱けないだなんて・・・。」
「ごめんなさい。」
「いいんだ。ここに私の子がいるのだから、大事にしなければね。こうしてレイを抱き締めて寝ることができる。それだけで私は幸せだよ。」
夜。皇太子殿下の寝室で抱き締めあいながら眠った。
それはとても幸せな日であり、そうして同時にとても辛い日々の幕開けとなった。
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