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第3話 大好きなお姉さまを裏切る日
しおりを挟む大好きなステラお姉さまを裏切る日。その日は唐突に私の元へとやってきた。
「ああ、メリッサ嬢。こんにちは。ステラ嬢はいるかい?」
「スチュワード王太子殿下。ごきげんよう。ステラお姉さまのお仕度はもう少しかかりそうなんですの。しばらく応接室でお待ちいただけますか?私がご案内させていただきます。」
スチュワード王太子殿下はこの日、ステラお姉さまと観劇に行く約束をされていた。ステラお姉さまはスチュワード王太子殿下とのデートを心待ちにしており現在ドレスアップ中なのだ。どのドレスにしようか珍しくステラお姉さまが悩まれてしまい約束の時間に遅れてしまっている。
私はスチュワード王太子殿下を応接室に案内すると、そのままステラお姉さまの代わりにスチュワード王太子殿下のお相手をする。ステラお姉さまがスチュワード王太子殿下のお相手を出来ない時は私がお相手をするのが習慣となっているのだ。
だからこの日も私がスチュワード王太子殿下のお相手をした。それがそもそもの間違いだったのだ。
今日のステラお姉さまのドレスは新調したものだ。しかも、ステラお姉さまが私の意見をふんだんに取り入れてくださりオーダーメイドしたドレスだ。今日そのドレスにステラお姉さまは初めて袖を通す。出来上がったドレスは私も見たがとても素敵なものに仕上がっていた。このドレスをステラお姉さまが着たらどんなに素晴らしいのかと思うだけでもドキドキと胸が高鳴ってしまう。
あどけなさを残しつつも少しだけ大胆なスリットが入っている。色白のステラお姉さまに似合うように、真っ赤なドレスに薔薇の花をあしらったようなレースを散りばめている。
ステラお姉さまの魅力を最大限に引き立てるためのドレスになっているはずなのだ。ドレスを着たステラお姉さまを想像して悦に浸っていた私は、スチュワード王太子殿下の前で失態をおかしてしまった。
「今日のステラお姉さまのドレスはステラお姉さまと私が話し合ってデザインしたものですの。まだ一度も袖を通していないんですわ。」
「そうなんだ。それはとても楽しみだね。メリッサ嬢はステラ嬢のことをよく見ているから、きっとステラ嬢の魅力を引き立ててくれるんだろうね。誰にも見せたくないなぁ。」
「そうなんですの!ステラお姉さまをきっとより魅力的にみせてくださいますわ。私もステラお姉さまのドレス姿が楽しみで仕方がありませんの。」
スチュワード王太子殿下と私はステラお姉さまの話題で盛り上がっていた。だから、つい羽目を外してしまった。
「今日の観劇の帰り道は要注意でしてよ。噴水の前は馬車で通らず、遠回りをして帰って来てください。」
「どうしてだい?」
「観劇の帰りに噴水の前を通ると、ステラお姉さまが事件に巻き込まれてしまって怪我をしてしまいますの。だから、絶対に噴水の前は通らぬようにお願いしますわ。」
「君はどうしてそんな未来のことがわかるんだい?」
「だって、私は未来視ができますもの。」
私は今朝の未来視で見たことを何気なくスチュワード殿下に話してしまったのだ。未来視のことは誰にも言っていなかったのに。
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