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二人のルーンファクト様

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「る、るるるるルーンファクト殿下っ!!?」

「えっ?ルーンファクトさまぁ?」

「あっ……。」

「あちゃー。来ちゃったかぁ……。」

 何もこんなに混乱しているときに来なくてもいいのに、本物のルーンファクト様がやってきた。ルーンファクト様は部屋の中にファルがいるのを見つけて顔をしかめた。

「ああ、ファントムも来ていたのか……。これは、まずかったな。」

「ルーンファクトさまがお二人……?」

 さすがのアルフォネアもこれには驚きを隠せないようだった。しきりにファルとルーンファクト様の顔を交互に見ている。お父様も同じだ。何度もファルとルーンファクト様を見て首を傾げている。

「いや……これにはわけがあってだな……。」

「ルーンファクトさまがお二人……?どういうこと?」

「オレはルーンファクト様の影武者のファントムだ。」

 居直ったようにファルが胸を張っていった。

「……影武者。風の噂かと思っていたが、こうも見分けがつかぬほどそっくりだとは……。」

 お父様が先ほどまでのことを忘れたように感心しきったように顎を撫でながら頷いた。

「……影武者?え?私の子はルーンファクト様の子よね?影武者なんかの子じゃないわよね?いやよ!私はルーンファクト様と婚姻を結ぶのよ!」

 アルフォネアのお腹の子がファルの子かもしれないということに気づいて、アルフォネアは嫌だ嫌だと悲鳴をあげた。

「……なんの話だ?」

 ルーンファクト様はアルフォネアの異常な発言に気がついたようだ。ルーンファクト様の表情が険しくなった。その視線の先にはファルがいる。

「違いますって!オレはアルフォネアには入れてません!」

「そうですわっ!!私のお子はルーンファクト様のお子です!影武者なんかの子ではありません!そうですわよね?ルーンファクト様?この子はルーンファクト様の子ですわよね?」

 アルフォネアは本物のルーンファクト様の服の裾を握って上目遣いで尋ねる。

「私はアルフォネア嬢には指一本たりとも触れてはいないが……?子がいるとするならば、ファントムの子だと思うが?」

「そ、そんな……。」

 アルフォネアはルーンファクト様の言葉に絶望した表情をした。そして、ふらふらと床に倒れ込む。

「違いますって!誤解ですってば!!」

 ファルはルーンファクト様に言うが、ルーンファクト様は相手にもしない。

「そんな……そんな……私の子が……あ、いたっ……痛いっ……。」

 アルフォネアはうわごとのように呟いたあとに、お腹を抱えて蹲った。ドレスの裾から血が伝い落ちる。

「あっ……血が……。」

 アルフォネアはそう言ったあと、意識を失ってその場に倒れ込んでしまった。

「アルフォネア!!誰かお医者様を!!お医者様を呼んでくださいっ!!」

「は、はい!ステファニー様!!今すぐに!!」

 気を失って倒れ込んだアルフォネアに近寄る。そばにいた侍女のニコルに医者を手配するようにいった。

「お父様!アルフォネアを部屋に運びますわ。ルーンファクト様、ファル、私はアルフォネアに付き添います。お父様、ルーンファクト様とファルのことをよろしくお願いいたします。」

 男性の使用人を呼んで、アルフォネアを抱き上げてもらい、アルフォネアの部屋に運ぶように指示する。ルーンファクト様とファルのことはお父様に頼んで、私はアルフォネアに付き添うことにした。

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