上 下
21 / 36

アルフォネアが乱入してきました……

しおりを挟む


「ルーンファクトさまぁ~。いらしてたんですねぇ。」

 ファルと話しているとノックもなしに応接室のドアがバンッと開いた。

「アルフォネアお嬢様っ!お待ちくださいませっ!お客様がいらしているのですから急にドアを開けてはなりませんっ。」

「もう!いいじゃない!ルーンファクト様は私の旦那様になる方なんだからっ!」

 アルフォネアを侍女のニコルが止めるが、アルフォネアは気にすることもなくルーンファクト様のそっくりさん……ファルに駆け寄っていった。そして、ファルにぎゅっと抱きつく。

「もう!いらっしゃっていたのならすぐに教えてくださいませっ!アルフォネアはルーンファクト様にお会いしたくて仕方なかったのですわ。昨日はルーンファクト様ったらとっても他人行儀だったし、心配していたんですよ。アルフォネアに心配をかけるルーンファクト様は悪い人ですっ!」

 頬をぷくっと膨らませてファルに言いつのる。

 ファルはルーンファクト様じゃないのに。

 昨日本物のルーンファクト様に会ったというのに、アルフォネアにはルーンファクト様とファルの違いもわからないのだろうか。それでよく好きだと言えるものだ。

「あー。アルフォネア嬢。私は君のお姉さんのステファニー嬢と結婚する予定であって、アルフォネア嬢は将来私の義妹になるんだよ。」

「まあ!そんなっ!!王妃様も私にはルーンファクト様が相応しいとおっしゃっておりましたわっ!ルーンファクト様は私の旦那様になるのですわ。ルーンファクト様はお姉様の旦那様にはなりませんの!」

 アルフォネアはそう言ってファルにひっついた。

 まあ、ファルだからまだいいんだけど、これが本物のルーンファクト様だったら許せなかったわね。

「えっと、アルフォネア嬢?私の話を聞いているかい?」

「ええ!もちろんですわっ。ルーンファクト様も私に会いたかったのでしょう?だからお姉様をダシにして私に会いに来てくださったのでしょう。知っているんですよ。」

「はははっ。アルフォネア嬢は面白いね。私は君ではなくステファニー嬢に会いに来たんだよ。私の婚約者であるステファニー嬢に会いにきたんだ。私じゃあ君に相応しくないからね。」

「そんなことありませんわっ!私、ルーンファクト様以上に素敵な方にお会いしたことはございませんの。ルーンファクト様が一番ですわ。お姉様にはルーンファクト様はもったいなさ過ぎますっ!ルーンファクト様の隣には私こそが相応しいのですわ。」

「あー。君が魅力的なのは知っているが、私にはステファニー嬢の方が好みなんだよ。」

「まあ!そんなっ。お姉様が目の前にいらっしゃるからそんなこと言うのでしょう?こないだは私のことを愛しているとおっしゃったではありませんかっ。私が一番だっておっしゃっていたではありませんか。」

 アルフォネアは目にたっぷりと涙をためてファルを見つめる。

 まあ、確かにファルはアルフォネアに愛を囁いたのだろう。アルフォネアと関係を持つために。ルーンファクト様に嫌がらせをするために。

「はっはははっ。婚約者がいる男の言葉を本気にしちゃいけないよ?アルフォネア嬢。」

 ファルは乾いた笑いを浮かべながら視線を私に移した。その目は私に助けてくれと訴えているように見えた。

 助けてくれもなにもファルの自業自得だと思うのだけれども。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

冷酷非情の雷帝に嫁ぎます~妹の身代わりとして婚約者を押し付けられましたが、実は優しい男でした~

平山和人
恋愛
伯爵令嬢のフィーナは落ちこぼれと蔑まれながらも、希望だった魔法学校で奨学生として入学することができた。 ある日、妹のノエルが雷帝と恐れられるライトニング侯爵と婚約することになった。 ライトニング侯爵と結ばれたくないノエルは父に頼み、身代わりとしてフィーナを差し出すことにする。 保身第一な父、ワガママな妹と縁を切りたかったフィーナはこれを了承し、婚約者のもとへと嫁ぐ。 周りから恐れられているライトニング侯爵をフィーナは怖がらず、普通に妻として接する。 そんなフィーナの献身に始めは心を閉ざしていたライトニング侯爵は心を開いていく。 そしていつの間にか二人はラブラブになり、子宝にも恵まれ、ますます幸せになるのだった。

辺境伯令息の婚約者に任命されました

風見ゆうみ
恋愛
家が貧乏だからという理由で、男爵令嬢である私、クレア・レッドバーンズは婚約者であるムートー子爵の家に、子供の頃から居候させてもらっていた。私の婚約者であるガレッド様は、ある晩、一人の女性を連れ帰り、私との婚約を破棄し、自分は彼女と結婚するなどとふざけた事を言い出した。遊び呆けている彼の仕事を全てかわりにやっていたのは私なのにだ。 婚約破棄され、家を追い出されてしまった私の前に現れたのは、ジュード辺境伯家の次男のイーサンだった。 ガレッド様が連れ帰ってきた女性は彼の元婚約者だという事がわかり、私を気の毒に思ってくれた彼は、私を彼の家に招き入れてくれることになって……。 ※筆者が考えた異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。クズがいますので、ご注意下さい。

踏み台令嬢はへこたれない

三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

婚約破棄された枯葉令嬢は、車椅子王子に溺愛される

夏海 十羽
恋愛
地味な伯爵令嬢のフィリアには美しい婚約者がいる。 第三王子のランドルフがフィリアの婚約者なのだが、ランドルフは髪と瞳が茶色のフィリアに不満を持っている。 婚約者同士の交流のために設けられたお茶会で、いつもランドルフはフィリアへの不満を罵詈雑言として浴びせている。 伯爵家が裕福だったので、王家から願われた婚約だっだのだが、フィリアの容姿が気に入らないランドルフは、隣に美しい公爵令嬢を侍らせながら言い放つのだった。 「フィリア・ポナー、貴様との汚らわしい婚約は真実の愛に敗れたのだ!今日ここで婚約を破棄する!」 ランドルフとの婚約期間中にすっかり自信を無くしてしまったフィリア。 しかし、すぐにランドルフの異母兄である第二王子と新たな婚約が結ばれる。 初めての顔合せに行くと、彼は車椅子に座っていた。 ※完結まで予約投稿済みです

どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?

石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。 ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。 彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。 八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。

処理中です...