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この人は本当にルーンファクト様……?

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「……アルフォネアにはルーンファクト殿下には近づかないように私からもう一度言っておく。」

 お父様は苦虫をかみつぶしたような表情をしながら言った。
 「もう一度」ということは、お父様は一度アルフォネアに注意したのだろうか。

「ステファニーは安心なさい。アルフォネアにはこれ以上ひっかきまわさないように私からも言っておくわ。」

 お母様はそう言って疲れたような笑みを浮かべた。

「……はい。わかりました。」

 お父様にもお母様にも疲れたような表情が見て取れたので、私は頷くことしかできなかった。それに、アルフォネアが妹ではなくて本当は従姉妹だということがわかったし。
 お父様もお母様も幼くして母親を無くしたアルフォネアを哀れと思って甘やかしたのだろう。
 お母様の妹の娘だとしても、父親は誰だかわからないのだし。この侯爵家を継ぐことも、王家に嫁ぐこともないと思って甘やかしたのだと思う。

 私はお父様とお母様にお辞儀をして、部屋を出た。
 気晴らしに庭を散策したいが、庭の東屋で真っ昼間からアルフォネアとルーンファクト様がいたしていたのだ。鉢合わせをしてしまったらと思うと庭にでることができない。
 さて、どこに行こうか、と思っているとタイミングの悪いことに前方からアルフォネアとルーンファクト様が腕を組んで歩いてくるのがわかった。
 腕を組んでというより、ルーンファクト様がアルフォネアに腕を貸しているようにも見受けられるが。
 一瞬逃げようかとも思ったが、廊下は一直線でありとても逃げられない。
 迷っている間にアルフォネアと目があってしまった。

「あら、お姉様。お庭でルーンファクト様とお会いしたの。うふふ。だからお父様とお母様の元にルーンファクト様をご案内しているのよ。」
「……そう、ですの。」

 アルフォネアは上気した頬で私に説明してくる。

「うふふ。お姉様の代わりに私がルーンファクト様の婚約者になりますわ。ね?ルーンファクト様?」

 アルフォネアはそう言ってルーンファクト様にしなだれかかった。
 ルーンファクト様の表情はピクリとも変わらない。

(……あれ?この方、本当にルーンファクト様でしょうか?)

 アルフォネアと一緒にいるルーンファクト様を間近で見て、微かな違和感を覚えた。
 どこか私の知っているルーンファクト様と違うような気がしたのだ。

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