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「ぴぃーーー!!ぴぃーーーー!!」
「むっ!シラネ!リューニャに引っ付いていいのは妾だけなのじゃ!離れるのじゃ!!」
シラネ様がオレに抱きつくと、ぴぃちゃんとトリスから抗議の声があがった。二人(?)とも、シラネ様を押しのけるようにオレに引っ付いてくる。トリスのマシュマロみたいに柔らかい胸がオレの腕に当たった。
……やっぱりシラネ様とトリスを比べると、どうしてもシラネ様って……。
オレは、そっとシラネ様に視線を移す。
「ちょっと!!あなたたちは引っ込んでなさいっ!あなたたちは魔物でしょう!!」
「独り占めは良くないのじゃ!それに、人間でも魔物でも関係ないのじゃ。妾はリューニャのことが気に入っておる。ただ、それだけのことじゃ。ぴぃちゃんもそうであろう?」
「ぴぃっ!ぴぃっ!!」
トリスの言葉に同調するように、ぴぃちゃんが頷く。
それを見て、更にシラネ様のイライラ度が上昇する。
「でも、冒険者としては私の方が経験値が上なんだからっ!!あなたたちには負けないわっ!!」
シラネ様はどんどんヒートアップしてくる。このままだと、トリスやぴぃちゃんに攻撃魔法を放ちかねない。そう思ってシラネ様を止めようとする。この場で攻撃魔法でも放たれてしまったら、トリスやぴぃちゃんだけではなく他の冒険者たちにも被害が出かねない。
「ま、まあ。シラネ様。落ち着いて落ち着いて。」
「ねえ!リューニャは私と一緒に行くでしょう!一緒にいてもいいでしょう!リューニャは私が必要よね?ねえ、お願いよ。必要だと言って。攻撃魔法が使えない私でも必要だと言ってよ。ねえ、お願いよ。」
「えっ……。ちょ……し、シラネ様っ!?」
シラネ様は攻撃魔法を放つどころか、泣き出してその場にペタンッと座り込んでしまった。
プライドが高く我儘なきらいがあるシラネ様だから、相手を攻撃するようなことがあっても、まさかシラネ様が泣きだすとは思ってもみなかったオレは盛大に慌てた。
トリスもぴぃちゃんもシラネ様が泣きだすとは思ってもみなかったようで、こちらも慌ててオレから離れると、シラネ様を見てオロオロと狼狽えだす。
……魔物であるトリスやぴぃちゃんが人間であるシラネ様が泣いているのを見て取り乱すのも不思議な光景である。そして、シラネ様が攻撃魔法を使えないのも、オレにとっては衝撃的だった。
そう言えば、シラネ様に出会った時も窮地に陥っていたのに、回復魔法しかかけていなかったなと思い出す。
「えっと……オレ、見習い料理人だし、冒険者になったとしてもシラネ様の足手まといにしかならないかと思うんだけど、そんなオレでもシラネ様と一緒にいてもいいのかな?」
「……いいに、決まってるじゃないっ!」
オレはシラネ様と視線を合わせるようにして屈みこむ。
オレでもいいのかとシラネ様に問いかけると、シラネ様は涙を拭いながら、そっぽを向いて照れ臭そうに叫んだ。
……あれ?もしかして、シラネ様って可愛い?
「むっ!シラネ!リューニャに引っ付いていいのは妾だけなのじゃ!離れるのじゃ!!」
シラネ様がオレに抱きつくと、ぴぃちゃんとトリスから抗議の声があがった。二人(?)とも、シラネ様を押しのけるようにオレに引っ付いてくる。トリスのマシュマロみたいに柔らかい胸がオレの腕に当たった。
……やっぱりシラネ様とトリスを比べると、どうしてもシラネ様って……。
オレは、そっとシラネ様に視線を移す。
「ちょっと!!あなたたちは引っ込んでなさいっ!あなたたちは魔物でしょう!!」
「独り占めは良くないのじゃ!それに、人間でも魔物でも関係ないのじゃ。妾はリューニャのことが気に入っておる。ただ、それだけのことじゃ。ぴぃちゃんもそうであろう?」
「ぴぃっ!ぴぃっ!!」
トリスの言葉に同調するように、ぴぃちゃんが頷く。
それを見て、更にシラネ様のイライラ度が上昇する。
「でも、冒険者としては私の方が経験値が上なんだからっ!!あなたたちには負けないわっ!!」
シラネ様はどんどんヒートアップしてくる。このままだと、トリスやぴぃちゃんに攻撃魔法を放ちかねない。そう思ってシラネ様を止めようとする。この場で攻撃魔法でも放たれてしまったら、トリスやぴぃちゃんだけではなく他の冒険者たちにも被害が出かねない。
「ま、まあ。シラネ様。落ち着いて落ち着いて。」
「ねえ!リューニャは私と一緒に行くでしょう!一緒にいてもいいでしょう!リューニャは私が必要よね?ねえ、お願いよ。必要だと言って。攻撃魔法が使えない私でも必要だと言ってよ。ねえ、お願いよ。」
「えっ……。ちょ……し、シラネ様っ!?」
シラネ様は攻撃魔法を放つどころか、泣き出してその場にペタンッと座り込んでしまった。
プライドが高く我儘なきらいがあるシラネ様だから、相手を攻撃するようなことがあっても、まさかシラネ様が泣きだすとは思ってもみなかったオレは盛大に慌てた。
トリスもぴぃちゃんもシラネ様が泣きだすとは思ってもみなかったようで、こちらも慌ててオレから離れると、シラネ様を見てオロオロと狼狽えだす。
……魔物であるトリスやぴぃちゃんが人間であるシラネ様が泣いているのを見て取り乱すのも不思議な光景である。そして、シラネ様が攻撃魔法を使えないのも、オレにとっては衝撃的だった。
そう言えば、シラネ様に出会った時も窮地に陥っていたのに、回復魔法しかかけていなかったなと思い出す。
「えっと……オレ、見習い料理人だし、冒険者になったとしてもシラネ様の足手まといにしかならないかと思うんだけど、そんなオレでもシラネ様と一緒にいてもいいのかな?」
「……いいに、決まってるじゃないっ!」
オレはシラネ様と視線を合わせるようにして屈みこむ。
オレでもいいのかとシラネ様に問いかけると、シラネ様は涙を拭いながら、そっぽを向いて照れ臭そうに叫んだ。
……あれ?もしかして、シラネ様って可愛い?
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