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番外編
3
しおりを挟むユキさんが案内してくれたのは、村の一角にある田んぼだった。
田んぼには川の水を引いている。その水の道にうなぎがいるのだとか。
「どろの中に普段は隠れていると聞いているわ。だからね、田んぼで農作業をしている村人はうなぎを何度も見たことがあるというのよ。でも、ぬるぬるしているし見た目は蛇に似ているでしょう?だから捕まえて食べようとした人はいないわ。」
ユキさんは道すがらにうなぎについて教えてくれた。
「マユー!水の中になんかいるの!!」
「うなぎかなぁ?」
「うなぎかもねぇ。」
ユキさんに教えてもらった田んぼに到着すると、マーニャたちが水の中を覗き込んでなにやらはしゃいでいる。どうやらもううなぎを見つけたようだ。
って。マーニャたちはうなぎがどんなものか知っているのだろうか。
「まあ、もう見つけたのね。どこにいるのかしら?」
ユキさんはマーニャたちが見つめる先を確認する。すると、そこには確かに何かが居た。川から引いている水道の側面の泥がうごめいているのだ。
だが、それだけでは私には何が居るのかは判別がつかなかった。
それはユキさんも同じようで首を傾げている。
「あらあら。本当ね。なにかがいるみたいだわ。」
「きっとうなぎなのっ!!捕まえるのー!!」
「えー。クーニャは嫌なの。水の中にいるんだよぉ。濡れるの嫌いっ!!」
「尻尾見えたのっ!!うねうね動いてるのっ!!しゅりょうほんのうが刺激されるのーーっ!!」
ここでも、クーニャはやる気がでないようだ。もともと川魚が嫌いということもあるし、濡れるのも大っ嫌いなので一歩引いた構えをしている。
それが普通だろう。
むしろ水が嫌なのに、大っ嫌いなのにうなぎに目を輝かせて自分が捕まえると意気込んでいるマーニャとボーニャがおかしいのだ。
「にゃ……にゃ……にゃ……。」
ボーニャの目はすでに捕食者の目になっている。真剣に水の中に居るうなぎを見つめて、小さな声で鳴きながらいつでも飛びかかれる体勢になる。
マーニャは嬉しそうに尻尾を大きく振りながらお尻を上に持ち上げている。どうやらマーニャも飛びかかろうとしているようだ。
「にゃ……にゃ……にゃ……。」
「にゃ……にゃ……にゃ……。」
マーニャとボーニャが競うように声をあげる。
そして、
バッシャーーーーーーーーンッ!!
二匹は水に飛び込んだ。
「にゃーーー!!にゃーーーー!!にゃーーーーー!!」
「にゃーーー!!にゃーーーー!!にゃーーーーー!!」
水の中でジタバタと藻掻く猫が二匹。もちろん、うなぎを捕まえると意気込んで水に飛び込んだマーニャとボーニャに決まっている。
「にゃーーー!!にゃーーーー!!にゃーーーーー!!」
「にゃーーー!!にゃーーーー!!にゃーーーーー!!」
どうやら水に飛び込んでから、自分たちが大っ嫌いな水に濡れている状態であるということに気がついたらしい。必死になって鳴き声をあげている。
「すぐに助けるから待っていなさいっ!!」
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