婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚

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番外編

マーニャの鰻捕獲大作戦 1

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「はぁ~。うなぎ食べたいなぁ。うな重……。」

 夏が来れば思い出す。日本にいたころに食べた鰻の味を。
 ほかほかのご飯の上に乗せられた甘辛く煮付けられた鰻。
 大好物ってほどではないが、夏になると鰻が恋しくなるのは日本人だからだろうか。

「うなぎぃ?」

「うな重?」

「なに、それ。美味しいの?」

 私の独り言に反応して、マーニャ、クーニャ、ボーニャが疑問の声をあげる。
 そっか。マーニャたちは日本にいなかったから鰻なんて知らないよね。マコトさんだったら知ってると思うけど。

「美味しいよ。油がたっぷり乗った川魚なんだよ。」

「マーニャ!お魚好きなの!!それ、食べてみたいのっ!!」

「クーニャはいらないのぉ~。川魚ってくさいの。いやなの。」

「ボーニャは食べてみたいの~!!」

 お魚大好きマーニャが好反応を示した。
 でも、猫って鰻食べるのかな??
 っていうか鰻食べても大丈夫なの??

「そうだねぇ。でも、私が元いた場所で食べた魚だからこっちの世界にも鰻がいるかどうかはわからないよ?んー。マコトさんだったらきっと詳しいだろうし。マコトさんに聞いてみようか。」

 思い出したら無性に鰻が食べたくなってきた。
 そこで、鰻を知っているであろうマコトさんに念話で聞いてみることにした。
 早速意識を集中させる。

「マコトさん。マコトさん。聞こえますか?マユです。」

『はいはい。なんでしょうか、マユさん。』

 するとすぐにマコトさんから返答があった。
 どうやら今日は魔道具作りに専念していないようだ。珍しく。

「マコトさん。鰻って知ってますか?うな重って知ってますか?」

『ええ……。知ってますが、それがどうしましたか?』

 珍しく私からマコトさんに念話を送ったのでマコトさんはどんな無理難題を言われるのか一瞬だけ戸惑ったようだ。しかし、私が聞いたのは鰻のこと。マコトさんは気が抜けたようにため息をついてから返答してきた。

「うな重が食べたくなりました。この世界にもうな重はあるのでしょうか?」

『んー。そうですねぇ。レコンティーニ王国ではうな重は見たことも聞いたこともありませんねぇ。そもそもお米自体あまりレコンティーニ王国では流行っていませんからねぇ。』

 マコトさんはしばらく考えこんだあと、そう答えた。
 私はガックリと肩を落とした。
 どうやらこの世界にはうな重という料理はないようだ。
 時々私のような迷い人が異世界から落ちてきているのだから、うな重くらいあってもよさそうなのに。

「そうですか。それは残念です……。」

『ああ、でも。鰻はいますよ?まあ、こちらの世界ではウニャーギと呼ばれていますが、どこからどうみても鰻でした。味も見た目も完璧に鰻です。』

 ガックリと肩を落とした私を励ますようにマコトさんが追加の情報を教えてくれた。
 曰く、鰻はレコンティーニ王国にも生息しているらしい。

「ほんとですかっ!?どこに行ったら買えますか!!」

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