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五章

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「さて、みんなさっぱりしましたね。」

 お風呂から上がって、マコトさんの家の一室に皆で集まる。

 と、言ってもマコトさんとマーニャとクーニャとボーニャと私しかいないんだけどね。

 ちなみにお風呂に入ってトマトの汚れはキレイさっぱり消えたのだけれども、悲しいかな服についてしまったトマトの汁で出来たシミは石鹸をつけて洗っても落ちなかった。

『ミルクなのー!』

『マーニャもお腹空いたのー!』

『ボーニャも!!ボーニャもお腹空いたのー!!』

 マコトさんが口を開くと同時に、マーニャたちがそれぞれお腹が空いたと訴える。まあ、確かに私もお腹が空いたかもしれない。おかしいな、イザナギ様のところで、朝食を食べてきたはずなのに。トマトの木から降りるのに、そんなに時間がかかったっけか?

「はいはい。では、まずは食事にしましょうか。」

 マコトさんはそう言って立ち上がる。それから部屋を出て行こうとする。どうやら何か食べるものを用意してくれるようだ。

「あっ!私も手伝います!!」

「結構ですよ。マユさんはここで待っていてください。また迷子になってしまってはかないませんからね。」

 私も手伝うと手を上げたが、マコトさんにやんわりと止められてしまった。

 っていうか、もう迷子にならないし。マコトさんからはぐれないようについていけばいいだけだしね。

「……もう、迷子になりませんよ?大丈夫だと思うんですが……。」

「そうですね。迷子にならないかもしれませんね。でも、万が一ということがありますから。ここでマーニャたちと一緒に待っていてください。何が原因でマユさんがいなくなってしまったのかわかっていませんからね。念のためです。」

「……はい。わかりました。」

 何度も諭すように言われてしまえば、頷くしかなかった。

 私は項垂れるように頷いて、その場にまた座った。マコトさんは私が座ったことを確認すると、部屋から音もなくでていってしまった。

 マコトさん若く見えても80を過ぎているおじいちゃんなのに、こんなことさせてしまっていいのだろうかと少しばかり不安になる。まあ、でも体力も見た目と同じく若いみたいだからいいのかなぁ。

『マユ、お腹空いたー。』

『ボーニャもお腹空いたー。』

『クーニャもお腹空いたのー。ミルク飲みたいのー。』

 マコトさんが食事を取りに行ったというのに、マーニャたちはそれぞれ空腹をうったえる。うるさいくらいに。

「もうちょっと待っててね。今、マコトさんが食べるものを用意してくれるみたいだから。」

 私はマーニャたちの頭を順番に撫でながら、ここで待っているように言う。

『お腹空いたのー!』

『これ以上待てないのー!』

『マコトーー!お腹空いたのーーー!!』

「あっ!ちょ、ちょっと!!待って!!ここで待っててッてマコトさんが!!!マーニャ!クーニャ!ボーニャ!!ちょっと、待ってぇ~~~~!!!」

 お腹が空いて待ちきれないマーニャたちは、マコトさんの後をたどるように私の静止を振り切って全速力で走りだした。

 

 

 

 

 

 

 


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