婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

五章

５ー６９

 

 

「……お、ふ、ろ。み、みず……。」

「……いや……いや……いや……。」

「きらい……。おふろ、きらいなの……。」

　マーニャたちはカチンッと固まりながら心底嫌そうに小さく呟いた。言葉がすんなりと出てこないところをみるとよほど嫌いなのだろう。

　お風呂に入れるのが可哀想になってくる。

　でも……と、マーニャたちの姿を頭のてっぺんから尻尾の先まで観察する。トマトの樹液でマーニャたちはあちこち汚れてしまっている。……まあ、私ほどではないけれども。

　マーニャたちも汚れたままというのは嫌だろうし。

「でも、トマトのせいでマーニャたちの身体汚れちゃってるよ？気持ち悪いでしょ？」

　私はマーニャたちの目線に合わせるようにしゃがみこんで確認する。身体中がべたべたで気持ちが悪いはずだ。

「な、舐めるもんっ！！」

「毛づくろいするんだもんっ！！」

「これくらいへーきなのっ！！」

　マーニャたちは目をまん丸にして一生懸命叫ぶ。

　まあ、確かに猫は自分で毛づくろいして汚れ落としちゃうけどさ……。でも、シャンプーしちゃった方が早いと思うんだよね。それに、トマトの液だって舐めて気持ちのいいものではないだろうし。

「……ほんとうに？へーきなの？毛づくろいするの？」

「うっ……。」

「うぅ……。」

「……マユ、いじわるなの。」

　マーニャたちは私と視線を合わせるとガクッと項垂れた。

　やっぱりこれだけ汚れていると毛づくろいするのも大変らしい。でも、お風呂は嫌いなようだ。

　困ってしまった私は、マコトさんの方を見る。

　猫大好きで猫を崇め奉っているこのレコンティーニ王国で、まさか猫の嫌がるようなことをするわけにはいかない。というより、女王様が許さなそうだ。ゆえに、お風呂に入れるよりより効果的でマーニャたちが嫌がらない方法があるのではないかと思ったのだ。

　まあ、長年この国に住んでる私が知らないってのはどうかと思うけど……。

「ははっ……。バレましたか。ありますよ。マーニャたちが嫌がらない方法が。でも、マユさん今まで知らなかったんですか？マーニャたちがいるのに？」

　やっぱりマーニャたちが嫌がらない方法があるらしい。

　っていうか、知らなかったのかよってマコトさんに嫌味を言われたし。まあ、当然かもしれないけど。

「……それ、貸してください。」

「いいですよ。お風呂場に併設していますので、一緒に行きましょうか。きっとマユさんは使い方もわからないでしょうし。」

「……お願いします。」

　いったいどういう物なのかも全然想像がつかないのだ。使い方なんてきっとわからないだろうし。