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五章

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「それじゃあ、タマちゃん、イザナギ様。私たちは帰りますね。」

 私はトマトの木の前で、タマちゃんとイザナギ様に別れを切り出す。

 なぜだろう。涙がでてくるのは。

 今生の別れというわけでもないのに。

 いや。タマちゃんは転生するって言ってたから、今生の別れ……になるのだろうか?

 うーん。悲壮感がまったくないから今生の別れって感じはしない、かな。

 特に精霊王であるタマちゃんは転生前の記憶も引き継がれるみたいだし。私のことを忘れることはないだろうし。

「うむ。生まれ変わったら必ずマユのところへ寄るからの。そうしたらまた宴会をするのじゃ。わいわいと騒ぐのもたまには良い。むしろ、宴会をするのであれば必ず妾を呼ぶのじゃ。」

「ふ、ふんっ。早く行くのじゃ。…………………………………………たまには遊びに来てもよいのじゃぞ。……かっ!勘違いするのではないぞっ!!宴会が楽しかっただけじゃ!!けっっっっっっっして、そなたらに会いたいからではないのじゃっ!!」

「そうだね。みんなで宴会するの楽しいし、また集まって宴会しましょう。」

 イザナギ様が寂しそうに呟いた後に、なぜか大声で私たちに会いたいからではないと否定の言葉を発しているが、気にしないことにする。それが大人の対応ってものだ。……たぶん。

 精霊というのは宴会が好きなのだろうか。

「しかし、のぉ。昨夜のイザナギは実に見ものであった。くふふっ。」

 タマちゃんが昨夜のイザナギ様の様子を思い浮かべて含み笑いをした。タマちゃんのその言葉で昨夜のイザナギ様を思い出して私も思わず笑ってしまった。

「そ、そうだね。ふふふっ。」

「楽しかったのー。」

「イザナギ様、サイコーなのー。」

「また、宴会するのー。」

 私に同調するようにマーニャたちが続く。

 マーニャたちは何故か、イザナギ様に引っ付いてゴロゴロと喉を鳴らしていた。一晩でずいぶんイザナギ様に懐いたようだ。

 まあ、あのイザナギ様を見ちゃったら懐くよね。懐いちゃうよね。

 仕方ないけど、ちょっと寂しい。

 マーニャ、クーニャ、ボーニャ。たまには私にもひっついてゴロゴロと喉を鳴らしてほしいなぁ。

「ふ、ふんっ。うまい酒と肴を持ってくれば、そなたらも宴会に加えてやるのじゃ。」

 イザナギ様は顔を真っ赤にしてそう言うと、プイッと私たちから視線を逸らした。

 イザナギ様ったら本当に恥ずかしがり屋なんだから。

 

 

 


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