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五章
5ー60
しおりを挟む私は、イザナギ様から返してもらったトマトの種を、マーニャたちが掘ってくれた穴に埋めた。
まあ、誰が掘った穴に埋めるか揉めに揉めたのだが、じゃんけんをしてボーニャの堀った穴に埋めることに決まった。
「早く目が出て大きくなぁれ。元気に大きくなぁれ。」
トマトの種を植えて、その上に水をかける。植物の芽を発芽させるためには水が必要だ。土も栄養のある土の方がいいんだけれども、イザナギ様に確認したが、ここには肥料になるようなものがないらしい。
仕方がないので、肥料は使わずにそのままトマトの種を植えた。
「イザナギ様。トマトの種、植えましたよ。」
「うむ。して、いつ芽がでるのじゃ?いつ帰るのじゃ?」
「いや、だから。トマトの芽がでて大きくなるまでは数か月かかりますってさっき言いましたよ。」
「なんじゃ。マユの力で成長速度を速めることができないのかえ?使えぬのぉ。実に使えぬのじゃ。」
「ぐっ……。」
我慢。我慢。
イザナギ様の言葉に思わずカチンッと来たが、ぐっとこらえる。
普通の人間は植物の生長を早めるなんてことはできないのだ。だから、私は普通。そう、私は普通の人間なのだ。
そう自分に言い聞かせて怒りを堪える。
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