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五章
5ー51
しおりを挟む「その、イザナミさんって人はどこにいるんですか?」
わからないなら聞くまで。
私は、イザナギ様にイザナミさんのことを尋ねた。すると、イザナギ様は目を吊り上げた。
「イザナミ様と呼ぶのじゃ!人間ごときがイザナミを「さん」付けして呼ぶのではないっ!」
「は、はあ。すみません。」
「わかったなら良いのじゃ。イザナミは妾と対になる存在なのじゃ。言わば妾の分身なのじゃ。大いに敬うのじゃ。」
「は、はあ。わかりました。」
イザナミ様はイザナギ様の対となる存在らしい。イザナミ様とやらが、イザナギ様と同じように癖のある人じゃないといいんだけど。
「あの、それでイザナミ様はどちらにいらっしゃいますか?」
「ふふんっ。ただで教えると思ったのかえ?」
気を取り直してイザナミ様の居場所を尋ねると、ふんぞり返るようにしてイザナギ様がただじゃ教えないと言ってきた。今度は何を所望されるのだろうか。
「マーニャたちをもふりたいということですか?」
「それだけじゃ足りぬのじゃ。イザナミの居場所はちゃんとに妾が把握しておるでのぉ。なにか面白いものを妾によこすのじゃ。気に入ったらイザナミの居場所を教えるのじゃ。」
イザナギ様は威張りながらこちらに要求をしてきた。どうやらさっきマーニャたちを触るだけの要求だったのは、実際に帰り道を知らなかったために少し遠慮して要求していたようだ。
しかし、面白いものと言ってもマコトさんの家から突然転移してきてしまったようなものだし、何も持っていない。なにか、イザナギ様にあげるようなものを持っていたかな。鞄を持っていれば、化粧水が何本か入っていたんだけれども。と残念に思いながらも、ポケットに何か入っていないかと思って確認をすると、指の先に何かが触れた。
少し硬めの小さな粒のような。
「はて?」何をポケットに入れていたんだっけ、と手に触れた小さい粒を取り出す。
「何かの種かな?」
出てきたのは薄いオレンジ色をした米粒ほとの小さな種だった。なんの種だろうか。
「あー!プーちゃんのトマトなのっ!!」
「えー?マユが育てたトマトだよ!」
「プーちゃんの食べ残しなのー!」
マーニャたちは私の手の中にある種を見ると急に騒ぎ出した。どうやらマーニャたちにはこれがなんであるかすぐにわかったようだ。不思議だ。マーニャたちはこんな小さな種まで鑑定できるのだろうか。
……ん?鑑定?
そういえば、私も鑑定スキルを持っていたような……。
ずっと使っていなかった鑑定スキルのことを今になってやっと思い出した。化粧水の鑑定が思うようにできないとわかったときから、鑑定スキルを発動させていなかったのだ。
私は久々に鑑定スキルを発動させて、手の中にある小さな種を鑑定する。
すると、マーニャたちが言うように確かにトマトの種だった。
しかもご丁寧に種になった経緯まで書いてある。
プーちゃんがトマトを食べている時に、プーちゃんの口から飛んできた種だとかなんだとか。それが、運よく?私の服のポケットに入ったらしい。
って!そんなとこまで説明いらないからっ!!
まあ、なにはともあれトマトの種が見つかった。でも、これをイザナギ様にあげてもイザナギ様は喜んでくれるのだろうか?
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