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五章
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しおりを挟む「そ、そのようなことあるわけないであろうっ! わ、妾は偉大なるイザナギ様であるぞ。そ、そんな妾が知らないことなどあるはずがないではないかっ!!」
イザナギ様は顔を真っ赤にして叫んだ。ところどころどもっているのが若干怪しい。思わずジトーッとした視線を向けてしまう。
「じゃあ、マーニャ達を説得しますよ?イザナギ様が本当に帰り方を教えてくださるのであれば、マーニャたちを説得させてみますよ?いいんですね?」
「ぐっ!?」
「マーニャ達~。お願いだからイザナギ様に一撫でしてもらってくれないかな?」
『えー。嫌だけど、あとでマユがいっぱい撫でてくれるなら考えるのー。』
『一撫でくらいならいいの。でも、マユあとでご褒美ちょうだい。』
『マユがどうしてもって言うなら、ちょっとだけならイザナギ様に触らせてもいいのー。』
私がもう一度マーニャたちに確認をすると、マーニャ達は私の意図を汲み取ってくれたのか、今度はイザナギ様に触っても良いと言ってくれた。
イザナギ様はマーニャたちの言葉を聞いて、さらに顔を青ざめさせた。
まったく、出来ない約束はするものじゃないってことをイザナギ様は知らないのだろうか。
「イザナギ様。マーニャたちはこう言っております。いかがなさいますか?」
にっこりと笑みを浮かべて、イザナギ様に再度問いかける。
「よ、よいのじゃ。」
「そうですか。じゃあ、必ず、絶対、帰り方を教えてくださいね?私たちが確実に帰れる方法を教えてくださいね?」
私は念を押してイザナギ様に確認する。
「ぐっ……。」
イザナギ様は顔を青くして黙り込む。
しばらく私たちとイザナギ様のにらみ合いが続く。いや、にらみ合いっていうか見つめ合い?私は睨んでないもん。マーニャたちも睨んでないし。ジッと見つめているだけだし。
「……悪かったのじゃ。妾もそなたらの帰し方がわからぬのじゃ。」
しばらくの沈黙が続いた後、小さな小さな声でイザナギ様が呟いた。
やっぱり、イザナギ様ってば私たちの帰し方知らなかったらしい。
「そうですか。じゃあ、私たちでどうにかするしかないんですね。」
「…………イザナミなら、ここから下界に行く方法を知っていると思うのじゃ。」
結局帰る方法がわからなくて気落ちしていると、イザナギ様が言い辛そうに口を開いた。まるで教えたくなかったと思うような言い方だ。
それにしてもイザナミって誰だろうか?まったく知らない名前が出てきて私は首を傾げた。
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