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五章

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「……マユ、ホンニャンを頼んだのだ。」

 プーちゃんはこちらを見ずに小さい声でそう言うと、のろのろと列の先に進んでいった。そうして、淡い光を放つ輪の中に入っていく。輪の中にはいったプーちゃんの姿は、その姿を光りの中に溶けていった。

「プーちゃん……消えちゃった。」

「はい。あの光に入ると転生いたします。精霊の卵に戻るのです。さあ、あなたたちも生まれ変わるのを見届けたのなら、地上に戻ってください。仕事の邪魔です。これ以上私の邪魔をしないでください。ほら、さっさと帰った帰った。」

 プーちゃんがいなくなったと思った瞬間、先ほどのおどおどとしていたイザナギ様の姿は消えた。そうして、今度は私たちに威圧感のある態度で接してきた。先ほどまではあんなにプーちゃんにビクビクしていたのに、なんという変わりようだろうか。
 思わず呆れた目でイザナギ様を見てしまう。

「なんですか、その目は!あなたたちも生まれ変わる気があるんですか!?生まれ変わる気がないのなら邪魔なので帰ってください。ほら!早く!」

 私の視線に気づいたイザナギ様は目を釣り上げてシッシというように右手を振った。
 いや、まあ。プーちゃんもいなくなっちゃったから帰りたいんだけど、ね。帰り方よくわからないんだよねぇ~。
 私はマーニャたちに視線を合わせる。

「帰り方、わからないよね?」

「知らないのー。」

「わからないのー。」

「帰りたいのー。」

「……ということで、イザナギ様。私たち、帰り方がわかりません。教えていただけませんでしょうか?」

 帰り方がわからないのだから、イザナギ様に聞くしかない。

「えっ?帰り方がわからないんですか?いちいち世話が焼けますね。そもそもなんでここに来れたんですか?」

 イザナギ様は目を丸くして驚いたように私たちを見てきた。っていうか、いちいち小姑っぽい言葉が感に障る。でも、イザナギ様の機嫌を損ねてしまったら帰る方法を教えてくれないかもしれないし……。いや、でも、イザナギ様がさっさと帰れと言うのだから、帰してくれると思うのだけど。

「困りましたねぇ。帰り方がわからないだなんて。教えてあげてもいいですが、条件があります。」

 イザナギ様が愉快そうに口の端を歪ませる。
 予想に反して、素直に教えてくれる気がないのだろうか。
 思わず、私は身構える。

「……条件って、なんですか?」

 ぐっと息を飲んでイザナギ様の次の言葉を待つ。
 イザナギ様が声を発するまでの時間がとても長く感じる。

「そこにいる猫様たちをもふもふさせてください。」


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