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五章
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しおりを挟む「むぅ。なぜなのだっ。なぜ、我はホンニャンの元に行けぬのだ。」
「だ、だだだだだだだだだめなのじゃっ!!い、いいいいいくら、し、ししし始祖竜様であっても、それはならぬのじゃ。ゆ、許されぬことなのじゃっ!」
イザナギ様に生まれ変わりの列を外れて元の世界に戻ることはダメと言われたことにプーちゃんは納得していないようだ。そのぎょろりとした目で、イザナギ様を睨みつける。
まあ、本人は睨みつけているとは思ってないんだろうけど。迫力がね。どうしてもね。
イザナギ様はプーちゃんに睨まれて……もとい、プーちゃんに見つめられてドキマギと顔を真っ青にしており、今にも倒れそうなほどだ。それでも、プーちゃん相手に譲る様子はない。きっと、イザナギ様は職務に忠実なのだろう。
「なぜなのだ?」
理由を説明しないイザナギ様に再度プーちゃんが問いかける。その声が不機嫌からか先ほどより低くなっている。
「だ、だっだだだだだだだだめだからなのじゃっ……。だめなのじゃ……。ダメダメなのじゃぁ……。」
イザナギ様は消え入りそうな声でダメだと続けた。
イザナギ様はダメとだけ言うだけで、理由を語ろうとはしない。もしかして、理由を誰かに告げることは禁止されているのだろうか。
「なぜなのだ?」
真っ青になって震えているイザナギ様にプーちゃんが追い打ちをかける。
「だ、ダメ……。ダメ……ダメ……絶対……。」
イザナギ様はプーちゃんの圧力に負けているのか、ずっとダメだと繰り返している。そろそろ、プーちゃんを止めないとイザナギ様本当に倒れてしまう。
っていうか、きっとプーちゃんも悪気はないと思うんだよなぁ。ただ、知りたいから尋ねているだけで。イザナギ様を脅しているわけではないと思うんだけど。
「ま、まあ。プーちゃんその辺にしといてあげようよ。もう、並んじゃったら生まれ変わることしかできないみたいだし。順番だってもうすぐなんだから、ここは素直に並んでて、さっさと生まれ変わってホンニャンに会いに来てね。」
本当は今すぐにでもプーちゃんをホンニャンの元に連れて行きたいけど、イザナギ様がプーちゃんに詰め寄られても生まれ変わるしか選択肢がないと言っているのだから他に方法はないのだろう。
これ以上イザナギ様をいじめるのも可哀想だし。
「むぅ。だが、ホンニャンが結婚するのは耐えられないのだっ!絶対阻止してみせるのだっ!!」
「そ、そうだね。」
どうやら、プーちゃんの原動力はホンニャンが自分の知らないところで結婚してしまうことにあるようだ。
「えっと、それなら私がなんとしてでも、プーちゃんが生まれ変わってくるまでホンニャンの結婚を阻止しておくから。それで、どうかな?」
「……。」
妥協案を出すと、プーちゃんは考えるように一瞬止まって静かになった。
「……も、ももももももうすぐ生まれ変わりの順番が、く、来るが……、そ、そのぉ……生まれ変われたとしても、た、たたたたた卵じゃからなっ!た、たたたたたたたた卵から孵化するには人間の力が必要になるのじゃ!ゆ、ゆえに人間が卵に力を与えぬと、せ、せせせせせ精霊の卵は孵化、でででででででで出来ぬのじゃ……。」
少しは気を取り直すことができたのか、イザナギ様はそう教えてくれた。
うん?それってさ、もしかしたらプーちゃんは卵のまま何年も過ごすことになるってこと?その間、ホンニャンは結婚できないってこと?
なにそれ。
ずっと卵でいればいいじゃん。プーちゃん。そうすれば私がなんとしてでも、ホンニャンとタイチャンの結婚を阻止……おっと、本音が。もとい、ホンニャンとタイチャンの結婚を伸ばして見せるんだから。
ホンニャンもプーちゃんがホンニャンの花嫁姿を見たがっているって言えば、きっとプーちゃんが生まれ変わってくるまで待っててくれそうだし。タイチャンはホンニャンの意思を曲げてまでホンニャンとの結婚を推し進めようとはしないだろう。たぶん。
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