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五章

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「え?転移、できないの……?」

プーちゃんが転移できないだなんてどういうことなんだろうか。

転移できないのは、プーちゃんが生まれ変わりの列に並んでいたことと関係があるのだろうか。

イザナギ様の話だと、この列に並んでいるのは死んだ精霊だと言っていたし。もしかして、プーちゃんは死んでいるから現世であるマコトさんの家に転移することができないのだろうか。

「……できないのだ。」

プーちゃんは転移が出来ないことに……、もといホンニャンの元へ行けないことに落ち込んでガックリと肩を落とした。

「プーちゃん、ここにいるってことは死んじゃったの?だから、マコトさんの家に転移できないんじゃ……。」

「死んでないのだっ!」

私が、プーちゃんが死んでいるためにマコトさんの家に戻れないんじゃないかと告げると、プーちゃんは口調を荒くして抗議する。

「え?死んだんじゃないの?てっきり、ここに並んでいるからプーちゃんは死んでしまったものだと思ったわ。なら、どうしてここにいるの?」

死んだ精霊が生まれ変わるのを待つために、この長い行列に並んでいるのだとイザナギ様から聞いていた。だから、てっきりプーちゃんも死んだのだと思ったのだけれども、違ったらしい。

なら、なぜプーちゃんは精霊が生まれ変わるための列に並んでいるというのだろうか。

「……家族というものを知りたいのだ。」

プーちゃんは少し躊躇した後に、聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声で呟いた。

「え?家族?ホンニャンはプーちゃんの家族でしょう?マーニャたちや私だってプーちゃんの家族同然だと私は思っているわ。違うの?」

プーちゃんは家族を求めていたの?だから、生まれ変わろうとした?生まれ変わったら親や兄弟がいるから?

というか、精霊に親っているのか?

タマちゃんだって、スーちゃんだって、ピーちゃんだって、親はいなかったはず。私は精霊の家族を見たことがない。私が見た精霊は皆、卵から産まれてきたのだ。その卵のそばに精霊の親らしき存在はなかった。

生まれ変わったとしても、家族という存在があるのかどうか不明だ。

「我は血の繋がった家族が欲しいのだっ!」

「……ホンニャンはプーちゃんと血の繋がった家族でしょ。違うの?」

プーちゃんの血の繋がった家族にはホンニャンがいる。ホンニャンは今は亡き魔王様とプーちゃんの実の子のはずだ。

今更血の繋がった家族が欲しいとはどういうことだろうか。ここで、ホンニャンのこと否定したらただじゃおかないわ。

「ホンニャンは血の繋がった我の娘なのだっ!可愛い可愛い娘なのだっ!!」

「じゃあ、別に生まれ変わらなくてもいいじゃない。ホンニャンの側にいてあげなよ。ホンニャンも寂しがっているし。」

どうやらプーちゃんはホンニャンのことは大切なようだ。

なら、なおのこと、ホンニャンを置いてプーちゃんが生まれ変わろうとしている理由がわからない。

「マオマオとホンニャンの姿を見て思ったのだ。母親という存在はなんなのだろうかと。ホンニャンは生まれて間もなくマオマオと死別した。なら我がホンニャンの母親も努めなければと思たのだ。でも、我には母親がいない。我はどうマオマオに接したらいいのかわからないのだ。だから、我は生まれ変わって母親という存在をこの身で感じ取りたいのだっ!」

プーちゃんはそう言って力説した。

うん。ツッコミどころ満載な内容である。

一つ一つ突っ込んでみようか。

「なんで今なの?ホンニャンに母親が必要で、プーちゃんが母親代わりをつとめたいって言うなら、なんでホンニャンが産まれてから何年も経った今なの?なんで今までホンニャンの側にいてあげなかったの?何をしてたの?」

「……。母親を知る方法を探していたのだ。それから精霊たちに話を聞いて生まれ変わりのことを思いついたのだ。それが今からかれこれ10年以上前。知ってからすぐに列に並んだのだが、もう10年以上も時が経ってしまったのだ。」

ポツリポツリと事情を語りだすプーちゃんに私は頭を抱えた。10年以上もこの列に並んでいたとは……どれだけ気が長いんだ。プーちゃんは。それに、そんな長い間並んでいるんだったらさっさとホンニャンのところに戻ればよかったものを。

母親役なんて誰かが教えてくれただろう。というか、プーちゃんなりに親としてホンニャンと接してあげればいいだけだったのに。なんで、ここまで拗れたんだ?

 

 

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