534 / 584
五章
5ー41
しおりを挟む「えっ?プーちゃ……。」
「プーちゃんなのーーー!!」
「ひどいのー!もっと早くクーニャに気づいてなのーーー。」
「ずっとずっと探してたんだよー。なんでボーニャの側からいなくなるのー?」
後ろから聞こえてきた懐かしいプーちゃんの声に驚いて振り向く。するとそこには以前と寸分も変わらぬプーちゃんがいた。
私はプーちゃんの名前を思わず呟き……言い切る前にマーニャたちがそれぞれ声を上げながらプーちゃんに抱きついた。もとい、プーちゃんに殴りかかった。
まあ、痛くなさそうだけど。マーニャたちも爪を隠してモフモフな手でポカポカ叩いているだけみたいだし。むしろ、プーちゃんの顔がにやけていて気持ち悪かった。
「ああ、マーニャ様とクーニャ様とボーニャ様に抱きしめられてるなんてなんて至福なのだっ……!もう、このまま死んでもよいのだーーーっ!!」
プーちゃんはマーニャたちにポカポカと叩かれながらも嬉しそうにその場にのたうち回っている。っていうか、このまま死んでもいいって、もうプーちゃん死んでるんじゃないの?だから、ここにいたんじゃないの?
口には出さないけれども、脳内で思いっきりツッコミを入れてしまった。
「な、ななななな……。」
喜びまくっているマーニャたちとプーちゃんを尻目に、イザナギ様はプーちゃんとマーニャたちを指さしながらまだ驚きの表情を浮かべて、言葉にならない言葉を口にしている。
イザナギ様も立ち直りが遅いようだ。
「これが、プーちゃんです。プーちゃんとは話せないはずなのに、驚かせてしまってすみません。やっぱ、マーニャたちは猫様だから特別なんでしょうか。」
プーちゃんと話す権利はマーニャたちに取られてしまったから、驚きで腰を抜かしてしまっているイザナギ様に声をかける。
すると、イザナギ様は「嘘じゃっ!嘘じゃっ!嘘じゃっ!!」と言いながら頭を抱え込み、勢いよく首を横に振り出した。
首が取れそうなほど、高速で首を横に振り続けるイザナギ様。目が回らないのだろうかと不思議に思いながらも声をかけてみる。
「あの、信じられないかもしれませんが……。」
「ぐぅっ……。目が……回ったのじゃ……。気持ち悪ぃ……。」
声をかけたのとほぼ同時に、イザナギ様がその場に倒れこんだ。どうやら首を横に振りすぎて気持ちが悪くなってしまったようだ。その場に倒れこんだイザナギ様は、私がツンツンとつついても全く起きる気配がなかった。
どうしよ。これ。
私は喜びを分かち合うプーちゃんたちを尻目に、イザナギ様を見つめながら途方に暮れるのだった。
20
お気に入りに追加
2,574
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
王宮を追放された俺のテレパシーが世界を変える?いや、そんなことより酒でも飲んでダラダラしたいんですけど。
タヌオー
ファンタジー
俺はテレパシーの専門家、通信魔術師。王宮で地味な裏方として冷遇されてきた俺は、ある日突然クビになった。俺にできるのは通信魔術だけ。攻撃魔術も格闘も何もできない。途方に暮れていた俺が出会ったのは、頭のネジがぶっ飛んだ魔導具職人の女。その時は知らなかったんだ。まさか俺の通信魔術が世界を変えるレベルのチート能力だったなんて。でも俺は超絶ブラックな労働環境ですっかり運動不足だし、生来の出不精かつ臆病者なので、冒険とか戦闘とか戦争とか、絶対に嫌なんだ。俺は何度もそう言ってるのに、新しく集まった仲間たちはいつも俺を危険なほうへ危険なほうへと連れて行こうとする。頼む。誰か助けてくれ。帰って酒飲んでのんびり寝たいんだ俺は。嫌だ嫌だって言ってんのに仲間たちにズルズル引っ張り回されて世界を変えていくこの俺の腰の引けた勇姿、とくとご覧あれ!
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。
転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。
まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。
温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。
異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか?
魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。
平民なんですがもしかして私って聖女候補?
脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか?
常に何処かで大食いバトルが開催中!
登場人物ほぼ甘党!
ファンタジー要素薄め!?かもしれない?
母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥
◇◇◇◇
現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。
しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい!
転生もふもふのスピンオフ!
アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で…
母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される
こちらもよろしくお願いします。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる