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五章

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「……ん?」

マーニャたちの声がプーちゃんまで届いたのか、プーちゃんが辺りをキョロキョロと見回している。ただ、こちらの姿は見えないのか、プーちゃんと視線が合うことはなかった。

「プーちゃん、こっちなのー!」

「あたしを見てーーーっ!」

「クーニャばっかずるいぃ!!ボーニャも見て欲しいの!」

キョロキョロしているプーちゃんに気づいてもらうために、マーニャたちがさらに声を張り上げる。

というか、クーニャ……。なんか、どこぞの恋する女の子になっていないか?

マーニャたちが必死にプーちゃんに呼び掛ける姿が痛々しくなってしまい、そっとイザナギ様を伺った。どうしてもプーちゃんと話ができないのか確認しようと思ったのだ。

「えっ?」

でも、イザナギ様の表情を見て私は思わず驚きの声を上げてしまった。

イザナギ様が大きく目を見開いて、プーちゃんとマーニャたちに交互に視線を移しているからだ。しかも、口までぽかーんと大きく開いている。綺麗な日本人形みたいな顔が台無しだ。

「な、なななな……。」

イザナギ様はずっと「な」という言葉を繰り返していた。いったい何が言いたいんだろうか。なにかに驚いていることはわかるんだけど。何に驚いているのかハッキリと言わないのでよくわからない。

でもこの状況で驚いているということは、こちらの声が聞こえないはずのプーちゃんに声が聞こえているみたいということだろうか。

っていうか、それ以外に驚くような要素ないと思うし。

それにしても、もしそうだとしたらイザナギ様って意外と……っと、これ以上は考えないようにしよう。

「プーちゃんってばぁ!なんでマーニャのこと気づかないのぉ~。」

「クーニャもここにいるのぉ~。」

「ボーニャだってここにいるのにぃ~。」

イザナギ様のことを考えていたら、必死にプーちゃんに呼び掛けても自分たちの姿を目に入れてくれないプーちゃんに悲しくなってきたのか、マーニャたちがその場にペタリっと座り込んで目に涙を浮かべ始めてしまった。

「ま、ままままマーニャ、クーニャ、ボーニャ。ほ、ほら。最初にイザナギ様が説明してくれたじゃない。私たちとあそこに並んでいるプーちゃんとでは会話することができないって。そんな状況でもマーニャたちの声を聞き取れたプーちゃんはすごいじゃない。マーニャたちのこと大好きだからマーニャたちの声が聞こえたんだよ。すごいことだよ。ね?ね?」

私は今にも大声で泣きだしそうなマーニャ達を必死で宥める。宥めるのが必死で周りのことなどは気にすることができない。

トントンと私の肩を誰かが叩く。

「ごめんなさい。今はマーニャたちを優先させてください。マーニャたち泣きそうなんです。だから……。」

後ろを振り向かずに肩を叩いている誰かに返答する。

「……マユなのだ。」

プーちゃんの懐かしい声が後ろから聞こえてきた。

 

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