婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚

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五章

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「え?私たち死んでないの!?って誰!?」

 突然聞こえてきた声の方を振り返ると、そこには神々しい黄金色の着物をまとったタマちゃんがいた。

「え??タマ、ちゃん?」

 ゴシゴシと目を擦る。まさか、タマちゃんまでここにいるとは思わなかった。

 でも、「タマちゃん」と名前を呼ばれたタマちゃんはその綺麗な眉を思いっきり顰めた。

「なんじゃ、その気の抜けたような名前は。妾がそのようなふざけた名前のはずがないであろう。妾はイザナギと言うのじゃ。妾のことはイザナギ様と呼ぶがいい。それ以外の呼び方は受け付けぬのじゃ。」

 どうやらタマちゃんじゃなかったらしい。見た目はタマちゃんにそっくりなのに。それに、話し方もそっくりだ。

「えっと、ではイザナギ様。ここは死後の世界でよろしいでしょうか?そして、私たちはここに迷い込んでしまったということでしょうか?」

 ほんとどの角度から見てもタマちゃんにしか見えないんだけどなぁ。イザナギ様って。本当にタマちゃんじゃないのかなぁ。

 タマちゃんなんじゃないかと疑問に思うけれどもきっと尋ねても違うと言われてしまいそうだったので口には出さなかった。その代わりにこの場所のことを確認する。マーニャたちが言うようにここは死後の世界なのだろうか。

「死後の世界……。ふぅむ。中らずと雖も遠からずというところじゃなぁ。」

「え?違うんですか?」

 もったいぶったようにいうイザナギ様に問いかける。イザナギ様はくふふっと笑った。

「死んだ者が来るところというのは変わらぬがのぉ。ここは精霊たちが死んだ際に来る場所じゃ。まあ、精霊の中でも強い力を持つ精霊は死なずとも自由に来ることができるがのぉ。」

「え?じゃあ、私って人間じゃなくて精霊だったの?マーニャたちも??」

 精霊が死んだ際に来る場所だったとは。そこに紛れ込んでしまった私たちはもしかして精霊だったのだろうか。いや、そんなはずはないと思うけど。プーちゃんもそんなことは言ってなかったし。女神様だってそんなこと言ってなかったし。

「お主らは精霊ではないのじゃ。ここでは生まれ変わるのを待つ精霊が列をなしておるのじゃ。ほれ、見てみぃ。」

 イザナギ様がそう言って指し示した方向を見ると先ほどまでは何もなかった空間に突如として様々な精霊と思わしきものたちが行儀よく一列に整列しているのが見えた。

「……え?」

 順番待ちをしてる先頭付近になにやら見知った顔が混じっているような気がして慌てて目を擦ってみる。

「あれー?どうして、あんなとこにいるのー?」

「いつの間に死んじゃったのー?」

「えー。死んだのー?いつー?」

 マーニャたちもその姿が見えるのか驚いたように瞳を丸く見開いて首を傾げている。

「なんじゃ。知り合いでもおったのか?じゃが、姿は見えてもお主らは死んではおらぬからな、あやつらと会話をすることはできぬぞ。」

 イザナギ様はそう言って私たちに釘を刺した。

 せっかくプーちゃんを見つけたのに。ホンニャンが喜ぶかと思ったのに。話かけられないだなんて。

 でも、プーちゃんが死んだなんてにわかには信じられないのだけれど……。

 

 

 

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