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五章

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「……天に、還っちゃいましたねぇ。」

 マコトはそう言って「ふぅ……。」と息を吐きだした。

 マコトの見つめる先は、マーニャたちが消えて行った場所である。そこに手を伸ばして触ってみようとしても何も変化がない。

「天に還ったってどういうことなの?」

 ホンニャンが、呆然とした表情のままマコトに問いかけた。

「猫様は異世界からの迷い人のために、女神様が遣わした使者なのです。異世界からの迷い人であるマユさんが、この世から消えた。それならば、猫様であるマーニャたちもこの世から消えるのが必然的なんです。まあ、今の今まで異世界からの迷い人がいなくなったなんてことあり得なかったので憶測なんですけどね。」

 マコトはそう言って、悲し気に微笑んだ。

「……異世界からの迷い人が元の世界に帰ったなどとは聞いたことがないわ。」

 女王様は首を傾げ納得しない様子でポツリと呟いた。

 パールバティーが知る限り、キャティーニャ王国が建国されてから、異世界の迷い人が元の世界に帰ったという史実はない。また、キャティーニャ王国が建国される以前にも異世界からの迷い人がいるという話はあったようだが、元の世界に帰ったという話は聞いたことがない。

「そうですね。私が元の世界に帰ろうと調べた時にも帰る方法はおろか、異世界からの迷い人が元の世界へ帰ったという言い伝えも見つかりませんでしたね。あの時は何年も調べたんですが、ね。」

 そう言って、マコトは遠い過去をしのぶかのように目を細めて宙を見つめた。

「そして、私が調べた限り、異世界からの迷い人が死んだという話もありませんでしたよ。かくいう私もこの世界に来てから見た目も変化がありませんし、体調を崩したことなどありません。毒薬を飲んでみたこともありましたが……すぐに治ってしまいました。どうやら、異世界からの迷い人は死ねない身体のようです。」

 マコトは付け加えるようにそう言った。その言葉に女王であるパールバティーは絶句した。

「まさか、死ぬこともないとは……。」

「ええ。異世界からの迷い人は死ぬことはありません。ですが、マユさんがこの世界に来てから変わりました。私の妹はマユさんが産み出した化粧水で年を取ることが出来ました。見た目上は、ですが。妹はピンピンしているので、きっと見た目だけなのでしょう。でも、もしかしたらマユさんの作る化粧水で、身体も年を取ることができるのかもしれない。寿命を迎えることができるのかもしれない。私たち異世界からの迷い人の希望でもあるんですよ。マユさんは。」

 マコトの言葉にあたりにしんみりとした空気が漂う。だけれども、それを振り払うかのようにマコトは続けた。

「マユさんには期待していたんですけどね。まったく新しい効果の化粧水を作る気配がなくて。それなのに自分はさっさと還ってしまうし。さっさとこちらに帰って来てもらわないと困りますねぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

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