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五章

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「こうして、この鏡の柄の部分がパカッと開くので、こににマユさんの髪の毛を一本入れちゃいます。」

 マコトはそう言って、鏡の柄の部分をパカッと開こうとした。マコトが手にギュッと力をいれて、眉間に皺を寄せているのをみると、けっこう固そうだ。

「ぐぐっ……。あ、あれ?こんなに硬かったかな?開かない……。」

 どうやら、開かないらしい。マコトが首を傾げている。

「ああっ!!」

 しばらく考え込んでいたマコトは急にパンっと両手を叩いて立ち上がった。なんか思い出したらしい。

「なぁに?早くするのー。マユ待ってるのー。」

 あたしはもったいぶったようなマコトの動作にイラっとして、マコトの足にペシッと軽く猫パンチを繰り出す。爪を立ててないから全然痛くないと思うけどね。

 爪を立てないのはあたしの優しさなの。

「金属で作ったので錆びちゃったみたいです。あはっ。油を差せば直るかなぁ。」

「どうして金属なんかで作ったのーーーっ!?」

 肝心な部分が開かなくなるだなんて、なんでそんな劣化する素材で作ったのかよくわからない。使う時に使えないんじゃ、それただのゴミの塊なのー。

 ほんとにマコトの魔道具ってこういうちょっとしたとこがダメダメなの。使えないの。

 マコトの魔道具の使えなさ加減にあたしはぷりぷりと怒る。クーニャとボーニャは呆れたような視線をマコトに向けていた。もちろん女王様とホンニャンもだ。

「ガマガエルの油でもいいならあるが?」

 と、そこにまたしてもタイチャンがスッとマコトにガマガエルの油を差し出した。

 タイチャン、なんて用意周到なのっ!こんなことまでも計算していただなんてすごい。

 思わずあたしはタイチャンに尊敬の目を向ける。クーニャとボーニャもあたしと同じようにタイチャンに尊敬の眼差しを向けていた。けれど、女王様とホンニャンは冷めた眼差しをタイチャンに送っている。なんでだろう?

 ま、いっか。

「ああっ!とても貴重なガマガエルの油っ!!王都では育毛剤として貴族の間で評判が良くて、入手困難なんですよっ!それがこんなに沢山……。とっても高かったでしょう。小さいお城くらい買えるんじゃないですか?これ。」

 マコトがしげしげとタイチャンが差し出したガマガエルの油を見入っている。

 っていうか、マユの作った化粧水と同じくらいの大きさしかないのにお城が買えるだなんてすっごく高価なのー。今度、マユに化粧水じゃなくてガマガエルの油を作るように言ってみるの。そしたら、きっと煮干し食べ放題なのー。ミルクもささみも食べ放題なのー。もしかしたら!マタタビも買ってもらえるかも!!

 絶対マユにおねだりするのー。

 あーあ。早くマユに会いたいなぁー。

「……タイチャン、禿げたの?」

 ホンニャンが冷めた目でタイチャンの頭部を見つめながら小さく呟いた。

 

 

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