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五章
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「ふふふ。これぞ、どこにいてもミツカール。この魔道具があれば、マユさんもすぐに見つかりますよ。」
そう言って、マコトが得意気に取り出したのは、楕円形の鏡のようなものだった。覗き込んでみるが、あたしの顔は映らなかった。楕円形の鏡には何も映っていないの。
「なんも映ってないのー。」
「へんなのー。」
「これにマユが映るのー?」
楕円形の鏡のようなものをあたしたちは覗き込む。見れば見るほど不思議。
「なんだ。マユ殿がいなくなったのか?」
「えっ。マユどうしたの?」
「ふう。やっといなくなりましたか。」
あたしたちがマコトの取り出した鏡を覗き込んでいたら、女王様とホンニャンが心配そうに近寄ってきた。タイチャンはマユがいなくなって嬉しそうな表情をしていたので無視することに決めた。
「そうなのー。マユ、いないのー。」
「迷子になったのー。」
「これからマユを探すのー。」
あたしたちはマユのことを女王様とホンニャンに伝える。二人とも眉を寄せてとても心配そうな表情をしている。マユってば意外と好かれてるのー。嬉しいの。
「それではこの魔道具にマユさんの情報を登録します。マユさんの髪の毛や血など持っていませんか?」
あたしたちの会話を待って、マコトが勿体ぶったように鏡を掲げた。
っていうか。マユの髪の毛や、血?そんなのどこにあるのー?
「マユの髪の毛も血もないのー。」
「クーニャも持ってないのー。」
「ボーニャも持ってないのー。」
「……いなくなった人の髪の毛や血を必要とするのは、あり得ないな。」
「はあ。マユの知り合いってこんな人ばっかりなのかしら。」
行方不明になったマユの髪の毛や血なんて普通持ってないの。もしかしたらマユの持ち物に髪の毛くらい付着している可能性もあるけど……。」
「ま、マユさんの櫛についていませんか!!髪の毛!!」
マコトが先ほどまでの余裕のある笑みを崩して、切羽詰まったように確認してくる。
マユの櫛?
「マユ櫛なんて持ってないよー。」
「櫛で梳かさなくてもサラサラなのー。」
「マユが櫛を使ってるとこなんて見たことないのー。」
「ま、マユさんの部屋に髪の毛の一本くらい……。」
マコトは引きつった笑みを浮かべている。それくらい予想外だったようだ。人間って自分の櫛を持っているのが当たり前なのだろうか?あたしは自分で櫛を梳かしたことがないからよくわかんない。
「マユも櫛くらい使ってるわよ。でも……魔王城のマユの部屋は配下たちに髪の毛一本残さないように掃除するように言っているから、残っていないんじゃないかと思うわ。」
ホンニャンがあたしたちの言葉に付け足した。ふぅーん、マユも櫛持ってるんだ。
っていうか、魔王城が清潔なのはホンニャンのお陰だったんだね。そうだよね。マユずぼらだもの。掃除なんて適当だもん。でも、ホンニャンの配下はきっちり仕事をしているのだろう。マユの部屋で遊んでいても、埃一つ見たことがない。
「そ、そんなぁ……。」
マコトが情けない声を上げる。っていうか、普通に考えて行方不明の人の髪の毛や血を持っている方がおかしいの。あり得ないの。マコトばかなの?
どうやらマコトの魔道具は役に立ちそうもなさそうなの。
「ふふふ。皆さんお困りのようですね?ありますよ?マユさんの髪の毛。いつもこの藁人形の中に忍ばせてあるんです。」
タイチャンは不敵に笑いながら懐から歪な藁人形を取り出した。
そう言って、マコトが得意気に取り出したのは、楕円形の鏡のようなものだった。覗き込んでみるが、あたしの顔は映らなかった。楕円形の鏡には何も映っていないの。
「なんも映ってないのー。」
「へんなのー。」
「これにマユが映るのー?」
楕円形の鏡のようなものをあたしたちは覗き込む。見れば見るほど不思議。
「なんだ。マユ殿がいなくなったのか?」
「えっ。マユどうしたの?」
「ふう。やっといなくなりましたか。」
あたしたちがマコトの取り出した鏡を覗き込んでいたら、女王様とホンニャンが心配そうに近寄ってきた。タイチャンはマユがいなくなって嬉しそうな表情をしていたので無視することに決めた。
「そうなのー。マユ、いないのー。」
「迷子になったのー。」
「これからマユを探すのー。」
あたしたちはマユのことを女王様とホンニャンに伝える。二人とも眉を寄せてとても心配そうな表情をしている。マユってば意外と好かれてるのー。嬉しいの。
「それではこの魔道具にマユさんの情報を登録します。マユさんの髪の毛や血など持っていませんか?」
あたしたちの会話を待って、マコトが勿体ぶったように鏡を掲げた。
っていうか。マユの髪の毛や、血?そんなのどこにあるのー?
「マユの髪の毛も血もないのー。」
「クーニャも持ってないのー。」
「ボーニャも持ってないのー。」
「……いなくなった人の髪の毛や血を必要とするのは、あり得ないな。」
「はあ。マユの知り合いってこんな人ばっかりなのかしら。」
行方不明になったマユの髪の毛や血なんて普通持ってないの。もしかしたらマユの持ち物に髪の毛くらい付着している可能性もあるけど……。」
「ま、マユさんの櫛についていませんか!!髪の毛!!」
マコトが先ほどまでの余裕のある笑みを崩して、切羽詰まったように確認してくる。
マユの櫛?
「マユ櫛なんて持ってないよー。」
「櫛で梳かさなくてもサラサラなのー。」
「マユが櫛を使ってるとこなんて見たことないのー。」
「ま、マユさんの部屋に髪の毛の一本くらい……。」
マコトは引きつった笑みを浮かべている。それくらい予想外だったようだ。人間って自分の櫛を持っているのが当たり前なのだろうか?あたしは自分で櫛を梳かしたことがないからよくわかんない。
「マユも櫛くらい使ってるわよ。でも……魔王城のマユの部屋は配下たちに髪の毛一本残さないように掃除するように言っているから、残っていないんじゃないかと思うわ。」
ホンニャンがあたしたちの言葉に付け足した。ふぅーん、マユも櫛持ってるんだ。
っていうか、魔王城が清潔なのはホンニャンのお陰だったんだね。そうだよね。マユずぼらだもの。掃除なんて適当だもん。でも、ホンニャンの配下はきっちり仕事をしているのだろう。マユの部屋で遊んでいても、埃一つ見たことがない。
「そ、そんなぁ……。」
マコトが情けない声を上げる。っていうか、普通に考えて行方不明の人の髪の毛や血を持っている方がおかしいの。あり得ないの。マコトばかなの?
どうやらマコトの魔道具は役に立ちそうもなさそうなの。
「ふふふ。皆さんお困りのようですね?ありますよ?マユさんの髪の毛。いつもこの藁人形の中に忍ばせてあるんです。」
タイチャンは不敵に笑いながら懐から歪な藁人形を取り出した。
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