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五章

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なんだかちょっと不安が残るような気がするけど、置いておこう。きっと、突っ込んで考えたら駄目なやつだと思うし。知らない方が幸せだってこともある。うん。

「なんだか、大人しくなりましたね。」

ホンニャンの手腕によって大人しくなった女王様とタイチャンを見て、のほほんとマコトさんが呟いた。

「・・・そうですね。」

かく言う私は、ちょっと疲れた声で返答する。

だって、疲れるんだもん。ドタバタうるさいのって苦手だし。どう静めていいかわからなくなるし。

「さてさて、落ち着いたようですし、みんなでお茶にしませんか?」

マコトさんはよっこらせと立ち上がるとそんな言葉を口にだしてから部屋を出ていった。

ってか、誰もマコトさんの質問に答えていないのにマコトさん部屋から出て行っちゃったし・・・。

もしかして、ここから逃げ出す口実だったのだろうか。

それならば・・・。

「マコトさんっ!お茶を出すの手伝いますっ!!」

私も後を追うだけである。

だって、ホンニャンたちが泣きながら抱き合っている姿あんま見ていたくないもん。なんだか、ホンニャンの笑みが真っ黒なような気がするし。

いや、気のせいなんだろうけど。

『お茶っ!?おやつっ!?』

『マコトーっ!!ミルクちょうだーーーーいっ!!』

『あたしは煮干しがいいのーーーーっ!』

マーニャたちもマコトさんの「お茶にしましょう」という言葉に反応して私より早く部屋を飛び出して行った。

「あっ。ちょっとマーニャ、クーニャ、ボーニャっ!!」

すばしっこいマーニャたちを追うように私も部屋を後にする。

マーニャたちは猫のくせに走るのが早い。私が走ったところでマーニャたちには追い付けそうにない。それに、マーニャたちの方が小さい分、小回りが利くし。

タタタタタッという軽い足音のマーニャたちの後をドタドタドタッという重い足音の私が続く。だが、距離はどんどん離れていくのは言うまでもない。

でも、そんなマーニャたちでもマコトさんには追い付けない。

マコトさんは滑るように廊下を進んでいるのだ。

どうしたらあんなに早く歩けるのだろうか。足音も立てずに。

必死にマコトさんとマーニャたちを追っていたのだが、距離がどんどん離れて行ってしまったためにマコトさんたちの姿を見失ってしまった。

「えっと・・・。マコトさぁーん。」

まさか家の中でマコトさんたちとはぐれるとは思わなかった。

私は立ち止まるとキョロキョロと辺りを伺った。

周りには障子に囲まれた部屋がいくつか見える。あとは廊下だけの簡単な作りだ。

だが、一本道というわけではなく、途中廊下が入り乱れていたりする。

っていうか、マコトさんの家どれだけ広いの・・・?

前に来た時は迷子になるほど広かったっけ?

どこまでも続く廊下を見つめながら私は首を傾げた。

 

 

 

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