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四章
4ー100
しおりを挟む「元魔王様っ。」
「マオマオ様。」
『マオマオ。』
呼ばれて振り返るとそこには元魔王様がベッドに腰かけてこちらを見ていた。
どうやら元魔王様の意識が戻ったようだ。
それにしても、あの化粧水威力が半端ないな。
今にも死にそうだった人間があっという間に起き上がれるほど回復するだなんて。
「マユさん。あなたが儂に化粧水を飲ませたのじゃな?」
「は、はい。」
元魔王様の口元は笑みを浮かべてはいたが、目は全く笑ってはおらず真剣そのものだった。
「儂の寿命を延ばすことが目的じゃったのか?」
「いえ。お酒が欲しいとおっしゃられたので、お酒味の化粧水を飲ませました。その後に、寿命を延ばす効果があるということに気づいたのです。」
「そうか・・・。その化粧水はあだあるのかえ?」
「ありません。もう一度同じものを作れるかどうかもわかりません。」
「そうか。それで良い。寿命を延ばすなどもってのほかじゃ。儂は好かぬ。」
どうやら元魔王様は寿命を延ばされたことに憤りを感じているらしかった。
『だ、だが・・・。我はもっとマオマオと一緒にいたい。』
「私だって、もっとお母様と一緒にいたい。」
だが、プーちゃんも女王様もまだまだ元魔王様と一緒にいたいようである。
涙ながらにこちらに訴えかけてくる。
「ならぬ。定められた寿命なのじゃ。違えてはならぬ。」
それを元魔王様が一喝する。
「でも・・・。」
「お願いだ。わかってくれ。儂はもう長く生きたのだ。始祖竜様もパールバティーのことも嫌いではない。大好きじゃ。じゃが、寿命には逆らえぬのじゃ。だから儂との約束じゃ。もうこれ以上マユさんに負担はかけないこと。マユさんにまたこの化粧水が欲しいと無理を言わないこと。」
元魔王様の顔は真剣そのものだ。
プーちゃんも女王様も元魔王様があまりに真剣な表情でお願いをするものだから、嫌だとは言えなかった。
「ありがとうございます。」
私はプーちゃんと女王様にきっぱりと告げてくれた元魔王様にお礼を言う。
この二人だったら寿命が延びる化粧水を作れと言ってきそうだからだ。
私はこの二人には基本的に逆らえないので、化粧水を作らざるを得ないだろう。
ただ、寿命が延びる効果を持つ化粧水が絶対作れるというわけではないので、作れなかった場合はきっとプーちゃんも女王様も今以上に落胆してしまうはずだ。
だから、この元魔王様の判断はプーちゃんと女王様の心も守る決断なのだ。
「残りの時間が一年増えた。それだけで儂は十分じゃ。このひと月だけでも始祖竜様とパールバティー様と一緒に入れただけでよかったのじゃが・・・。それでもこの穏やかな時間が一年続くというのであればそれも良い。じゃが、それ以上、儂は生きることを望まぬ。」
『マオマオ―。』
「お母様。」
「この残り一年の間に儂がいなくなる覚悟をしかとしておくのじゃぞ。」
元魔王様がそう言うと、プーちゃんと女王様が涙を流しながら、元魔王様に抱き着いた。
そばで見ていた私たちももらい泣きをしている。
っていうか、タイチャンなんて大洪水だし。
意外と涙もろかったんだね。タイチャン。
「さて、タイチャンよ。儂がいない間ご苦労であった。それで、マーニャ様たちは魔王として魔族を束ねられそうかね?」
元魔王様は魔族のことが気がかりだったようです。
元魔王様は現魔王のマーニャたちではなく、タイチャンに確認した。
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