490 / 584
四章
4ー99
しおりを挟む「・・・もしかしたら、元魔王様の寿命が一年・・・延びる・・・かも?」
化粧水の効果が絶対なのかはわからない。
危篤状態で化粧水を飲んだところでもう手遅れかもしれない。
『マユっ!すごいのだっ!!』
「そのような奇跡の化粧水があるだなんて・・・。」
プーちゃんと女王様は一年間寿命が延びることに素直にはしゃいでいる。
対するタイチャンとタマちゃんは微妙な表情をしている。
元魔王様が生きているのは二人とも嬉しいようだが、このような方法で寿命を延ばしていいものかと思っているようだ。
『・・・マオマオの寿命が延びるのは良いことじゃとは思ってはおるが・・・この化粧水は良くないのぉ。実に危険を孕んでいる化粧水じゃ。』
「そうですね。マオマオ様の命を無理やり延ばしているようなもの。神の意志を捻じ曲げているような代物です。安易に使用すべきではないでしょうね。」
私もそれは理解している。
この化粧水の危険性もわかっている。
だから、王都の鑑定士さん以外には誰にも言っていないのだ。
女王様もこの化粧水の存在を知らなかったということは、王都の鑑定士さんは上司にも存在を告げていないのだろう。
それほどまでに危ういのがこの化粧水である。
『この化粧水を飲んで寿命が一年延びたとしよう。して、同じ効果を持った化粧水はまだあるのかえ?』
「あれが最後の一本です。」
『そうか・・・。』
私が作る化粧水は効果どころか味も選んで作成することができない。
同じ材料なのに不思議なことにその時々で効果も味も違うものが出来上がるのだ。
そのため全く同じものを意図的に作成することができないのである。
この寿命が一年延びるという効果を持った化粧水も出来たのは一回こっきりだ。
猫耳が生える化粧水はいっぱいできたんだけどなぁ。まあ、もう全部オークションに出してしまったけれども。
「ここにいる方は誰も口外しないと信じていますから。それに、作りたくとももう二度と同じ効果のものは作れないかもしれませんし・・・。」
「ほぉ。意図して効果を付与することができないんですか?」
「はい。できません。」
「不思議なこともあるものだ。では、マオマオ様の寿命がこれ以上延びることもないと?」
タイチャンが目を細めて確認してくる。
「それは断定できません。もしかしたらそういう効果のある化粧水が出来てしまうかもしれません。ですが、きっともう寿命を延ばすような効果がある化粧水はきっとできないと思いますよ。どうもその時に必要になる効果を持つ化粧水が必要なだけ作成されるようです。」
「へぇー。便利なものだな。では、今回の寿命を延ばす化粧水は必要だったということか?」
「それはわかりません。ですが、プーちゃんと女王様が元魔王様とお別れするのには期間が短かったのかもしれません。だから元魔王様に使用するようにと寿命が一年延びる化粧水ができたのかもしれません。まあ、お別れをするのに一年という期間が短いのか長いのかという議論はあるかと思いますが・・・。」
『確かにのぉ。再会してからまだ間もないからのぉ。あと一年くらい時間があっても良いかもしれぬのじゃ。』
「そうですね。」
タマちゃんもタイチャンもしんみりしたように言うものだから思わず茶化したくなる。
「タイチャン。随分丸くなったね?以前は私の話なんか聞く気がなかったでしょ?丸くなったのはマーニャたちのおかげかなぁ?」
「うっ・・・。た、確かに猫様たちはとっても可愛くてキュートで愛しくて守ってあげたくて・・・。って違いますよ!!」
「ほほぅ。そっかそっか。そんなにマーニャたちのことを愛していたのね。」
「うにゃっ・・・。」
タイチャンってば随分とっつきやすくなった。
今もちょっとからかうと顔を真っ赤にしてしまうのだから。
どうやらタイチャンにマーニャたちのお世話を任せたのは成功だったようである。
それに、マーニャたちが魔王の座につくと魔族たちはこぞってマーニャたちを猫可愛がりしだしたし。
今のところマーニャたちに害はでていない。
「・・・マユさん。」
タイチャンを揶揄って遊んでいると、しわがれた女性の声が聞こえてきた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,547
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる