上 下
489 / 584
四章

4ー98

しおりを挟む
 

 

元魔王様にビール味の化粧水を飲ませると心なしか元魔王様の呼吸が落ち着いたような気がした。

しかも、先ほどまで頬が真っ青だったのに、今見ると赤みを帯びているような気がする。

アルコールで身体が火照ってきているのだろうか。

「お酒、持ってきましたよっ!!ついでに女王様が家の前でうろうろしていたので引っ張ってきましたっ!!」

と、そこにお酒を調達しに行っていたマコトさんが、右手にお酒、左手に女王様を手にして帰って来た。

「あ、ありがとうございます。」

女王様は体中の力を抜きマコトさんに身体を預け切っている。

意識もないのか何も言わずにその場に倒れこみそうだったので、慌てて椅子を用意した。

そこにマコトさんが女王様を腰かけさせる。

女王様は何も言わずにその椅子に腰かけた。というより椅子にもたれ掛かった。

「あの・・・女王様はどうしたんですか?」

あまりの様子に思わずマコトさんに問いかける。

ただ、家の前をうろうろしていただけで気を失うようなことはないはずだ。

それとも自分の母親が危篤状態ということでショックを受けて気を失っているのだろうか。

それだったら朝の時点で気を失っていてもよさそうなものだけれども。

「ああ。どうやら焦っていて落ち着かない様子でしたので、首の後ろをトンっと叩いたら気絶しちゃいました。あはは。」あはは。って・・・。

マコトさんはにっこりと笑いながらそう告げた。

しかし、マコトさん強いな。

いくら女王様が自分の母親が死にそうだから狼狽しているとしてもその女王様に一発食らわせられることができるのだから。

普通の人だと無理だ。

まず女王様のオーラにやられる。

オーラにやられなくとも女王様は随分と腕っぷしが強いのだ。護衛の者たちを負かせるほどに。

その女王様を気絶させることができるだなんて、マコトさん強すぎ。

「マオマオ様は寝てしまわれたのですか?心なしか顔色も先ほどより良さそうですね。」

「ええ。ビールを飲んだらアルコールが回ったのか容体が安定しました。」

「あれ?お酒あったんですか?」

「はい。すっかり頭から飛んでたんですけど、実はビール味の化粧水がありまして・・・。それを試しに飲ませてみました。マコトさんにはせっかくお酒を買いに行ってもらったのにすみません。」

あはは。と笑いながらマコトさんに告げる。

せっかくマコトさんにはお酒を買いに行ってもらったのに、私が持っていたなんてまるで笑い話だ。

というか笑い話にしてほしい。

するとマコトさんは苦笑した。

その笑い方から怒ってはいないように見受けられる。

「そうですか。それよりビール味の化粧水なんて初めて聞きました。マユさんが作成した化粧水ですか?」

「ええ。そうなんです。偶然できた化粧水なんですけど、効果が効果だから売ることができな・・・く・・・てぇ・・・?あ、あれ・・・?」

そうだよ。あの化粧水とんでもない効果があったじゃん。

だから売らずに手元にとっておいたのだ。

それでチビチビ飲んでたんだから。

「どのような効果なんですか?マユさんの様子を見るにあまり良さそうな効果ではないような気がしますが?マオマオ様に飲ませても良かった代物なんですか?」

マコトさんは元魔王様のことを心配してか、それとも化粧水の効果に興味があるのかやけにまくし立ててきた。

「いや・・・あの・・・。効果は、ですねぇ・・・。寿命を1年延ばしますです。はい。」

「は?」

「え?」

『マユっ!?それはっ!!』

「では、お母様は!!」

タイチャンとマコトさんが化粧水の効果に思わずと言ったように口をパカッと開ける。

対するプーちゃんと女王様は化粧水の効果に目を輝かせた。

って、女王様ってばいつの間に気が付いたのだろか。

 

 

しおりを挟む
感想 829

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

王宮を追放された俺のテレパシーが世界を変える?いや、そんなことより酒でも飲んでダラダラしたいんですけど。

タヌオー
ファンタジー
俺はテレパシーの専門家、通信魔術師。王宮で地味な裏方として冷遇されてきた俺は、ある日突然クビになった。俺にできるのは通信魔術だけ。攻撃魔術も格闘も何もできない。途方に暮れていた俺が出会ったのは、頭のネジがぶっ飛んだ魔導具職人の女。その時は知らなかったんだ。まさか俺の通信魔術が世界を変えるレベルのチート能力だったなんて。でも俺は超絶ブラックな労働環境ですっかり運動不足だし、生来の出不精かつ臆病者なので、冒険とか戦闘とか戦争とか、絶対に嫌なんだ。俺は何度もそう言ってるのに、新しく集まった仲間たちはいつも俺を危険なほうへ危険なほうへと連れて行こうとする。頼む。誰か助けてくれ。帰って酒飲んでのんびり寝たいんだ俺は。嫌だ嫌だって言ってんのに仲間たちにズルズル引っ張り回されて世界を変えていくこの俺の腰の引けた勇姿、とくとご覧あれ!

転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。

まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。 温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。 異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか? 魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。 平民なんですがもしかして私って聖女候補? 脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか? 常に何処かで大食いバトルが開催中! 登場人物ほぼ甘党! ファンタジー要素薄め!?かもしれない? 母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥ ◇◇◇◇ 現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。 しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい! 転生もふもふのスピンオフ! アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で… 母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される こちらもよろしくお願いします。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...