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四章
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しおりを挟む「お、お母様・・・。そんな・・・。もう、長くないなどと言わないでください。」
女王様は魔王様の言葉を聞いて強いショックを受けているようで、うまく言葉が出せずにいる。
プーちゃんから魔王様の寿命が残り少ないとは聞いていたが、本人から直接聞くのはプーちゃんから間接的に聞くよりも堪えるらしい。
「パールバティーよ。命あるものはいつか必ず死が訪れるのじゃ。儂はもう十分に生きたゆえ、悔いはない。心残りはあるがのぉ。魔族の長の後継者が未だおらぬのだ。」
魔王様は女王様の近くによると、そっと女王様の頭に触れ、そのまま髪を優しく手で梳き始めた。
それはまるで、愛しい宝物に触れているように見える。
「あと・・・どのくらいのお命なのでしょうか。」
女王様は声を絞り出して、魔王様に確認する。
「さてね。ただ、もうこの身体はとっくに限界を超えておる。最近は食べ物も受け付けなくなってきた。いくら魔族の身体とはいえ、あと2~3ヶ月の命であろう。」
「そ、そんなっ!?」
「魔王様・・・。」
後、2~3ヶ月の命。
それはかなり短いのではないだろうか。
やっと女王様と魔王様が会えたのに、魔王様の命が後2~3ヶ月だなんて。
あまりにも残酷だ。
タイチャンは魔王様があまり先が長くないことを知っていたのかそれほど驚いた様子ではない。
ただ、改めて魔王様の命が残り短いと聞いて切なそうに俯いている。
私も、まさか魔王様の命があと2~3ヶ月しかないとは思っていなかったのでショックを受けた。
いくら残り時間が少ないとプーちゃんから聞いていたとはいえ、まさかこんなにも短い時間しか生きられないとは思ってもみなかったのだ。
魔族は寿命が長いと聞くし、寿命だと言われてもあと2~3年くらいは魔王様は生きていられると思っていたのだ。
「ゆえに急いで後継者を決めないといけないのじゃ。じゃが、タイチャンを後継者にするのは心許ない。とはいえ、脳筋のチーチャンは論外じゃし、ライチャンはまだ幼すぎる。他の魔族はタイチャンたちとは実力の差が大きいのじゃ。」
『つまり、次期魔王に相応しいほどの魔力と知力を持ったものがおらぬのじゃな?』
「ああ。そのとうりじゃ。」
『ふむ。本来であれば魔王の実の娘であるパールバティーが相応しいと妾は思うのじゃが・・・。』
「えっ!?私ですかっ!?でも、私には治めている国があります。」
まあ、そうだよね。
女王様の力は抜きんでているし、魔王様の実子ということもあって次期魔王として一番相応しいだろう。
ただ、女王様はレコンティーニ王国の女王なのである。
レコンティーニ王国の女王が魔王に就任することは難しいだろう。
今度はレコンティーニ王国の女王を決めなくてはならなくなってしまう。
ただ、もうそんな時間は残されていない。
「そうじゃなぁ。儂がレコンティーニ王国を旅しなければなぁ・・・。」
過去を悔やむように魔王様は呟いた。
「過去は変えられません。それより先を見ましょう!」
いくら悔やんでも過去は変えられないから前を見るしかない。
「そうじゃなぁ。そうだなぁ。マユさん、どうだい?」
「え?」
魔王様の「どうだい?」という発言に私は首を傾げる。
なぜ、この流れで魔王様は私にふってくるんだろうか。
私はこの魔族について理解していないのだから、私に次魔族が誰がいいかと尋ねられてもわからないのだけれども。
私は困惑気味に魔王様に言う。
「あの・・・私じゃ魔族の方たちのことをあまり知らないので、魔王に誰が相応しいか選ぶことはできません。」
「違う違う。儂が言いたいのはじゃなあ。マユさん。魔王にならんかね?」
魔王様がそう言ったとき、しばし時が止まったような気がした。
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