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四章
4ー79
しおりを挟む「ま、魔王様のお手を煩わせるわけにはいきません!意地でもここは通しませんよ。」
タイチャンは余裕の表情を一転させて引きつった笑みを浮かべながらそう言った。
きっと、まったく魔族たちの攻撃が私たちに効かないなんて思ってもみなかったんだろうな。
まあ、プーちゃんだしね。
『我はマオマオに会うのだ。通せぬというのなら、力づくで通るまで。』
プーちゃんが不敵に笑いながらタイチャンに宣言をした。
うーん。
プーちゃんの不敵な笑みってなんだか怖いんだよねぇ。
普段はポヘーッとしているけど、こういう表情をしていると怖く感じてしまう。
実際、プーちゃんはここにいる誰よりも強いんだろうけど。
「なっ!あ、遊んでないで全力でその者たちを排除しなさいっ!!」
タイチャンがプーちゃんの宣言を受けて、配下の魔族たちに命令をする。
タイチャンの命令を受けて魔族たちは一撃必殺技を繰り出そうと身構えるが、プーちゃんの前では全くもって意味がない。
全てプーちゃんが作ったと思われるバリアに吸収されてしまっている。
って、・・・吸収?
弾くのではなく吸収って、その多大な魔族たちの攻撃魔力はどこに行ったのだろうか?
『ふむ。なかなかの魔力なのだ。だが、トマトの方が美味しいのだ・・・。トマトのことを思い出したら無性にトマトが食べたくなってきた。マユ、トマトが食べたいのだ。』
「プーちゃん・・・。」
この場面でトマトが食べたいとか普通言うかね。と、思わず呆れてしまう。
というか、
「プーちゃん、攻撃してくる魔族たちの魔力を食べてたの?」
『何を言っておるのだ?当たり前であろう。魔力が勿体ないのだ。』
プーちゃんはさも当然のようにそう言ってくる。
「・・・初耳だよ。」
私はそんなこと全く知らなかったので、そう返した。
まさか、他人の魔力を食べることができるだなんて・・・。
『まあ、いい。それより、マユ。トマトが食べたいのだ。』
「はいはい。」
今から家まで帰ってトマトを採ってくるわけにもいかない。
まあ、こういうこともあるかと思って鞄の中にはトマトが詰め込まれているんだけどね。
私は鞄の中からトマトを取り出して、プーちゃんに渡した。
「・・・ごくりっ。」
すると、誰かが唾を飲みこむ音がした。
どこからだろうかと辺りを見回すと、口の端から涎を垂らしてトマトを凝視しているタイチャンの姿が目に入った。
「タイチャン・・・トマトいる?魔王様に会わせてくれるのなら、トマトあげるよ?」
私は鞄から取り出したトマトをタイチャンに見えるように上に掲げた。
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