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四章
4ー69
しおりを挟む「ま、魔王様?あの・・・。」
「なんじゃ?」
魔王様に話しかけると、魔王様は無表情で私の方を向いた。
「ひぃ・・・っ。」
魔王様の両目はミギーとヒダリーがティーカップの中にいるせいか、魔王様の目の位置には真っ暗な空洞があるだけだ。
その不気味さに思わず私は悲鳴を上げてしまった。
「ああ・・・。人は目が無いと儂が怖く映るのじゃったな。ふむ。ミギーにヒダリーよ。儂の元へ戻ってこい。」
「「は、はぁ~い・・・。」」
魔王様の呼びかけにミギーとヒダリーが嫌々ながらに応じる。
うん。多分、ミギーとヒダリーも今の魔王様の威圧感が怖いのだろう。
いくらいつも近くにいるからといって魔王様の威圧感に慣れることはないのだろう。
「ぬっ!ミギーとヒダリーよ。お主ら紅茶臭いのぉ。水で洗ってくるのじゃ。」
「「は、はいですぅ~!」」
ははっ・・・。
ミギーとヒダリーってばずっと紅茶風呂の中にいたから紅茶の匂いが移ってしまったようだ。
魔王様はミギーとヒダリーに水で身体?を洗ってくるように命令していた。
もちろん、ミギーとヒダリーは頷いて急いでライチャンに水を用意してもらって、ティーカップの中でごしごしと目玉を洗っている。
っていうか、ライチャンってばティーカップを用意するのに随分と手慣れているようで、いつもこんなことをしていたのだろうかと勘ぐってしまう。
しばらくして、身体・・・もとい義眼を綺麗に洗ったミギーとヒダリーが魔王様の目の中に飛び込んでいった。
これでやっと魔王様の顔が普通に見られるようになる。
「して、マユとやら。儂に何を言いかけたのじゃ?」
魔王様が私の方を向き直り確認をする。
「私が女王様を連れてきます。だから、女王様とお話をしてください。」
「うむ。儂から願い出ようかと思っていたのだがのぉ。マユから言ってくれるとはありがたい。あのバカ娘を是非儂の元へと連れてきてくれ。」
「はい。わかりました。」
魔王様は私が女王様を魔王城へ連れてくると言ったからかご機嫌そうに笑った。
その笑みは今まで見たよりも自然で、優しさに溢れている笑みだった。
まるで魔王様とは思えないような笑みであった。
『マユ、あのような約束をしてパールバティーを本当に連れてくるのかえ?』
魔王城を後にした私たちは一路レコンティーニ王国に向かって歩いていた。
「ええ。連れてきます。きっと仲直りさせてみせます。」
『マユはお節介という言葉をしっているかの?』
「・・・知ってます。お節介かもしれないけど、魔王様の笑顔を見ちゃったらやるしかないです。」
『マオマオが余計に悲しむことになってもか?』
「うっ・・・。」
タマちゃんの言葉に、私は思わず立ち止まってしまった。
確かに、私がどうこうできることではないのかもしれない。
女王様が魔王様を嫌う理由はもしかしたら解決できないかもしれない。
それでも、もう二人ともずっと会っていないようだったので、一回は引き合わせたいと思った。
お節介と言われようとも。
もしかしたら、お互いの誤解がもとで女王様が魔王様のことを一方的に嫌っているかもしれないからだ。
『首を突っ込むのなら覚悟はしておくのじゃ。よいな。』
「・・・はい。」
『よし。じゃあ、プーちゃんよ。そろそろ姿を現すのじゃ。』
『・・・魔王は?』
『ここにはおらぬぞ。』
タマちゃんの言葉を聞いて、プーちゃんが姿を現した。
そう言えば、プーちゃんもなんで魔王様には会いたくなかったのだろうか。
もういろいろと不思議なことばかりである。
『一度、マユの家に戻るのじゃ。』
そうして、私たちはプーちゃんの転移の魔法で家路につくのであった。
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