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四章
4ー30
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「人をいいなりに出来る魔物の血って、本当にあると思う?」
エーちゃんが帰って来る前にマリアに話しかける。
私たちがこの国にやってきたのは、エルフの集落の問題を解決することではなくて、人をいいなりに出来る魔物の血が本当に存在するのか確かめに来たのだ。
本題はエルフの里のごたごたではなくこちらなのだ。
しかもタイミングよく新国王の即位式が明後日ある。
これは何かあるだろうと言っているようなものだ。
「さあね。でも、伝説では50年前に封じたということだからあるんじゃないのかしら?」
「そうなると、新国王様が操られているとか・・・?」
「もしくは、新国王様が現国王や現国王の側近を操って自分が王位についたってことも考えられるわね。」
「待って!それじゃあ、明日エーちゃんたちに付き合っている暇なんてないんじゃない?情報を集めないと・・・。」
マリアと話をしていると、早く情報を集めないと大変なことになりそうな予感がする。
あくまで予感なんだけれども。
「でもさ、エルフの王様であるエーちゃんの協力が得られれば情報を収集するのが簡単だと思わない?」
「え?」
「だって、エルフの王様よ。そのエーちゃんがこの王都にいるのだから、きっとエルフの側近たちはこの場所が安全かどうか調べたはずよ。その情報が得られれば早いと思わない?」
「・・・マリア、すごーい。」
マリアの思惑に私は思わず声を棒にした。
なんだかなぁ。
打算のためだけにエーちゃんたちのことをどうにか蹴りをつけようというように聞こえるんだよね。
あんまり打算で付き合うのはよくないと思うのよね。うん。
「マユ、すごいだなんて思ってないでしょ?棒読みよ。」
「あー。うん。なんか心情的にさ。エーちゃんたちを打算で助けるように聞こえちゃってさ。」
「そうね。でも、一石二鳥なのだからいいのではない?どっちも解決して両方ともハッピーになれるわ。」
マリアはそう言って勝ち気に微笑んだ。
まあ、確かにね。どっちの問題も解決できれば一石二鳥だけどね。
でもさ、こういうときの一石二鳥って、結果がよかったためしがないんだよね。
どっちつかずで終わることもあるしさ。
「うん・・・。だといいけど・・・。」
どうしても上手くいくような気がしなくて、あいまいな返事になってしまう。
「お、おおおおおおおおおおおおお待たせしましたーーー。」
マリアとの話も一段落したところで、エーちゃんが戻ってきた。
「ど、どどどどどどどどどうぞ、こちらですーーー。」
「エーちゃん。ありがとう。大変だったでしょ?手伝わなくてごめんね?」
「い、いいいいいいえ。て、ててててててて手伝ってもらうだなんて、そ、そそそそそそそんなおそれ多い。」
ブンブンブンブンとエーちゃんは顔の前で勢いよく手を横にふる。
思いっきり手を振っているように見えるので、手首が痛くならないか心配だ。
「エーちゃん。安心して。そんなに気をはらなくても大丈夫だから。だって、私たちは友達なんでしょう?って、エーちゃんはエルフの王様なんだから普通の人間でしかない私が友達なのは不釣り合いかもしれないけど・・・。」
「い、いえそんなことはありませんっ!!」
「そう?」
「は、はい!もちろんでありまするっ!」
うーん。
まだまだ、エーちゃん硬いなぁ。
もうちょっと肩の力を抜いて話してくれると嬉しいんだけどな。
『エーちゃん!お布団ー。眠いのー。』
『あたしもー。』
『お布団、ふかふかなのー?』
マーニャたちは、まだまだ私たちに対して硬さを見せるエーちゃんに構いもしない。
美味しいご飯でお腹がいっぱいになったマーニャたちは、どうやらもうお眠のようだ。
まあ、マーニャたちはまだまだ子猫だしね。
子猫は寝るのが仕事のようなものだし。
むしろ、成猫でも一日のほとんどを寝て過ごすと聞くし。
マーニャたちはおねだりするように、エーちゃんの足に頭をすりすりさせている。
「ふわっ!ふわっ!足がふわふわなのーーー!幸せなのー。」
『エーちゃんも一緒に寝よー。』
『寝る子は育つのー。』
『いっぱい寝るのー。』
マーニャたちはすっかりエーちゃんと仲良くなったようだ。
うん。マーニャたちが私よりエーちゃんの方にすりよるのが少し寂しい・・・。
寂しいけど、仕方ないよね。うん。
「マユ、そんな悲しそうな顔をしないの。ね?」
マリアは落ち込んでいた私の肩をトントンと叩いた。
「う、うん。」
マリアに宥められて、私たちはエーちゃんが用意してくれた部屋に向かった。
エーちゃんが帰って来る前にマリアに話しかける。
私たちがこの国にやってきたのは、エルフの集落の問題を解決することではなくて、人をいいなりに出来る魔物の血が本当に存在するのか確かめに来たのだ。
本題はエルフの里のごたごたではなくこちらなのだ。
しかもタイミングよく新国王の即位式が明後日ある。
これは何かあるだろうと言っているようなものだ。
「さあね。でも、伝説では50年前に封じたということだからあるんじゃないのかしら?」
「そうなると、新国王様が操られているとか・・・?」
「もしくは、新国王様が現国王や現国王の側近を操って自分が王位についたってことも考えられるわね。」
「待って!それじゃあ、明日エーちゃんたちに付き合っている暇なんてないんじゃない?情報を集めないと・・・。」
マリアと話をしていると、早く情報を集めないと大変なことになりそうな予感がする。
あくまで予感なんだけれども。
「でもさ、エルフの王様であるエーちゃんの協力が得られれば情報を収集するのが簡単だと思わない?」
「え?」
「だって、エルフの王様よ。そのエーちゃんがこの王都にいるのだから、きっとエルフの側近たちはこの場所が安全かどうか調べたはずよ。その情報が得られれば早いと思わない?」
「・・・マリア、すごーい。」
マリアの思惑に私は思わず声を棒にした。
なんだかなぁ。
打算のためだけにエーちゃんたちのことをどうにか蹴りをつけようというように聞こえるんだよね。
あんまり打算で付き合うのはよくないと思うのよね。うん。
「マユ、すごいだなんて思ってないでしょ?棒読みよ。」
「あー。うん。なんか心情的にさ。エーちゃんたちを打算で助けるように聞こえちゃってさ。」
「そうね。でも、一石二鳥なのだからいいのではない?どっちも解決して両方ともハッピーになれるわ。」
マリアはそう言って勝ち気に微笑んだ。
まあ、確かにね。どっちの問題も解決できれば一石二鳥だけどね。
でもさ、こういうときの一石二鳥って、結果がよかったためしがないんだよね。
どっちつかずで終わることもあるしさ。
「うん・・・。だといいけど・・・。」
どうしても上手くいくような気がしなくて、あいまいな返事になってしまう。
「お、おおおおおおおおおおおおお待たせしましたーーー。」
マリアとの話も一段落したところで、エーちゃんが戻ってきた。
「ど、どどどどどどどどどうぞ、こちらですーーー。」
「エーちゃん。ありがとう。大変だったでしょ?手伝わなくてごめんね?」
「い、いいいいいいえ。て、ててててててて手伝ってもらうだなんて、そ、そそそそそそそんなおそれ多い。」
ブンブンブンブンとエーちゃんは顔の前で勢いよく手を横にふる。
思いっきり手を振っているように見えるので、手首が痛くならないか心配だ。
「エーちゃん。安心して。そんなに気をはらなくても大丈夫だから。だって、私たちは友達なんでしょう?って、エーちゃんはエルフの王様なんだから普通の人間でしかない私が友達なのは不釣り合いかもしれないけど・・・。」
「い、いえそんなことはありませんっ!!」
「そう?」
「は、はい!もちろんでありまするっ!」
うーん。
まだまだ、エーちゃん硬いなぁ。
もうちょっと肩の力を抜いて話してくれると嬉しいんだけどな。
『エーちゃん!お布団ー。眠いのー。』
『あたしもー。』
『お布団、ふかふかなのー?』
マーニャたちは、まだまだ私たちに対して硬さを見せるエーちゃんに構いもしない。
美味しいご飯でお腹がいっぱいになったマーニャたちは、どうやらもうお眠のようだ。
まあ、マーニャたちはまだまだ子猫だしね。
子猫は寝るのが仕事のようなものだし。
むしろ、成猫でも一日のほとんどを寝て過ごすと聞くし。
マーニャたちはおねだりするように、エーちゃんの足に頭をすりすりさせている。
「ふわっ!ふわっ!足がふわふわなのーーー!幸せなのー。」
『エーちゃんも一緒に寝よー。』
『寝る子は育つのー。』
『いっぱい寝るのー。』
マーニャたちはすっかりエーちゃんと仲良くなったようだ。
うん。マーニャたちが私よりエーちゃんの方にすりよるのが少し寂しい・・・。
寂しいけど、仕方ないよね。うん。
「マユ、そんな悲しそうな顔をしないの。ね?」
マリアは落ち込んでいた私の肩をトントンと叩いた。
「う、うん。」
マリアに宥められて、私たちはエーちゃんが用意してくれた部屋に向かった。
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