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四章
4ー8
しおりを挟むエルフの店員さんが提供してくれた料理はとても美味しかったということをここに記しておく。
どの味も薄味ながらも素材の風味が活かされていて素材そのものの美味しさが十分に引き出されていた。
「お・・・美味しかった。無言で食べちゃったよ。」
「本当ね。とっても美味しかったわ。夢中で食べちゃったわ。」
「そうだろう。そうだろう。ここの料理はどこの料理よりも美味しいんだからな。」
そう言って隣の席に座っていたおじさんが豪快に笑った。
「・・・お、おおおおお、お気に召して・・・いたっ・・・いたたたた・・・いただけましたでしょうかぁぁぁ・・・。」
いつの間に来たのか机の下には先ほど料理を運んで来てくれたエルフさんがしゃがみこんでいた。
思わずビックリして声を出しそうになったが、驚いた声を出したら余計にエルフさんが逃げ隠れてしまいそうだったので声を無理やり飲み込む。
「ははははは。嬢ちゃんたち美味しかったってよ。よかったな。」
「はいぃぃぃぃぃーーーー。ぐすん。」
おじさんが笑いながら言うと、エルフさんは頷いてから大粒の涙を流した。
「えっ・・・ちょっ・・・泣かないで・・・。どうしたの?」
急に泣いてしまったので慌ててしまう。
机の下にもぐるようにしゃがみ込んでいたので、私も同じようにしゃがみこむ。
そうして、顔を覗き込むようにエルフさんを見つめればエルフさんはさらに顔を隠してしまった。
「ははははは。心配するな。こいつ嬉しくって仕方がないんだよ。人間のお客なんて初めてだったからな。それに美味しいって言われて嬉しくて泣いてしまっただけだ。」
「ああ。そうだったんですね。嬉し泣きならよかったです。・・・ん?」
おじさんが丁寧に教えてくれたことで嬉し泣きだとわかってホッとした。
ただ、今の言葉になにか引っ掛かりを感じた。ような気がする。
マリアは驚いているのか目をぱっちりと見開いている。
目が大きく見開かれていることで美少女がさらに美少女になっているよ、マリア。
「人間のお客さんが・・・初めて?あなた人間じゃなかったの?」
マリアがそうおじさんに尋ねている。
ああ、そっか。先ほどの言葉の違和感はそこだったのだ。
見る限りおじさんはどこにでもいる明るく頼りがいのあるおじさんに見える。
年の頃は私より少し上だろうか。
引き締まった筋肉が強そうな印象を受ける。
「人間だと言った記憶はないぞ。だいたい、この店は人間には見えないのだから人間が入ってくるわけがないじゃないか。お嬢ちゃんたちをのぞいてな。」
「・・・はい?」
「・・・えっ?」
おじさんの言葉に私とマリアは思わず同時に聞き返してしまった。
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