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三章

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「お母様のお知り合いだというのであれば、あなた方は信頼できそうですね。そこで折り入ってお話があります。」

「えっと、拒否してもいいですか?」

「なぜ拒否をするんでしょうか?」

さっきまでとまるっきり態度が異なる皇太子殿下に、なんだか面倒なことに巻き込まれたことに気が付いた。

慌てて巻き込まれないように拒否をしようとするが、皇太子殿下の嘘くさい笑顔に阻止されてしまった。

外に声が漏れないようにだとか、さっきまで良い人全開で騙されやすい皇太子殿下面してたのに食えない表情をしている今の皇太子殿下を見て、ロクでもないないことに巻き込まれようとしているのはわかりきっている。

だから、拒否したいのだ。

そっと、マコトさんの方を向く。

マコトさんはにこやかに笑っていた。

その顔は「諦めてください。」と言っているようだった。

「マリア、私は帰りたいわ。今すぐにでも。」

私はマコトさんに言っても無駄だということに気づき、マリアに帰りたい旨を告げた。

「あら、ダメよ。今マユが帰ってしまったら私は一生この姿のままだわ。」

しかし、マリアに一掃されてしまった。

「いいんじゃない。可愛いから。」

「マユ・・・?元はと言えばマユが作った化粧水の所為でしょ?」

「うっ・・・。でも、元の姿に戻す方法がわかったから。」

「本当!!じゃあ、帰りましょう。今すぐに。」

元の姿に戻れると聞いたらマリアはすぐに乗ってきた。

そして帰ることに同意がもらえた。

よし、これで帰れる。ってわけでもない。

クロとシロがこちら側につかなければ転移できないのだ。

プーちゃんはミルトレアちゃんとどっか行っちゃったし。

「ええと。マリアにも同意を頂いたので私たちはこれで帰ります。」

「クロとシロにお願いして転移でもしますか?でもね、私は皇后陛下には借りがあるのです。皇太子殿下の頼みでしたらお断りいたしましたが、皇后陛下までいらっしゃるとなると私はお断りすることができないのです。そのため、クロとシロを貸すことはできませんよ。」

うぅ。

案の定、マコトさんに釘を刺された。

というか、マコトさんったら皇后陛下に借りがあったんだね。知らなかった。

まあ、それはいいにしても、やっぱり巻き込まれるしかないのか。

もう嫌な予感しかしないんだけどねぇ。

・・・あれ?

さっき、マコトさんさっさと帰るって皇后陛下の前で皇太子殿下に言ってたのに、なんで急に意見を翻したんだ?

「で、でもさっきマコトさん、帰りますよって言ってましたよね?」

「そうでしたっけ。忘れました。」

思わず突っ込んでみると、こちらもまた嘘くさいような笑みでにっこりと笑って否定されてしまった。

か、帰りたい。

「では、話を続けますね。」

こちらが帰る方法がなくて話を聞くしかなくなったところで皇太子殿下が切り出した。

聞きたくないんだけど、聞かなくちゃいけなそうだ。

「ミルトレアのことです。」

そう言って皇太子殿下は声を潜めた。

まさかのミルトレアちゃんの話っ!?

もしかして、もしかしてミルトレアちゃんは皇太子殿下の実子ではないとか?

ん。

いや、違うか。

皇帝陛下が言っていた水色の猫もといマリアがいることで皇太子殿下が人が変わったように散財する元になったんじゃないかと言っていたが、マリアの所為で皇太子殿下がそうなったとは思えない。

マリアはしっかり者だから、余計な散財など許さないだろう。

すると、マリアのことを遠ざけたミルトレアちゃんがなにやら怪しくなってくる。

皇帝陛下もミルトレアちゃんのことは知らなかったし。

「ミルトレアが近くにいると判断力が鈍るのです。最初は偶然かと思ったのですがどうも違うようなんです。」

「えっと、ミルトレアちゃんは皇太子殿下の娘さんですよね?」

「さあ。そこから曖昧なんです。どうしてミルトレアが私の元に来たのか全く思い出せないのです。」

えっ。

まさかのミルトレアちゃん。皇太子殿下の実の娘じゃない説が出てきてしまいました。

「ミルトレアちゃんの素性を探ればいいんですか?」

いつから皇太子殿下の元にいたのかもわからないミルトレアちゃん。

ミルトレアちゃんが側にいると判断力が鈍ってしまうという。

きっとそれで、いろいろ不要なものを買い込んでしまったのだろう。

精神を支配するような魔法か何かがあるのだろうか。

「はい。マユさんには4大精霊も聖竜も猫様もついていますからね。適任だと思います。」

そういうことですか。

やっぱり、厄介ごとでした。

精神を操ることができるかもしれないミルトレアちゃんの素性を調べるのは難しいと思うんですけどねぇ。

って。

そう言えば、プーちゃんミルトレアちゃんと一緒だよね。

大丈夫なのかな。プーちゃん。

 

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