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三章
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しおりを挟む私がミルトレアちゃんのお父さんに皇太子殿下のことを尋ねると、ミルトレアちゃんとミルトレアちゃんのお父さんの目と口がカポッと大きく開いた。
「えっ?」と思ってマコトさんを見ると、額に手を当てて首を横に力なく振っていた。
「はぁ~~~。」
そうして、マコトさんは大きなため息をついた。
「マユさん。周りの状況を確認してみましょうか。」
「え?」
周りの状況ってなに?
まさか、誰かが聞き耳をたてていたとか?
でも、周りを見回しても誰もいない。
まあ、いたとしてもこの場所で指揮を取っているのは皇太子だということは周知の事実なので問題はないと思うけれども。
「え?」
「マユさん。ここを指揮しているのは誰でしょう?」
マコトさんがわかりきったとことを聞いてくる。不思議に思いながらも答える。
「皇太子殿下でしょ?だから、皇太子殿下にきいてみようと思ってミルトレアちゃんのお父さんに皇太子殿下の居場所を訊ねたのよ?」
「………では、マユさんだったら、この集落のどこに皇太子殿下がいると思いますか?」
「え?」
この集落のどこに皇太子殿下がいるか………?
そうだよね。皇太子殿下はもう何十年もこの地で呪われた大地の復興に力をいれていると聞いている。
ということは、きっとこの集落で暮らしているのだろう。
この集落が一番呪われた大地に近いのだから。きっと、呪われた大地の近くで過ごしていることだろう。
だって、大好きな皇后陛下がやり遂げようとしていたことなんでしょ?
ならば、きっとこの地で頑張っているはずだ。
で、この集落のどこかっていうと………やっぱり皇太子殿下なんだから、集落のなかでも一番立派な建物に住んでいるのではないだろうか。
だって、皇太子殿下を小さな小屋に追いやって住民が一番立派な建物に住むなんてことは、一般的には畏れ多くてできないだろう。
………!
そうか!!
わかったわ!
「この集落で一番立派な建物ね!」
「………ええ、まあ。そうですよね。普通に考えて。」
あ、あれ?
正解じゃないの?
マコトさんの声がどこか硬い。
そして哀れむような瞳で私を見つめてきた。
マコトさんにそんな目を向けられる覚えがないんだけど………。
「それで、です。この集落で一番立派な建物はどこですか?」
「えっと………。」
マコトさんに言われて集落の様子を思い浮かべる。
確か集落の真ん中に大きめの家があった。他の家はみんな同じくらいの大きさだったな。
ん?
あれ?
私たち、そういえば集落の中でも一番大きな家に入った!?
えっ!?も、もしかして!!
「こ、皇太子殿下っ!?」
ミルトレアちゃんのお父さんが皇太子殿下なのっ!?
思わず叫ぶと、マコトさんがゆっくりと頷いていた。
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