上 下
358 / 584
三章

3ー125

しおりを挟む

「………はい!?」

思わず声が裏返ってしまったのは仕方のないことだと思う。

まさか、女神(?)様から、そんなことをお願いされるとは思ってもみなかったのだ。

だってさ、普通だよ。普通はさ、世界を救って欲しいとかっていうお願いってさ、異世界に転移してすぐにお願いいたしますされることなんじゃないの?

なぜ、今さらになってそんなことを言うのだろうか。

「お願い、マユ。この世界を救って………?」

上目遣いで、目をパシパシと瞬かせながらもう一度お願いしてくる女神(?)様。

上目遣いされても、ドキッとなんかしないけど。

「あ、あははは。マユさん。なんだか大変そうですね。では、プーちゃんも見つかったことですし、僕は王都に戻りますね。」

あまりのことに、脳の処理能力を越えたマコトさんが震えながらそう告げてきた。

いやいやいやいや。マコトさん。プーちゃんは見つかったけれども、肝心のマリアはまだ見つかってないんだから、帰らないで。

マコトさんは、シロとクロにお願いして王都に戻るようだ。

「ちょっと、待って!!マコトさんも迷い人でしょ!?ここは、残ってくださいっ!」

「あ、マユだけで大丈夫よぉ~ん。マコトだっけ?帰っていいわよぉ~。」

マコトさんを必死でひき止める私に、無情にも女神(?)様はあっけらかんと告げる。

この女神(?)様は、マコトさんには興味がないようだ。

でも、普通はこういうときって同じ世界から転移してきた仲間と一緒に世界を救うっていうのが相場じゃないの?

マコトさんの魔道具は役に立つと思うよ、たぶん。

「ま、マコトさんは素晴らしい魔道具を造るんですよ。きっとマコトさんにも協力してもらって方が世界を救える可能性も上がりますよ!」

「男は不要よ!」

「へ?」

まさかの女神(?)様は男性が嫌いでしたか………?

いやいやいや、それだけで世界を救える可能性を潰さないよね?ね?

「あらぁ~。マユってばマコト狙いだったのぉ~?だから一緒にいたいのかしらぁ~?」

女神(?)様は目を細めながら聞いてくる。

なぜだか、一気に空気が痛いくらい冷たくなったような気がする。

気のせいだろうか。

「あの、そんな気はいっさいなかったんですが………。」

「ダメよぉ~、ダメダメ。マコトだけはダメよぉ。」

「はあ。まあ、マコトさんこんな若そうな見た目してますけど、80歳ですし。そんな対象にはなり得ないんですけど………。」

「そうですよ!僕にだって選ぶ権利がありますよ。」

「なっ!?」

マコトさんが、私と女神(?)様の会話に急に入ってきた。

つーか、マコトさん。ずいぶん失礼じゃありませんか?

「あらあら~。マユもマコトも気づいていないのぉ~?鈍いわねぇ~。ねぇ、マユ。貴女の名前の由来を知っているかしらん?」

急に女神(?)様が私の名前の由来を聞いてくる。

なんで、今、名前の由来なんかを聞いてくるのだろうか。

私の名前は、若くして亡くなった父の大切な弟と妹の名前から一字ずつもらったと言っていた。

父の弟と妹の分も長生きをして幸せに暮らして欲しいという意味をこめたとか。

でも、それがなんだと言うのだろうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

偽物の女神と陥れられ国を追われることになった聖女が、ざまぁのために虎視眈々と策略を練りながら、辺境の地でゆったり楽しく領地開拓ライフ!!

銀灰
ファンタジー
生まれたときからこの身に宿した聖女の力をもって、私はこの国を守り続けてきた。 人々は、私を女神の代理と呼ぶ。 だが――ふとした拍子に転落する様は、ただの人間と何も変わらないようだ。 ある日、私は悪女ルイーンの陰謀に陥れられ、偽物の女神という烙印を押されて国を追いやられることとなった。 ……まあ、いいんだがな。 私が困ることではないのだから。 しかしせっかくだ、辺境の地を切り開いて、のんびりゆったりとするか。 今まで、そういった機会もなかったしな。 ……だが、そうだな。 陥れられたこの借りは、返すことにするか。 女神などと呼ばれてはいるが、私も一人の人間だ。 企みの一つも、考えてみたりするさ。 さて、どうなるか――。

異世界でお金を使わないといけません。

りんご飴
ファンタジー
石川 舞華、22歳。  事故で人生を終えたマイカは、地球リスペクトな神様にスカウトされて、異世界で生きるように言われる。  異世界でのマイカの役割は、50年前の転生者が溜め込んだ埋蔵金を、ジャンジャン使うことだった。  高級品に一切興味はないのに、突然、有り余るお金を手にいれちゃったよ。  ありがた迷惑な『強運』で、何度も命の危険を乗り越えます。  右も左も分からない異世界で、家やら、訳あり奴隷やらをどんどん購入。  旅行に行ったり、貴族に接触しちゃったり、チートなアイテムを手に入れたりしながら、異世界の経済や流通に足を突っ込みます。  のんびりほのぼの、時々危険な異世界事情を、ブルジョア満載な生活で、何とか楽しく生きていきます。 お金は稼ぐより使いたい。人の金ならなおさらジャンジャン使いたい。そんな作者の願望が込められたお話です。 しばらくは 月、木 更新でいこうと思います。 小説家になろうさんにもお邪魔しています。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

変わり者と呼ばれた貴族は、辺境で自由に生きていきます

染井トリノ
ファンタジー
書籍化に伴い改題いたしました。 といっても、ほとんど前と一緒ですが。 変わり者で、落ちこぼれ。 名門貴族グレーテル家の三男として生まれたウィルは、貴族でありながら魔法の才能がなかった。 それによって幼い頃に見限られ、本宅から離れた別荘で暮らしていた。 ウィルは世間では嫌われている亜人種に興味を持ち、奴隷となっていた亜人種の少女たちを屋敷のメイドとして雇っていた。 そのこともあまり快く思われておらず、周囲からは変わり者と呼ばれている。 そんなウィルも十八になり、貴族の慣わしで自分の領地をもらうことになったのだが……。 父親から送られた領地は、領民ゼロ、土地は枯れはて資源もなく、屋敷もボロボロという最悪の状況だった。 これはウィルが、荒れた領地で生きていく物語。 隠してきた力もフルに使って、エルフや獣人といった様々な種族と交流しながらのんびり過ごす。 8/26HOTラインキング1位達成! 同日ファンタジー&総合ランキング1位達成!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...