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三章

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『妾の空間は安全なのじゃ。誰にも邪魔はされぬ。』

急になにもない空間から、タマちゃんがぴょこっと飛び出してきた。

その顔は、実に得意気である。

「タマちゃんの空間は安全なの?」

『疑うのかのぉ?』

タマちゃんは一転して怒ったかのように眉をクイッと上げ、目を細めた。

「僕はその空間に興味がありますね。見せてください。」

私がタマちゃんに答えるよりも早く、マコトさんが身を乗り出して来た。

どうやら、マコトさんはタマちゃんの空間にもただならぬ興味があるようだ。

『なっ!お主は呼んでおらぬのじゃっ!!』

マコトさんの勢いに飲まれたのか、タマちゃんが一歩後ろに下がる。

それでも、マコトさんはさらにタマちゃんに向かって踏み込む。

『く、来るでないっ!』

さらに下がるタマちゃん。

「ふふふっ。そんなに恥ずかしがらずに。ね?ね?」

齢80を過ぎているマコトさんが年甲斐もなくはしゃいでいる。見た目はまだ20代前半にみえるのだから、はしゃいでいても、違和感はない。

見た目上は、だが。

年齢を考えると違和感しかないが。

『来るなぁ~~~!!!』

「さあ!さあ!さあ!」

逃げるタマちゃんに追うマコトさん。形勢はマコトさんが明らかに有利である。

あと一歩でタマちゃんがマコトさんに捕まる。そう思った瞬間に、

『もう嫌なのじゃぁ~~~!!!』

タマちゃんがひときわ激しく叫び、空間の裂け目に消えていった。

「ああっ!タマちゃんっ!!僕もその空間に入れてくださいっ!!」

タマちゃんが消えていった空間にマコトさんも入りこもうと後を追うが、すでにタマちゃんは空間に閉じ籠ってしまっていた。

そして、勢いよくタマちゃんに飛びかかろうとしていたマコトさんは、そのまま宙を泳いで、ベタッと地面に倒れこんだ。

その後も怪しげな魔道具を使ってタマちゃんを探しだそうとするが、上手くいかないのかなかなかタマちゃんを見つけることが出来ないようだ。

「タマちゃぁ~~~んっ!!!」

マコトさんが怪しげな魔道具片手に空に向かって叫ぶ。

天災のマコトさんが作った魔道具でも見つけられないタマちゃんの空間。

はからずしもタマちゃんの空間がいかに安全なのかをマコトさんが実証してくれた。

それとも、マコトさんが作った魔道具がヘボかったのだろうか。

まあ、マコトさんよりもタマちゃんにマーニャたちを預けた方が安全そうだ。

ちょっとタマちゃんの性格に難ありだが。まあ、タマちゃんもマーニャたちと仲良くしたいみたいだからちょうど良いかな。

同じ空間にいれば少しくらいは仲良くなれるよね。

………なれるよね?
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