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三章

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『我は大婚約者ではないと何度も言っておるのだが・・・?』

「ふっ。私の夫となるのは私より強い人物でないとならないわ。我が国の騎士団長ですら私には敵わぬ。隣国の者でさえ私には敵わぬというのに。もう、私には青竜を夫とするしかないと何度も言っているわ。」

プーちゃんは頬の辺りを短い前足を駆使してポリポリと掻いている。

っていうかさー、プーちゃん。大婚約者って何?婚約者じゃないの?

しかも、女王様ってこの国の騎士団長より強かったんだね。しかも隣国の人たちより強いってどういうこと!?

もう、訳がわからないよ・・・。

『ふむ。さっさとハルジオンとくっつけばよかったものを・・・。あやつとお主の二人で来られると我も辛かった。お主の修行のためと言って、お主らは我を容赦なく痛めつけて行くからなぁ。』

プーちゃんは「はぁ」と大きなため息をついた。

というか、ごめん。

プーちゃんと女王様の会話が良くわからなかったんだけど。

伝説の剣ってその昔勇者ハルジオンが持っていた剣なんだよね?

女王様の容姿からすると女王様ってば年がいっていても20代だよね?

勇者ハルジオンと女王様が一緒にプーちゃんを狩りに行っていたってことは・・・。勇者ハルジオンってまだ生きているの?

それとも、女王様が相当な若作り・・・?

ハルジオンさんも女王様もいったい何歳なんですかーーーーっ!!

「そもそもハルジオンは私がこの世に生を受けた頃には既に妻帯者だったから無理だ。」

またまた女王様が爆弾を投下する。

勇者ハルジオンは妻帯者だったようです。

まあ、勇者ってくらいだもんね。妻になりたいって人はきっと多かったよね。

『おお、おお。そう言えばハルジオンは妻にぞっこんだったな。妻としたい女性に求婚するために魔道具を作るんだといって我の鱗を剥いだり、喉を掻っ捌いていったり厄介なことこの上なかったな。』

プーちゃんがなんでもないことのように言うけど、ハルジオンさんってばプーちゃんのことをなんだと思っていたのだろうか。というか、プーちゃん逃げたりしなかったのだろうか?

「そう言うわけなんです。青竜よ、私の夫となってくれませんか。」

『・・・無理だ。』

「大丈夫です。青竜であれば立派な大婚約者になれます。」

女王様はそう言いきるが、無理だと思うよ。プーちゃん実力はあるけど、おつむの方がちょっと弱いから。

っていうか、大婚約者って何。

『我は大婚約者ではないっ!!』

「そうは言わずに。私より強い人が現れるまで大婚約者になりなさい。」

『だから我は大婚約者なんかではないっ!!』

「いいえ!貴方は大婚約者よ!」

プーちゃんと女王様の平行線をたどる会話は続く。

そろそろこの会話にも飽きてきたんだけど・・・。

大婚約者って、言葉だけ聞くと私の頭の中では大根役者に変換されちゃうからどうしても・・・ねえ?

大根役者だったらプーちゃん適任だと思うけどさ。

演技下手だもんね、プーちゃん。

「あのぉー。そろそろいいですか?プーちゃんここに置いていくので、私達だけでも王都の中に入れていただけませんでしょうか?」

マーニャたちもプーちゃんと女王様の会話に飽きてきてしまって、うとうと寝てしまっているし、私もこの不毛な言い争いの中にいたくない。

さっさとマコトさんに魔道具の材料の採取方法を教えてもらわないといけないし。

「あら。マユ、忙しかったの?ごめんなさいね。言っていいわよ。」

「ありがとうございます。」

「ああ。そうそう。マユ。私へのお願い事は決めたかしら?」

女王様は行っていいと軽く言ってのけた。

女王様ってばプーちゃんしか眼中にないのね。ちょっと寂しいような気がする。

そういえば、女王様になんだか聞かなきゃいけなかったような気がするんだけど、思い出せない。

せっかくの機会だけど、また今度にしよう。

 

そして、私達はプーちゃんを置いて王都に足を踏み入れた。

その瞬間、やっと思い出した。

女王様に聞かなければなかなかったことを。

「王都に来た理由はマリアを迎えにくることじゃない。なんで、忘れてたのかしら。私・・・そんなに忘れっぽいの?」

私は、マーニャたちをマコトさんの家に送り届けもう一度女王様と別れた場所まで戻ることにした。

 

 

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