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三章
3ー79
しおりを挟むぐすん。ぐすん。と泣きながら私のベッドに潜り込むマーニャ。
掛け布団の隙間に頭を突っ込んで、前足と後ろ足で器用に布団の中に潜り込んでいく姿はとても可愛かった。
時折、ふりふり揺れるお尻がまたなんとも可愛い。
でも、布団の中に隠れてしまうだんて、よっぽどショックだったようだ。
ポンポンと布団の上からマーニャの頭と思われる位置を軽く叩く。
「みゃう~・・・。」
という小さな声が聞こえてきた。
どうやらしばらく独りにしておいて欲しそうなので、そっとマーニャから離れる。
それから、気になっていたトンヌラさんがいるであろうシャワールームに向かう。
「トンヌラさん、大丈夫ですか?」
トントントンッと軽くシャワールームの入り口をノックして中の様子を窺う。
中からは声は一切聞こえてこなかった。
これは、中に入ってみた方がいいのだろうかと一瞬悩む。
しばらく待っても中から出てこなかったら入ってしまおうか。
そう思ってシャワールームの前で待機していると、ゆっくりとシャワールームのドアが開き、茶トラの猫がフラフラとしながら出てきた。
「トンヌラさん・・・。あの化粧水なんですが、飲んじゃいました?」
トンヌラさんと同じ目線になるように、しゃがんで問いかける。
すると、弱弱しくトンヌラさんが頭を縦に一回だけ振った。
ああ・・・。やっぱり飲んじゃったか・・・。
「ごめんね。あの化粧水、効果を調べたら声が出なくなる化粧水だったの。今からまた化粧水作成するから待っててね。といっても、お望みの効果の化粧水が作成できるかはわからないんだけど・・・。」
コクリとまたトンヌラさんが頷いた。
そして、フラフラと歩き出し、ピョンッと椅子の上に乗ると丸くなってしまった。
自業自得なんだけど、寂しそうな姿を見ているとなんだか可哀想に思える。
早く化粧水を作らなきゃね!
そうして、化粧水を仕込む。完成まで後3時間もあるので、その間に夕食にしようと買って来たり貰ったりした食材をキッチンに並べる。
並べた食材を見て「はあ・・・。」とため息を一つ。
やはり、市場が開いていないと大したものは買えない。
まあ、お肉に関してはいつでも買えるからいいんだけどね。
それ以外がなぁ。
基本的に野菜は自給自足だし。
珍しいものとか自分で作れないものは市場で買い込まなきゃいけないんだけど、市場は週に1回しか開かれない。
そうすると、おのずと手に入れられる食料が限られてくる。
畑の作物もうちょっと種類増やそうかな。
マリアを迎えに行って帰ってきたらいろんな作物を植えてみよう。
とりあえず今日は買って来たものでご飯を作ってしまおう。
ひき肉が手に入ったからハンバーグなんてどうだろうか。
私はひき肉をボールに入れるとパンの耳を千切りボールに投入していく、そこにひき肉と卵を入れてグニグニと捏ねる。そこに味付けとして塩コショウを振り掛ける。
あとは成形して焼けばいい。
生焼けにならないことを祈って・・・。
フライパンに油をひいて、適当な大きさに丸めたひき肉を投入する。
「あ、あれ・・・?おかしいなぁ。ここでジュワーッと良い音がするはずなのに・・・。」
不思議に思ってコンロを見ると、おっと火をつけていなかった。
慌てて火をつければ、
「うわっ!!」
コンロの火が強すぎたようで、フライパンの中にある油に火が移ってしまった。
「火・・・火だから・・・水っ!!」
大慌てで水を汲みフライパンの中に投入する。
「にゃああああ!!!あ、熱ッ!」
水と油が混ざり合って、水がはじけ飛ぶ。
驚いて思わず変な声が出てしまった。
って、ハンバーグってこんなに大変な料理だったっけ・・・?
友達が作ったのを見ていたときは簡単な料理だと思ってたのに。
そうこうしているうちにフライパンの中のひき肉は外が焦げ焦げで中がまったくの生焼け。さらには水浸しでふにゃっとしているというなんとも最悪なものが出来上がってしまった。
「こ、これは私が食べるもん・・・。鍋で煮て味付けしちゃえばきっと食べれるようになる・・・はず。」
気を取り直して、フライパンを洗ってからハンバーグを焼く。
今度はなんとかできた。
ま、まあ焦げちゃってるけどそこは愛嬌ってことで。
それから買ってきたサラダに収穫したトマトを切って乗せる。
主食はユキさんからもらったおにぎりだ。
さて、気を取り直してご飯にしよう!
結果。私以外には皆好評でした。
味うんぬんより、精霊たちは魔力が込められた食事なら美味しいようです。
味は二の次だとか。
美味しい魔力が込められた料理は精霊たちが大興奮ですべて平らげてくれました。
私?
私は魔力の味なんて知らないんで、まったく美味しくなかったよ、うん。
ちなみに私の作った料理で精霊たちの魔力と体力が底上げされたそうです。
さて、そろそろ化粧水ができたかな?
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