288 / 584
三章
3ー55
しおりを挟むグラグラと揺れる家の中で、必死に近くの壁に掴まりなんとか揺れをやり過ごす。
プーちゃんは浮いているからなんともないようだけれども、マーニャとクーニャとボーニャはベッドの窓枠にへばり付いてなんとかやり過ごしたようだ。
キッチンの方からガシャンッという何かが落ちる音がしたが、今はそれどころではない。
一体何が起こったのだろうかとマーニャたちと目配せする。
すると、ベッドの上に鎮座していた卵までもが左右に揺れていることに気がついた。
そして、その揺れと家の揺れ方が全く同じだということにも気がついた。
『うるさぁあああああああ~~~~~~いっ!!!!!』
ピカッ。
ズッドーンッッッ!!!
『『『ふげっ・・・。』』』
突如空が光ったかと思うと、稲妻が畑に落ちた。
畑というよりも、畑で喧嘩をしているブーちゃんとスーちゃんとグリードの上に容赦なく落ちた。
3人とも無事かなぁ・・・。
『せっかく、気持ちよく寝ておったのに騒がしいのじゃ。まったく。妾の邪魔をするとは許せぬ奴等じゃ。』
急にどこからともなく声が聞こえてきた。
辺りを見回すが変わったものはない。
一体どこから聞こえてきたのだろうか。
皆でキョロキョロと辺りを見回す。
『妾はもう一眠りするゆえ、今度は起こすでないぞ。』
「・・・ん?」
なんとなくだが、声がベッドから聞こえてくるような気がする。
皆もそう思ったのか、ベッドに視線が集中する。
ベッドの上にあるのは金色の卵のみだ。
・・・ん?・・・卵?
先ほどよりも卵のヒビが大きくなっているような気がする。
もしかして、この精霊の卵がしゃべったのだろうか。
『そのように皆で見つめられたら眠れぬのじゃ!こっちを見るでないっ!』
卵が大きくバウンドしたかと思うと、やはり卵から声が聞こえてきた。
この声の持ち主はどうやら卵だったようだ。
・・・孵化してないのに、声が聞こえるってどういうことだろうか・・・。
『見るなといっておろうにっ!』
思わずじっと卵を見つめてしまったら、さらに怒られた。
いや、だって卵がしゃべったらびっくりして誰だって見ちゃうじゃん。
「す、すみません。」
一応謝って視線を卵から外し、窓の外を眺める。
外は快晴だった。
先ほどの嵐が嘘のようだ。
ただ、畑には真っ黒に焦げた物体が3つ転がっていた。
ここから見る限りは変わったところはそれだけだ。
ひまわりやトマトなどの畑の作物にはいっさい被害がないように見受けられる。
プーちゃんの涙すごいなぁ~。と現実逃避をしつつ、外に出る。
その後をプーちゃんが着いてきて、そのままトマトに向かって飛んでいった。
どうやら無事かどうかを確かめるようだ。
無事だと思うけどね。
私は、プーちゃんと別れて黒焦げの物体に向かって足を進める。
ちょうど3つあるし、ブーちゃんんとスーちゃんとグリードだと思うんだよなぁ。この物体。
ちなみに誰が誰だかわからないくらいに真っ黒になっている。
こんなに真っ黒で、果たして生きているのだろうか。
心配になりながら3つのうちの1つを手で優しく持ち上げ、心臓の音を確認するために胸だと思われるところに耳を当てる。
心臓が血液を送り出すドクッドクッとした音はいつまで経っても聞こえてこなかった。
それどころか、首筋と思われるところに手を当ててみても脈を感じない。
「心臓止まってるっ!?」
あわてて他の2つも確認するが同じように心臓の鼓動も聞こえなければ脈も感じなかった。
32
お気に入りに追加
2,571
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
偽物の女神と陥れられ国を追われることになった聖女が、ざまぁのために虎視眈々と策略を練りながら、辺境の地でゆったり楽しく領地開拓ライフ!!
銀灰
ファンタジー
生まれたときからこの身に宿した聖女の力をもって、私はこの国を守り続けてきた。
人々は、私を女神の代理と呼ぶ。
だが――ふとした拍子に転落する様は、ただの人間と何も変わらないようだ。
ある日、私は悪女ルイーンの陰謀に陥れられ、偽物の女神という烙印を押されて国を追いやられることとなった。
……まあ、いいんだがな。
私が困ることではないのだから。
しかしせっかくだ、辺境の地を切り開いて、のんびりゆったりとするか。
今まで、そういった機会もなかったしな。
……だが、そうだな。
陥れられたこの借りは、返すことにするか。
女神などと呼ばれてはいるが、私も一人の人間だ。
企みの一つも、考えてみたりするさ。
さて、どうなるか――。
異世界でお金を使わないといけません。
りんご飴
ファンタジー
石川 舞華、22歳。
事故で人生を終えたマイカは、地球リスペクトな神様にスカウトされて、異世界で生きるように言われる。
異世界でのマイカの役割は、50年前の転生者が溜め込んだ埋蔵金を、ジャンジャン使うことだった。
高級品に一切興味はないのに、突然、有り余るお金を手にいれちゃったよ。
ありがた迷惑な『強運』で、何度も命の危険を乗り越えます。
右も左も分からない異世界で、家やら、訳あり奴隷やらをどんどん購入。
旅行に行ったり、貴族に接触しちゃったり、チートなアイテムを手に入れたりしながら、異世界の経済や流通に足を突っ込みます。
のんびりほのぼの、時々危険な異世界事情を、ブルジョア満載な生活で、何とか楽しく生きていきます。
お金は稼ぐより使いたい。人の金ならなおさらジャンジャン使いたい。そんな作者の願望が込められたお話です。
しばらくは 月、木 更新でいこうと思います。
小説家になろうさんにもお邪魔しています。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
変わり者と呼ばれた貴族は、辺境で自由に生きていきます
染井トリノ
ファンタジー
書籍化に伴い改題いたしました。
といっても、ほとんど前と一緒ですが。
変わり者で、落ちこぼれ。
名門貴族グレーテル家の三男として生まれたウィルは、貴族でありながら魔法の才能がなかった。
それによって幼い頃に見限られ、本宅から離れた別荘で暮らしていた。
ウィルは世間では嫌われている亜人種に興味を持ち、奴隷となっていた亜人種の少女たちを屋敷のメイドとして雇っていた。
そのこともあまり快く思われておらず、周囲からは変わり者と呼ばれている。
そんなウィルも十八になり、貴族の慣わしで自分の領地をもらうことになったのだが……。
父親から送られた領地は、領民ゼロ、土地は枯れはて資源もなく、屋敷もボロボロという最悪の状況だった。
これはウィルが、荒れた領地で生きていく物語。
隠してきた力もフルに使って、エルフや獣人といった様々な種族と交流しながらのんびり過ごす。
8/26HOTラインキング1位達成!
同日ファンタジー&総合ランキング1位達成!
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる