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三章

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「では、規則に則ってまずは一人10万ニャールドずつ付与する。これからの生活の足しにするとええ。それから家と畑も用意したからの。しばらくはそこを使うとええ。お金が溜まれば自分で好きな家でも土地でも買って好きに過ごすとええ。」

村長さんは私がキャティーニャ村に来たときと同じ説明をおこなった。

それからお金の使い方もレクチャーを受けている。

最初は戸惑うよね、このお金の支払システム。

10万ニャールドというお金があれば当分の間は快適に過ごせるはずだ。その間に仕事を探すなり商売を始めるなり畑を耕すなりして自分なりの生活の仕方を見つければいい。

結構自由度が高いんだよね。

最初から便利なものを購入しなければ10万ニャールドでも結構生活できるし。庭にある石や草だって転送ボックスを使用すれば二束三文で売れるし。

贅沢をせずにまっとうに仕事を探せば自立できる。そんな仕組みだ。

二人は10万ニャールドと畑つきの戸建の家に惹かれて村長さんが呼んだ村人と一緒に出て行ってしまった。

ちなみに本当はこの案内役をマリアがおこなうのが通例だそうだが、マリアが嫌だと拒否したので別の人間が対応している。

同じ村に裕太と優花さんがいるのが少し不安だが、家は対角線上に離れているので一番遠いと言っても過言ではない。村長さんが配慮してくれたようだ。

「はぁ~~~。」

二人が行ってしまったことで思わず力が抜け、その場に座り込んでしまう。

思った以上に二人との対峙に緊張していたようだ。

『マユ、大丈夫なのー?』

『あの人たち嫌いなの。マユ苛めるメなのー。』

『マユ大好きなのー。』

マーニャたちがへたり込んでいる私の元にやってきて、それぞれ励ましてくれるかのように寄り添ってくれる。

それぞれの頭を優しくなでて「ありがとう。」とお礼を言う。

それだけでマーニャたちは嬉しいのか喉をゴロゴロと鳴らして、頭をすりつけてきた。

「うふふふふ。あの人たちの今後が見ものね。猫様がいなくてやっていけるのかしら。」

「ほんとじゃのぉ。ほっほっほっ。」

マリアと村長さんが同じような黒い笑みを浮かべて笑っている。村長さん人畜無害そうに見えたけど以外と・・・げふんげふん。精神衛生上これ以上は考えないことにする。

裕太たちのことが取りあえず一段落したので、私たちはそれぞれ自宅に戻ることにした。

しきりにマリアが私を心配して、私の家にしばらく泊まると申し出てくれたが生憎ベッドが一つしかないのでお断りした。

その一つのベッドもマーニャ、クーニャ、ボーニャとプーちゃんで寝ると手狭なのだ。

マリアが来てもソファもなければ、ベッドの代わりになる布団もない。

寝る場所がないのだ。

今回、化粧水のお陰で大分懐が暖かくなったので来客用のベッド一式を買ってもいいかもしれない。って、ダメだった。そもそもベッドを置く部屋がないことに思い至る。

私が使っているベッドルームはベッド1台を置くスペースがやっととれるくらいで、もう1台ベッドを置くのは無理だ。ベッド一式は家を増築しないと難しそうだ。

マリアはその説明にしぶしぶ頷くと私の家を後にした。もちろん、マリアはプーちゃんに家の見回りをしっかりおこなうようにお願いしていた。

ちなみに、マリアから明日は家の増築をおこなうために大工のマイクさんのところに一緒に行くことを約束させられた。けっこうマリアってば強引な子である。まあ、私のためなんだろうけどね。

でも、次の日大工のマイクさんの家に行くことはできなかった。

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