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三章
3ー19
しおりを挟む「はい?なんで猫を飼わなきゃいけないのかしら?」
優花さんが、小首を傾げながら村長さんに質問をした。
裕太も首を捻っている。
二人ともこの国での猫の重要性をわかっていないようだ。まあ、説明もまだされていないのだから知っているはずもないのだが。
「異世界からの迷い人には猫様が1匹つく決まりがあってのぉ。猫様はこのレコンティーニ王国では、尊い存在だからのぉ。」
「だから、面倒を見ろというの?」
村長さんがすべてを説明する前に優花さんが、苛立ったように村長さんの言葉を遮る。優花さんったら何をそんなに怒っているのだろうか。
「食事の世話や寝床、トイレの世話などはしてもらうがのぉ。どちらかというと、猫様にお主らが世話をしてもらうのじゃ。」
あ・・・そうなの。
マーニャたちに私ってお世話をしてもらっていたのね。
今思えば確かにマーニャたちがいろいろとしてくれたお陰で生活が随分楽になった。
マーニャたちがいなければ化粧水だってつくれなかったし。プーちゃんにも会うことができなかっただろう。
なんだかんだ言ってもプーちゃんかなり役に立っているし。
マーニャたちがいなければもっともっと生活に苦労をしていただろうことは楽に想像できる。
「まあ!私が猫にお世話されないと生きていけないというの!!なんて失礼なのかしら。」
「そうだそうだ。猫なんかいなくても人並みの生活くらいできるさ。」
優花さんに続き裕太も猫と一緒に暮らすことには反対のようである。こんなに可愛いのに。
それに、猫がいなくても人並みの生活ができると言っているけど・・・。借金が300万ニャールドあるけどね。それを含めて人並みの生活を送れるのかは甚だ疑問ではあるが。
まさか、もう借金のこと忘れているっていうのはないよね?
「ほおほお。そうかのそうかの。まあ猫様がサポートにつかなかった異世界からの迷い人は前例がないが・・・。まあ、決定権は猫様にあるからの。」
「俺らには決定権ないのかよ・・・。」
「なんで猫の方が優先されるのよ。」
裕太もマリアも文句ブーブーである。まあ、猫様優先の国だからね。ここは。
文句があるのならば他国に行った方がいいと思うけどなぁ。
この国、猫嫌いの人にはかなりシビアな国だから。
「猫様は絶対なのじゃ。マーニャ様、クーニャ様、ボーニャ様。異世界からの迷い人の裕太殿と優花殿のサポートについてくれますかにゃ?」
村長さんはマーニャたちの視線に合わせるようにしゃがみこんだ。
って。村長さん語尾に「にゃ」がついているし。
もしかして、村長さんは猫と話すときに意識していないと語尾に「にゃ」がついてしまうのだろうか。
『マユ苛めたからやなのー。』
『嫌いなのー。』
『無理なのー。』
ああ・・・。マーニャたちは私の元にいてくれる?
「ほおほお。そうかそうか。わかったわかった。クーニャ様が裕太殿に、ボーニャ様が優花殿のサポートについてくれるか。ありがとうにゃ。」
ええっ!?
今、マーニャ達全否定したじゃない!?なんで、クーニャとボーニャが裕太たちのサポートにつくことになっているの!!
村長さん、もしかしてマーニャたちの言葉が通じていない!?
マーニャたちってば、村長さんの言葉を聞いて「フーーーッ!!」と威嚇しているようなんですが。ほら、尻尾もぶわっと膨らんじゃっているし。
「村長さん。マーニャ様たち大抗議してますよ・・・。嫌だって。いい加減猫様に聞くふりをして猫様からの回答を誤魔化さないでくださいね。」
マリアが村長さんを制してくれた。
よかった。私の願望がマーニャたちの声となって聞こえてきたわけではなかったのね。
「ほほっ。すまんのぉ。儂には猫様の言っていることがわからないからのぉ。」
いやいやいや。それで、マーニャたちの言っていることと真逆のことを言ったらダメじゃん。
身体全体で拒絶してたよね。マーニャたち。
何を言っているのかがわからないのだったら、せめてマーニャたちの動作を注意深くみてほしい。
そうしたら何を言っているのかわかるはずだから。
「うむ。マーニャたちが嫌だと言っているので、お主らは猫様のサポートなしでいいかの?」
「いいわよ。」
「もちろんだ。」
村長さんの言葉に、裕太も優花さんも頷いている。
あーあ。猫がいるといないとじゃ、全然違うのに。
でも、こんなに嫌がっているマーニャたちをサポートにつけてもまともにサポートしないような気はするが。
というか、大丈夫なのかなぁ。
前例ないんでしょ?
この国で猫がサポートにつかなかった異世界からの迷い人って。
どうなることやら。
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