上 下
248 / 584
三章

3ー15

しおりを挟む
 

「どういうことなのっ!!」

「ま、真由!?」

裕太の独白を聞いてしまい、いてもたってもいられずに裕太と優花さんの前に思わず走り寄ってしまった。
あれほど、マリアには止められたのに。
マリアを横目でチラッと見ると「あちゃー。」というように顔を手で覆っていた。
ザックさんとリュリュさんは目を丸くして驚いている。
まさか裕太の言う「真由」が私のことだとは思ってもみなかったのだろう。
裕太も裕太で私がここにいることに驚いているようだ。

「真由!婚約破棄して悪かった。許してほしい。そして、僕と結婚して。」

「はあ!?」

驚いていながらも、思っても見なかった言葉が裕太から発せられた。
マジで何を言うんだこいつは・・・という感じだ。
どこに他の女を孕ませたから婚約破棄しましょうと言ってすぐにやっぱり妊娠してなかったから結婚しましょうだなんて言っちゃう厚かましい奴がいるんだ。って、目の前にいたよ。
リュリュさんもザックさんもマリアでさえも、目が点の状態である。
ちなみに優花さんも驚いて目を見開いている。

「ちょっと!裕太!私と結婚するんでしょ!!」

「優花ってば嘘ばっかりじゃん。顔も整形だし身体も整形だし、妊娠だってしてなかった。真由は嘘つかないし、うちの両親にも気に入られているし。」

「嘘ばっかりって裕太だって嘘ばっかり!何が社内のエースよ。仕事ぜんっぜんできないみたいじゃない!」

「社内のエースだったんだよ!真由がいたときは!!」

さっきから私を置き去りにして言い合っている二人。怒りたいのは私なんだけど。
だいたいすぐ騙される裕太も悪い。疑うことを知らずにすべて信じてしまうんだから。
きっと、架空請求のメールが来ても振り込んでしまいそうだ。
だいたい、裕太が社内のエースでいられたのは私が散々仕事のアドバイスをしたからだ。
「仕事で詰まったどうしたらいい?」と毎日のように聞かれるのでそれに毎日のように答えていたのだ。
酷いときには仕事中には、仕事で少しでもつまづくとLINEが来たものだ。
はっきりいって、一人で二人分の仕事をしていたと言ってもおかしくはないくらいだ。
そんなに何もかも聞いてばかりだったら自分では何もできなくなるだろう。
私も大概甘やかしすぎだったようだと今は反省している。

「あのね、今さら妊娠が嘘でした。やり直しましょうたってそうはいかないわよ?」

「なんで!?僕たち愛し合ってたよね?」

「そうね。裕太が浮気をするまではね。」

正直「愛」だったのかはよくわからない。裕太を私が支えてあげなきゃと思ってはいたが、それが本当に「愛」だったのだろうか。
気づけば裕太は私におんぶに抱っこ状態になってしまっていたし。
正直なところ、裕太が私と婚約破棄をしたことにホッとしていた自分が少なからずいたのだ。

「真由に優花みたいな可愛げがあったら浮気なんてしなかったよ!浮気したのは真由が悪いからだ。僕のせいじゃない。」

「「はあ!?」」

おっと。
マリアと声がダブってしまった。
マリアも相当怒っているようで、声が低くなっている。
ザックさんとリュリュさんは唖然としたように大きく口をパカッと開け放っている。
そうだよね。私もまさか裕太がこんなことを言うなんて思ってもいなかった。
責任転嫁もいいところだ。
でも、ふと思う。
裕太と結婚しなくて本当によかったと。裕太が浮気をして裕太から婚約破棄してくれてよかったと。
これで私から婚約破棄したら裕太はもっと煩く騒いだだろう。
 
「えっ!?私が浮気相手なの!!なによ、裕太彼女いないって言ったじゃない!一緒にいるのは口煩い姉だって!!どういうことなのよ!!」

「はあ!?」

裕太も裕太で優花さんに嘘をついていたの。しかも口煩い姉ってなによ。

「口煩い姉のような存在っていったんだよ。彼女じゃないなんて一言も言ってない。」

「なによそれ!私が悪いっていうの!!」

優花さんが憤慨している。
なんだか、もう。裕太と優花さんの喧嘩を見ていたらもういいかって気分になってきた。
結局は私が男を見る目がなかったってことだよね。
もう別れているんだし、裕太と優花さんが付き合おうが別れようがどうでもいいよね。

「ユウタさん?ユウカさん?そろそろ煩いし聞いているこっちは気分が悪くなってきたので黙りましょうか?」

「「うむっ・・・んぅ・・・。」」

マリアがにっこりと笑顔を浮かべていつにない低い声で裕太と優花さんに向かって言うと、裕太と優花さんの口がピタッと閉じた。
必死に動かそうとしているが、動かないようだ。
マリアがなにかしたのだろうか。

「マユと因縁があったことは理解したわ。でも、それは貴女たちの自業自得よね?そして、人様の畑に無断で入り作物を無断で収穫しようとしたのは泥棒だってわかっているわよね?」

「「んむぅ・・・!!」」

マリアの身体から黒いオーラが立ち上がってきているような気がする。

「あなたたちはこれから村長のところに連れていくわ。そこで今回の件についての判断を村長にしてもらうわ。」

あ、やっぱ村長さんのところに連れていくのか。まあ、盗んだだけだしそんなに大事にはならないとは思うけど・・・。
でも、泥棒は泥棒だからね。ちゃんとに罪は償ってもらおう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界でお金を使わないといけません。

りんご飴
ファンタジー
石川 舞華、22歳。  事故で人生を終えたマイカは、地球リスペクトな神様にスカウトされて、異世界で生きるように言われる。  異世界でのマイカの役割は、50年前の転生者が溜め込んだ埋蔵金を、ジャンジャン使うことだった。  高級品に一切興味はないのに、突然、有り余るお金を手にいれちゃったよ。  ありがた迷惑な『強運』で、何度も命の危険を乗り越えます。  右も左も分からない異世界で、家やら、訳あり奴隷やらをどんどん購入。  旅行に行ったり、貴族に接触しちゃったり、チートなアイテムを手に入れたりしながら、異世界の経済や流通に足を突っ込みます。  のんびりほのぼの、時々危険な異世界事情を、ブルジョア満載な生活で、何とか楽しく生きていきます。 お金は稼ぐより使いたい。人の金ならなおさらジャンジャン使いたい。そんな作者の願望が込められたお話です。 しばらくは 月、木 更新でいこうと思います。 小説家になろうさんにもお邪魔しています。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

変わり者と呼ばれた貴族は、辺境で自由に生きていきます

染井トリノ
ファンタジー
書籍化に伴い改題いたしました。 といっても、ほとんど前と一緒ですが。 変わり者で、落ちこぼれ。 名門貴族グレーテル家の三男として生まれたウィルは、貴族でありながら魔法の才能がなかった。 それによって幼い頃に見限られ、本宅から離れた別荘で暮らしていた。 ウィルは世間では嫌われている亜人種に興味を持ち、奴隷となっていた亜人種の少女たちを屋敷のメイドとして雇っていた。 そのこともあまり快く思われておらず、周囲からは変わり者と呼ばれている。 そんなウィルも十八になり、貴族の慣わしで自分の領地をもらうことになったのだが……。 父親から送られた領地は、領民ゼロ、土地は枯れはて資源もなく、屋敷もボロボロという最悪の状況だった。 これはウィルが、荒れた領地で生きていく物語。 隠してきた力もフルに使って、エルフや獣人といった様々な種族と交流しながらのんびり過ごす。 8/26HOTラインキング1位達成! 同日ファンタジー&総合ランキング1位達成!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】女神の使徒に選ばれた私の自由気ままな異世界旅行とのんびりスローライフ

あろえ
ファンタジー
 鳥に乗って空を飛べるなんて、まるで夢みたい――。  菓子店で働く天宮胡桃(あまみやくるみ)は、父親が異世界に勇者召喚され、エルフと再婚したことを聞かされた。  まさか自分の父親に妄想癖があったなんて……と思っているのも束の間、突然、目の前に再婚者の女性と義妹が現れる。  そのエルフを象徴する尖った耳と転移魔法を見て、アニメや漫画が大好きな胡桃は、興奮が止まらない。 「私も異世界に行けるの?」 「……行きたいなら、別にいいけど」 「じゃあ、異世界にピクニックへ行こう!」  半ば強引に異世界に訪れた胡桃は、義妹の案内で王都を巡り、魔法使いの服を着たり、独特な食材に出会ったり、精霊鳥と遊んだりして、異世界旅行を満喫する。  そして、綺麗な花々が咲く湖の近くでお弁当を食べていたところ、小さな妖精が飛んできて――?  これは日本と異世界を行き来して、二つの世界で旅行とスローライフを満喫する胡桃の物語である。

処理中です...