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三章
3ー15
しおりを挟む「どういうことなのっ!!」
「ま、真由!?」
裕太の独白を聞いてしまい、いてもたってもいられずに裕太と優花さんの前に思わず走り寄ってしまった。
あれほど、マリアには止められたのに。
マリアを横目でチラッと見ると「あちゃー。」というように顔を手で覆っていた。
ザックさんとリュリュさんは目を丸くして驚いている。
まさか裕太の言う「真由」が私のことだとは思ってもみなかったのだろう。
裕太も裕太で私がここにいることに驚いているようだ。
「真由!婚約破棄して悪かった。許してほしい。そして、僕と結婚して。」
「はあ!?」
驚いていながらも、思っても見なかった言葉が裕太から発せられた。
マジで何を言うんだこいつは・・・という感じだ。
どこに他の女を孕ませたから婚約破棄しましょうと言ってすぐにやっぱり妊娠してなかったから結婚しましょうだなんて言っちゃう厚かましい奴がいるんだ。って、目の前にいたよ。
リュリュさんもザックさんもマリアでさえも、目が点の状態である。
ちなみに優花さんも驚いて目を見開いている。
「ちょっと!裕太!私と結婚するんでしょ!!」
「優花ってば嘘ばっかりじゃん。顔も整形だし身体も整形だし、妊娠だってしてなかった。真由は嘘つかないし、うちの両親にも気に入られているし。」
「嘘ばっかりって裕太だって嘘ばっかり!何が社内のエースよ。仕事ぜんっぜんできないみたいじゃない!」
「社内のエースだったんだよ!真由がいたときは!!」
さっきから私を置き去りにして言い合っている二人。怒りたいのは私なんだけど。
だいたいすぐ騙される裕太も悪い。疑うことを知らずにすべて信じてしまうんだから。
きっと、架空請求のメールが来ても振り込んでしまいそうだ。
だいたい、裕太が社内のエースでいられたのは私が散々仕事のアドバイスをしたからだ。
「仕事で詰まったどうしたらいい?」と毎日のように聞かれるのでそれに毎日のように答えていたのだ。
酷いときには仕事中には、仕事で少しでもつまづくとLINEが来たものだ。
はっきりいって、一人で二人分の仕事をしていたと言ってもおかしくはないくらいだ。
そんなに何もかも聞いてばかりだったら自分では何もできなくなるだろう。
私も大概甘やかしすぎだったようだと今は反省している。
「あのね、今さら妊娠が嘘でした。やり直しましょうたってそうはいかないわよ?」
「なんで!?僕たち愛し合ってたよね?」
「そうね。裕太が浮気をするまではね。」
正直「愛」だったのかはよくわからない。裕太を私が支えてあげなきゃと思ってはいたが、それが本当に「愛」だったのだろうか。
気づけば裕太は私におんぶに抱っこ状態になってしまっていたし。
正直なところ、裕太が私と婚約破棄をしたことにホッとしていた自分が少なからずいたのだ。
「真由に優花みたいな可愛げがあったら浮気なんてしなかったよ!浮気したのは真由が悪いからだ。僕のせいじゃない。」
「「はあ!?」」
おっと。
マリアと声がダブってしまった。
マリアも相当怒っているようで、声が低くなっている。
ザックさんとリュリュさんは唖然としたように大きく口をパカッと開け放っている。
そうだよね。私もまさか裕太がこんなことを言うなんて思ってもいなかった。
責任転嫁もいいところだ。
でも、ふと思う。
裕太と結婚しなくて本当によかったと。裕太が浮気をして裕太から婚約破棄してくれてよかったと。
これで私から婚約破棄したら裕太はもっと煩く騒いだだろう。
「えっ!?私が浮気相手なの!!なによ、裕太彼女いないって言ったじゃない!一緒にいるのは口煩い姉だって!!どういうことなのよ!!」
「はあ!?」
裕太も裕太で優花さんに嘘をついていたの。しかも口煩い姉ってなによ。
「口煩い姉のような存在っていったんだよ。彼女じゃないなんて一言も言ってない。」
「なによそれ!私が悪いっていうの!!」
優花さんが憤慨している。
なんだか、もう。裕太と優花さんの喧嘩を見ていたらもういいかって気分になってきた。
結局は私が男を見る目がなかったってことだよね。
もう別れているんだし、裕太と優花さんが付き合おうが別れようがどうでもいいよね。
「ユウタさん?ユウカさん?そろそろ煩いし聞いているこっちは気分が悪くなってきたので黙りましょうか?」
「「うむっ・・・んぅ・・・。」」
マリアがにっこりと笑顔を浮かべていつにない低い声で裕太と優花さんに向かって言うと、裕太と優花さんの口がピタッと閉じた。
必死に動かそうとしているが、動かないようだ。
マリアがなにかしたのだろうか。
「マユと因縁があったことは理解したわ。でも、それは貴女たちの自業自得よね?そして、人様の畑に無断で入り作物を無断で収穫しようとしたのは泥棒だってわかっているわよね?」
「「んむぅ・・・!!」」
マリアの身体から黒いオーラが立ち上がってきているような気がする。
「あなたたちはこれから村長のところに連れていくわ。そこで今回の件についての判断を村長にしてもらうわ。」
あ、やっぱ村長さんのところに連れていくのか。まあ、盗んだだけだしそんなに大事にはならないとは思うけど・・・。
でも、泥棒は泥棒だからね。ちゃんとに罪は償ってもらおう。
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