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三章
3ー11
しおりを挟む声が聞こえたことに驚いてザックさんが思わず、女性を抱えていた手を放してしまった。
「きゃあ。いったぁ~い。」
女性の可愛い声が聞こえた。どうやら本格的に起きてしまったようだ。
ザックさんが手を放してしまったために、地面に落ちてしまった女性は地面に打ち付けたと思われる腰を擦っていた。
「す、すまない。」
落とすつもりはなかったザックさんは素直に女性に謝った。
女性はザックさんの声が聞こえてきたことで、ザックさんの存在に気づいた。
ハッと女性の目が少しだけ大きくなる。
「あなたが鶏から助けてくれたんですかぁ?ありがとうございますぅ。わたしぃ、優花っていいます。」
ん?
優花?
どっかで聞いた名前だなぁ~。
って、裕太の浮気相手じゃん!!
それにしても、ザックさんの見た目がストライクだったのか、優花さんの小さな目がキラキラと輝いている。声を1オクターブさっきより高い。
「いや・・・。まぁ・・・その。村長のところにつれていくから。」
明らかに媚びたような視線にたじろぐザックさん。そうだよね、目の前にはザックさんが好意を抱いているマリアがいるものね。
それなのに、他の女の子にちょっかい出せないよね。
「まあ!親切なんですね。ありがとうございますぅ。」
ペタッと優花さんの方からザックさんの腕に触れる。
馴れ馴れしいなこの子。
ってか、裕太はどうするのよ。
あなたの婚約者でしょうに。
しかも、裕太の子まで妊娠しているんでしょ。それなのに他の男に色目を使うだなんて、どうかしてるよ。
「うふっ。あなたのお名前を教えてくれる?」
下からザックさんの顔を覗きこむ優花さん。上目づかいってやつですね。
ザックさんの目がちょっと泳いでいる。
「ザックだ。」
「ザックさんって言うんですね。あれ?ここ日本じゃないの?」
日本では聞きなれない名前に優花さんは首を傾げる。っていうかね、あなたの目の前には、マリアもいるんだけど。
マリアの髪の色なんて外人でもあり得ないよ?マリアのことは目に入っていないのかな。
「マユ・・・家に入るわよ。」
「えっ?」
マリアに引っ張られながら家に戻る私。もう彼女たちは縛ってあるから身動きがとれないから安全なはずなのに。
どうして、そんなに急ぐんだろう。
優花さんがザックさんに釘付けになっているうちに、私たちは家の中に隠れた。
「マリア、どうしたの?彼女たち身動きとれないように縛ったからこんなに急がなくても・・・。」
それに、裕太の彼女のこと少し気になるし。人の男寝取っておきながら、他の男の人に色目を使うだなんて。
それに、馴れ馴れしくザックさんの腕に手を絡ませようとしていたし。
「あれ?」
「やっと気づいたの?にぶちんね、マユは。」
マリアはそう言って、大きなため息を一つついた。
そうか。マリアはさっきもう気づいていたんだ。だから慌てて私を家の中にいれたのね。
「彼女はマユの元カレを寝取った女よ。あの女はかなりの男好きね。マユが元カノだってわかったら何をしでかすかわからないわよ。」
ん?
それは、整形してた顔がヒマワリのお陰で元に戻った裕太を見たときからなんとなくわかっていたことだったんだけど。
「あ、うん。それはわかってたんだけどね。」
「え?マユが?わかってたの!?成長したわね、マユ。」
そんなに驚いて言わなくてもいいと思うんだけど。
関心したようにエライエライと言ってくるマリア。でも、それよりも気になることがある。
「ねえ、マリア。優花さんちゃんとに身動きとれないようにしたよね?」
「ええ。ロープでぐるぐるに・・・って、あれ?」
そう。私たちは不法侵入してきた優花さんをロープで身動きとれないようにしたはずなのだ。
それなのにも関わらず、優花さんはザックさんに腕に手を絡めることができた。
ザックさんが優花さんを落としたときに、打った腰をさすることができた。
「どういうことっ!?」
家に入る前に見た優花さんにはロープは巻き付いていなかった。そう、私とマリアで身動きをとれないようにしていたロープが綺麗さっぱりなくなっていたのだ。
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