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二章
2ー114
しおりを挟む『卵全部そろったのー。』
茶色い卵を見つめて何の卵だろうと考えていると突然マーニャが嬉しそうに鳴いた。
今までずっと黙っていたのに。
全部揃ったとはどういうことだろうか?
「どうしたの?マーニャ?」
『卵、鑑定するのー。早くするのー。』
「え?」
マーニャがピョンピョン跳ねながら急かしてくる。
まあ、確かになんの卵かわからないんだから鑑定すべきだよね。
プーちゃんから産まれてきたから青竜の卵だとは思うんだけど・・・。
念のためマーニャに言われたとおりにプーちゃんが産んだ卵を鑑定してみる。
「あれ?プーちゃんって精霊だったの!?」
鑑定結果は【精霊の卵】だった。
プーちゃんが産んだ卵が精霊の卵ってことはプーちゃんは青竜ではなく精霊だったってことだろうか。
なんだか頭が混乱してきたぞ。
意味が分からなくなってきた。
隣にいるマコトさんもまだ訳がわからないみたいで床にペタンッと座り込んで虚空を見つめていた。
『精霊ではないのである。我は青竜だと言っているだろう。』
「え?じゃあ、なんで精霊の卵産んでるの!?」
『我にできないことなどないっ!』
プーちゃんが威張って言うけど、全く訳がわからないから。
雄が卵を産む意味もわからないし、青竜が精霊の卵を産む意味もわからない。
「ははっ。ははは・・・。まあ、青竜の鱗がいっぱい手に入ったからいいか・・・。」
隣のマコトさんがやっと正気を取り戻したようだ。
ゆら~っと立ち上がっている。
あれ?でも青竜の鱗がいっぱい手に入ったってどういうこと?
「マーニャよく青竜と友達になってくれたね。ありがとう。これで沢山炬燵を作れるよ。」
「え?」
『マコト?なに言ってるのー?』
『ん?我の鱗をそなたにあげるとは言っていないのだが・・・。』
「ふふふ。」とマコトさんがゆら~りゆらりとふらつきながら不敵に笑う。なんか、怖いんだけど。
マーニャもプーちゃんもマコトさんから距離を取り出した。
「プーちゃん。君の犠牲は無駄にしないから安心していいよ。僕が君の鱗を全部、炬燵にしてあげるからね。うふふ。いくつ出来るんだろうか・・・ぶつぶつ。」
げっ。マコトさんがプーちゃんを目にして混乱しすぎたのかヤバイ方向に壊れてしまったようだ。
完全に目が言ってしまっている。
『・・・マコトが怖いのー。』
マーニャが怖がって、マコトの足を猫パンチで攻撃している。
まったくマコトさんには効いていないようだ。
プーちゃんはそんなマーニャの影に隠れるように小さくなっている。
プーちゃんが産んだ卵はどうしたかって?プーちゃんも卵にはあまり興味がないのか、ベッドに転がっている。
自分でお腹を痛めて産んだんだから父性が目覚めてもいいのにねー。
「ふふふっ。炬燵~炬燵~。」
『いやーーーっ!!』
マコトさんがマーニャの後ろに小さくなって隠れていたプーちゃんを掴みあげた。
って、プーちゃん青竜なんだよね。
とっても強いんだよね。
なんでマコトさんに捕まるの!?
『痛いのだーーーっ!鱗を剥がさないで欲しいのだっ!』
ペシンッ。
ドサッ。
鱗を一枚剥がされたプーちゃんは痛みのため、マコトさんに尻尾で攻撃をした。
マコトさんは混乱しているため、プーちゃんの尻尾攻撃をまともに頭に受けて、ベッドの上にひっくり返った。
小さくなってもプーちゃんは青竜である。
尻尾でマコトさんを昏倒させることなど造作もないようである。
『こ、怖かったのだーっ。』
『怖かったのー。』
マーニャが怖がって毛を逆立てているのはわかる。
私も怖かったし。
でも、どうしてマコトさんより全然強いプーちゃんが本気で怖がってブルブルと震えているのだろうか。
「メンタル弱いね、プーちゃん。」
『マユが酷いのだーーっ!!』
プーちゃんは私の言葉にダバーッと目から滝のように涙を流したのだった。
『うふふっ。マユはやっと全部の卵を揃えたのねぇ~。大切に育ててね、マユ♪』
そんな女神様(?)の嬉しそうな声が聞こえたような気がした。
この時はまだ知らなかった。
王都からキャティーニャ村に帰たら二度と会いたくなかった人たちがキャティーニャ村に何故か来ていたことを。
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