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二章

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今日は待ちに待ったマコトさんに会える日だ。
マーニャたちもマコトさんに会えることが楽しみだったのか朝も早くから起きだしてきた。
その時間なんと午前4時20分。
マーニャもクーニャもボーニャもその時間には目が覚めていたようだ。
そうして、目覚めた3匹のお姫様たちはお腹が空いたよコールをしてきた。

『マユー!お腹すいたのー。』

『ご飯ご飯ー。』

『早く起きてなのー。』

最初は寝ぼけていて何を言っているのか聞こえなかったし分からなかった。
そうするとマーニャたちは今度は耳元でコールしてくる。

「・・・うぅ。」

目覚ましよりも煩いような気がする。

『お腹すいたのー。』

『起きるのー。』

『ご飯なのー。』

テシテシ。

ペシペシ。

3匹のうちの誰のだかわからない肉球が額や頬をぷにぷにと押している。
うう。このプニプにの感触とても癖になる。気持ち良いよぉ。
ちなみに尻尾だろうか。
ふわふわしたものが首筋を撫でている。これも、ふわふわのもふもふで気持ちいいよぉ。

『ご飯なのー。』

それでも起きなかったら焦れたのか、誰かがポスンッと私の顔の上にダイブした。

「ぐふぅ・・・も、もふもふ。」

ちょっと苦しかったけど、顔に当たっている多分猫のお腹がもふもふでとても気持ち良い。

『起きてなのー。』

『起きるのー。』

「・・・っ!!」

今度は二匹がお腹の上に思いっきりダイブしてきた。

これは・・・きつい。

あまりの衝撃にまどろんでいた意識が一気に覚醒する。

『起きたのー。』

『起きるのおっそーいのー。』

『ご飯なのー。』

「はいはい。ごめんごめん。すぐにご飯を用意するからね。」

お腹の上にダイブしたのはクーニャとマーニャだった。顔の上にダイブしたモフモフはボーニャだったようだ。
3匹を身体の上からどかすとベッドから降りる。

「今、ご飯もらってくるからねー。」

マーニャたちに言ってからハタッと気づく。
はたして、この時間って宿の食堂やってるのだろうか。
午前4時30分少し前である。
きっとこの時間は食堂もやっていないような気がする。

「あー、この時間食堂やっていればいいんだけど・・・。ちょっと食堂見てくるね?」

『行くのー!』

『クーニャも行くのー。』

『いっしょなのー。』

あらあら。
可愛い子たちは一緒に食堂についてくるという。

「バスケットに入る?」

『このまま行くのー。』

『歩くのー。』

『早くなのー。』

今日はバスケットに入らないようだ。
部屋のドアを開け宿の廊下に出る。たしか食堂は2階だったはず。
誰もいない階段をマーニャたちと一緒に下りる。
廊下も階段も人が通るところは灯りがついていた。
誰がいつ起きて歩いてもいいように灯りは常時点いているようだ。
辿り着いた食堂からも灯りが漏れていた。
もしかして、こんな時間でも食堂はやっているのだろうか。
半信半疑に思いながら食堂のドアを押して開くと、カウンターに食堂の店員さんが立っていた。
また、食堂の中には数匹の猫と一緒に来ていると思われる人も数人いた。

「あら、いらっしゃい。ふふ、そちらの猫様もお腹が空いたのね。何が良いかしら?まぐろベースのご飯と、かつおベースのご飯と鶏肉ベースのご飯が選べます。おやつがよければおやつもご用意できますよ。」

「ありがとうございます。マーニャ、クーニャ、ボーニャ何が食べたい?」

前半は案内をしてくれた店員さんに、後半はマーニャたちに食べたいものを確認する。

マーニャたちは元気に

『『『おやつー!おやつなにがあるのー!!』』』

と、おやつを要求してきた。

「おやつはまた後で。今はご飯にしようね。」

『『『マユのけちー。』』』

ぐっ。ケチなんかじゃないやい。

「おやつばかり食べてると太っちゃうよ?」

『まぐろベースがいい!』

『鶏肉・・・ミルクもいい?ミルクはおやつ?』

『・・・かつおでいいのー。』

太るという単語に反応したのか、マーニャたちはおやつを食べることを諦めたようでそれぞれ好みのご飯を要求してきた。よしよし。おりこうさんたちだ。
クーニャはミルクが大好きなのでご飯と一緒にミルクも要求してきた。
ミルクくらいだったらいいだろう。

「まぐろとかつおと鶏肉ベースのご飯を一つずつください。あと、ミルクも3つお願いします。」

「はーい。今、ご用意いたしますね。」

店員さんはにっこり笑って返答すると、厨房に注文を伝えている。

「こんな早朝でも食堂やっているんですね。」

「ええ。猫様は早朝から起きだしますからね。この時間にご飯を食べにくる猫様は結構多いんですよ。」

「はあ。そうなんですか。朝が早くて大変ですね。」

「いえいえー。猫様のご飯を食べている姿を見るのは至福のひと時なのでぜんぜん苦にはなりませんよ。」

そんな会話をしているとマーニャたちのご飯が出来上がった。

「はい。ゆっくり食べていってね。」

「ありがとうございます。」

私は、マーニャたちのご飯が入ったトレイを受け取ると近くの猫様用テーブルにそれぞれ配置した。

『おいしそーなのー。』

『いただきますなのー。』

『ミルク!』

それぞれ自分が頼んだご飯にかぶりつくマーニャたち。
もちろん、ミルク大好きなクーニャはミルクにまず最初に飛びついた。

クーニャったら本当にミルク大好きなんだね。

マーニャたちがご飯を食べている姿をほっこりとした気持ちで見つめていると、食堂の扉がまた開いた。
また猫を連れた人が来たのかと思って扉の方を向いたが、どうやら違ったようだ。
猫を連れていない20歳くらいの黒髪の男性が食堂に入ってきた。

こんな時間なのにご飯をひとりで食べに来たのかな?

「いらっしゃいませー。あ、マコトさんだ!いつものでいい?」

店員さんが今入ってきた男性に声をかけた。

ん?・・・マコトさん?
今、マコトさんって行った?
でも、見た目20代くらいに見えるし私が会いたいマコトさんじゃないよね。

そう思って何気なく男性に視線を向けると、バッチリと視線が合ってしまった。

「あれ?君もしかして・・・。」

 

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