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二章

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「精霊の卵が3つになっちゃった。この金色の不明な卵をいれたら4つかぁ・・・。」

つんつんと机の上に並べられた卵をつついてみる。
どの卵も手のひらサイズの普通の卵に見える。色さえついていなければ。
トンヌラさんが意気消沈して帰った後に、ベアトリクスさんにもう一度全ての卵を鑑定してもらったが、金色の卵以外は精霊の卵だった。金色の卵は未だに鑑定できないらしい。
もちろん私も鑑定してみたが、やはり金色の卵だけは鑑定できなかった。
ベアトリクスさんは、トンヌラさんが帰ったのを確認すると「化粧水を~もっといっぱい作ってぇ~流通させてくださいね~。」と言いながら帰っていった。
まあ、化粧水作るのはお金になるからいいんだけれども、猫化する化粧水とかシャレにならない化粧水がまた出来てしまったら怖いのであまり作りたくないんだよねぇ。でも、まあオークションであれだけ化粧水が欲しいという人がいるのに、もう化粧水はオークションに出しませんというのも酷だろうなぁ。

「化粧水にしても卵にしても問題山積ね。」

どんな効果を持つ化粧水ができるか選べたらいいんだけれども。
卵にしても4つも集めちゃったけど、これどうしたらいいんだろう。
まさか、茹でて食べるわけにもいかないし。
そうなると孵化させるべきなんだろうか。
そう言えば、女神(?)様から精霊王と精霊王を守護する精霊4の卵を見つけて育てろって言われたっけ?
って・・・この卵が女神(?)様が言っていた精霊の卵ってことでいいのかなぁ。まだ数が足りないけど・・・。

『マユ!ピンクの卵にヒビが入ってる!』

「はっ!?」

マーニャがピンクの卵を右前足で指し示して教えてくれた。
確かにさっきまでヒビなんて入っていなかったはずなのに、マーニャに言われてから確認したら卵の上部に僅かながらヒビが入っていた。
慌てて他の卵にもヒビが入っていないか確認するが他の卵にはヒビは確認できなかった。
ピンクの卵だけヒビが入ってしまったようだ。
ぶつけたりとかしていないはずなのに・・・。

『にゃっ!わかったのー。』

すると急にボーニャが傍にやってきて、卵をひょいと銜えてベッドの方に持っていってしまった。
そして、卵をベッドの上にポトリと落とすとその上にボーニャが寝そべった。まるで、ボーニャが卵を温めているようにも見える。

「どうしたの?ボーニャ?卵を温めてるの?」

『うん。寒いんだって。だからこうして温めてるのー。』

どうやらボーニャは卵を温めているようだ。
でもどうして寒いってわかったんだろう。

「どうして寒いってわかったの?」

『卵が教えてくれたのー。マユには聞こえない?』

「聞こえなかったわ。マーニャとクーニャは聞こえた?」

ボーニャは卵が教えてくれたというが、それらしき声は私には聞こえなかった。もしかして猫にしか聞こえないのかと、マーニャとクーニャに念のため確認してみる。
マーニャもクーニャも「にゃ?」と言いながら首を傾げているのでどうやら聞こえなったようだ。
それならばプーちゃんは聞こえていたのだろうかと、プーちゃんを見ると部屋の隅っこで丸くなって眠っていたので、聞いていないようだ。
珍しい。プーちゃんがこんなにずっと眠っているなんて。
よっぽど疲れているのかな。

「ボーニャにしか聞こえなったんだね。」

『精霊に気に入られたんだねー。いいなぁー。』

『いいなー。』

「精霊に気に入られた?」

『うん。卵から孵る時に精霊は親を選ぶって言われてるのー。』

『親に選ばれたら卵のときからでも精霊の声が聞こえるんだよー。』

って、ことはもうすぐピンクの精霊の卵は孵るのかな。
クーニャとマーニャがそれぞれ教えてくれた。
ボーニャは今は卵にかかりっきりだ。

「こんにちは。マユさんはいらっしゃいますか?」

ふと、部屋のドアの方から声が聞こえた。私は、ドアに向かって歩く。
ボーニャが抱えて温めているピンクの精霊の卵以外はすべて鞄の中にしまいこんだ。
知らない人に見られても困るしね。

「どちら様ですか?」

念のためドアを開けずに声をかける。

「マルゲリータです。」

はて?聞いたことのない名前だ。
私が沈黙していると、ドアの向こうから続けて声が聞こえてきた。

「マコト工房のマルゲリータです。マコトさんがお会いになるそうです。」

「すぐにドアを開けますね!」

どうやらマコトさんからの返答が来たようだ。
それにしても、マコト工房って言うんだ。知らなかった。
ドアを開けた先にはマコト工房で対応してくれた女性が立っていた。
この人、マルゲリータさんっていうんだ。今まで名前を知らなかったよ。

 

 

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