上 下
220 / 584
二章

2ー101

しおりを挟む
 

「黄緑色の卵?」

何故、目の前の茶トラの猫が卵なんて持っているのだろうか。
テーブルに置かれた黄緑色の卵と思われる物体を鑑定してみる。

「はえ!?精霊の卵!?」

鑑定結果は精霊の卵だった。
精霊の卵ってそんなにころころ転がっているのかな。
これで、精霊の卵は三つ目なんだけれども。

「あらぁ~。黄緑色のぉ~精霊のぉ~卵なんてぇ~初めてぇ~見ましたぁ~。精霊のぉ~卵はぁ~ピンク色のぉ~ことがぁ~ほとんどなんですよねぇ~。まあ~ピンク色のぉ~精霊のぉ~卵もぉ~滅多にぃ~お目にぃ~かかれることなんてぇ~ありませんけどぉ~。」

「ありますよ?ピンク色の卵。」

「え?」

「え?」

驚いたように固まるベアトリクスさん。
その横でザックさんも驚いたように声を漏らしていた。
私は鞄の中から卵を取り出した。
まずは一つ目の卵。

「これはピンクの精霊の卵です。マーニャたちがどこからか持って来ました。」

ピンクの卵をテーブルの上に置く。
続いて、水色の卵を取り出した。

「これは水色の精霊の卵です。ハーメルさんというピンクの卵を探している人にピンクの卵を貸し出したらお礼に貰いました。」

ピンクの卵の横に水色の卵を置く。
黄緑色の卵とピンクの卵、水色の卵が並んでいてなんとも鮮やかである。

「「・・・・・・・・・。」」

3色の卵が並んでいる光景に唖然とするベアトリクスさんとザックさん。
ベアトリクスさんなんて、どうやら3つの卵を鑑定してそれぞれ「精霊の卵」であったことに驚愕している。
そう言えば、鶏小屋にあった金色の卵なんてのもあったな。
今は、マーニャに持たせているけど確かベアトリクスさんでも鑑定できなかった卵だった。
あれは、精霊の卵とは違うのだろうか。

「マーニャ。マーニャにあずけてある金色の卵を出してくれる?」

『はーい』

マーニャはごそごそと自分の袋をあさり、金色の卵を取り出した。
そうして、ピョンッと華麗にジャンプをしてテーブルの上に乗ると、卵をそっと並べて置いた。

「あ~そう言えばぁ~マユさんってぇ~金色の卵もぉ~持ってましたねぇ~。」

ベアトリクスさんがどこか遠くを見ながら呟いている。
ザックさんは未だに固まったままだ。

「でも、この金色の卵は精霊の卵じゃないんですよね?」

「わからないですぅ~。だってぇ~、その卵ってばぁ~鑑定がぁ~できないんですものぉ~。」

ベアトリクスさんのテンションが低くなる。
どうやら鑑定レベルの高いベアトリクスさんでも鑑定できないものがあることにショックを受けているようだ。
つんつんと金色の卵を突っついてみる。
見た目的には色が違うだけで、他の精霊の卵と変わらないと思うんだけどなぁ。
なんで、この卵だけ鑑定できないんだろうか。

「ゆ、夢じゃないんだよな・・・。目の前に精霊の卵が3つ。よくわからないが得体の知れない金色の卵が1つ。これは・・・マユさん!売ってくれ!!」

「ふぇっ!?」

今まで固まっていたザックさんが目をカッと見開いて、急に叫ぶように声を出した。
ザックさんの手が私の両肩に置かれ、ガクガクと揺さぶられる。

「や、やめて・・・。」

「金ならいくらでも出す。卵一つにつき1000万ニャールドでどうだ?」

「えっ・・・。」

「むむっ。なら2000万ニャールドだ。」

「ちょっと・・・。」

「ではっ!3000万ニャールドでどうだ!」

「そうではなくって・・・。」

「くぅっ・・・。3900万ニャールドではどうだ!」

ザックさんの目が完全に逝ってしまっている。
っていうか、卵一つにそんな金額出しちゃうの!?
3900万ニャールドが4つで1億5600万ニャールド・・・。
気が遠くなるような金額だ。

「まだ、だめかっ・・・。4000万ニャールドならどうだ!」

「あ、あの・・・。」

「くそっ!これ以上は・・・俺とマリアとの結婚資金がなくなってしまうっ!」

「はあ?」

どんどんと値段を吊り上げていったザックさんだが、最後の言葉がいただけない。
マリア、ザックさんのこと嫌ってたから結婚なんてあり得ないと思うんだけどなぁ。
この辺もザックさんが嫌われる理由なのだろうか。
しかし、ザックさんお金持ちだなぁ。

「マユさん~。どれだけお金を~積まれてもぉ~売っちゃダメですよぉ~。この卵たちはぁ~マユさんのぉ~元にぃ~集まったんですからぁ~。きっとなんかぁ~理由がぁ~あるんですよぉ~。だからぁ~女王様もぉ~卵をくれるってぇ~言っているんですよぉ~。ザックさんもぉ~諦めてください~。」

「・・・ぐっ。しかし・・・。」

「諦めてください~。」

『『『マユから卵を取らないで!』』』

ベアトリクスさんに続くようにマーニャたちまでザックさんを非難する。
これには、ザックさんも折れるしかなくなってしまったようだ。
しかし、そんなに欲しかったのかね、卵。

『にゃ、にゃあ~。』

そうこうしていると、痺れを切らしたらしい茶トラの猫が声を上げた。
なんだか、二本足で立ってふらふらと両手を上げたり下ろしたりしてジェスチャーをしている。
でも、何を言っているか分からない。

「マーニャ、この子が何を言っているかわかる?」

本来だったら、私のスキルでわかるはずなんだけど、どうにも何を言っているのかわからないからマーニャに尋ねてみる。
マーニャは軽く首を傾げると、

『猫じゃないからわかんないの。』

と、言った。
猫じゃないからってマーニャは猫だよね。
って、ことはこの茶トラの猫が猫じゃないってこと?
どこからどう見ても猫に見えるんだけど・・・。

って、まさか!?
あの化粧水の被害者!?

 

しおりを挟む
感想 829

あなたにおすすめの小説

王宮を追放された俺のテレパシーが世界を変える?いや、そんなことより酒でも飲んでダラダラしたいんですけど。

タヌオー
ファンタジー
俺はテレパシーの専門家、通信魔術師。王宮で地味な裏方として冷遇されてきた俺は、ある日突然クビになった。俺にできるのは通信魔術だけ。攻撃魔術も格闘も何もできない。途方に暮れていた俺が出会ったのは、頭のネジがぶっ飛んだ魔導具職人の女。その時は知らなかったんだ。まさか俺の通信魔術が世界を変えるレベルのチート能力だったなんて。でも俺は超絶ブラックな労働環境ですっかり運動不足だし、生来の出不精かつ臆病者なので、冒険とか戦闘とか戦争とか、絶対に嫌なんだ。俺は何度もそう言ってるのに、新しく集まった仲間たちはいつも俺を危険なほうへ危険なほうへと連れて行こうとする。頼む。誰か助けてくれ。帰って酒飲んでのんびり寝たいんだ俺は。嫌だ嫌だって言ってんのに仲間たちにズルズル引っ張り回されて世界を変えていくこの俺の腰の引けた勇姿、とくとご覧あれ!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...