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二章
2ー100
しおりを挟む「腐ってはいないわよ?多分。もう何百年も保管しているけど。」
「あはは・・・。」
私が卵と聞いて微妙な顔をしたので、女王様がそう付け加えてくれた。
まあ、腐ってても腐ってなくても用途がないからどちらでも構わないんだけれどもね。
卵なんて料理に使うくらいしか用途がないし。
孵化させてみるってのもありだけど、王家に伝わるってくらいだからかなりの年数が経っている卵のように思える。そんなに年数の経っている卵が孵化するとは思えないし。
昔見たアニメのように伝説級の卵を孵化させたら腐っててドロドロに溶け出したとかなったらトラウマものだし。あれ、アニメだからトラウマにならなかったけど、実際に見てしまったらかなりのトラウマものだと思う。
「うふふ。あの卵から何か孵化したら楽しいのにね。天使が孵化するか悪魔が孵化するのか・・・。うふふ。考えただけで面白いわ。」
女王様笑っているけど、笑えないですよ。それ。
天使だったらまだいいけど、悪魔が孵っちゃった日には目も当てられないではないか。
「では、明日宿に届けさせるわね。どこにしまったかしら、あの卵。マユさんだったらきっと孵化してくれるのではないかと期待しているのだけれども。ああ、孵化したら何が孵ったのか教えてくださいね?」
「ええ。あはははは・・・。」
私だったら孵化できること確定ですか。
いや、孵化させたくないし。そもそも孵化させる方法も知らないしね。
ま、鞄の奥深くに仕舞っておけばいいよね。うん。
女王様は優雅に笑いながら部屋を去っていった。
なんだか、ドッと疲れがでた。
思っていた女王様となんだか違う。
王国を統べる王族なのだから、あらゆる危機を避けるか乗り越えるするための決断を下すものかと思ったら、まさかの危機になるかもしれない事項をそのまま受け入れるだなんて。というか、危機に陥れようとしていないかな。あの女王様。私の気のせいだったらいいんだけれども。
この王国のトップがあんなんでいいのだろうかと本気で思ってしまった。
それでも、国としてまわっているのだから問題ないのかな。
「はぁ~。やっぱりぃ~女王様にぃ~お会いするのはぁ~緊張しますぅ~。」
「ああ。久々にお会いしたが、威圧感で声を出すことができなかった。」
ベアトリクスさんも、ザックさんもため息をついている。
その顔は、とても疲れているようにも見える。
確かに緊張感はあった。
これぞ女王様っていう雰囲気はあった。
しかし、声も出すことのできないほどの威圧感は感じなかったんだけどなぁ~。
『女王様って怖いー。』
『怖かったぁ~。』
『う゛ーー。』
マーニャ達もどうやら女王様の威圧感に耐えられなかったようだ。
どうりでマーニャはすぐにバスケットの中に潜り込んでしまったわけだ。
ボーニャなんて半分涙目だし。
「しかし王家に伝わる卵かぁ~。どんな卵なんだろう。」
まだ見ぬ卵に思いを馳せる。
「王家のぉ~卵はぁ~私たち鑑定士でもぉ~鑑定したことがぁ~ないんですぅ~。なのでぇ~どんなぁ~卵なんだかぁ~わからないんですよねぇ~。見たこともぉ~ないですしぃ~。」
「王家の奥深くに眠っているという卵の噂をきいたことがあるな。なんでも、怪物が孵るんじゃないかと言われている。」
ベアトリクスさんとザックさんがそれぞれ、王家にまつわる卵の話をきかせてくれる。
って、ほとんど噂レベルなんだね。
特にザックさんの話なんか、あくまで仮定の話だし。まさか、本当に怪物なんて孵らないよね。
「にゃぁ~ん・・・。」
ん?
ドアの方から猫の鳴き声が聞こえる。しかも、なんだか弱々しい鳴き声だ。
私は、ザックさんとベアトリクスさんに目で合図をして、ドアを開けた。
するとそこには一匹の可愛らしい猫がいた。
雑種のいわゆる茶トラと呼ばれている猫だった。
「どうしたの?」
訪ねてみるが、猫は「にゃぁ~ん。」とか細く鳴くばかりで、何を言っているのかわからない。おかしいな。私には猫様の下僕というスキルがあるのに。
猫様の下僕スキルがあれば、猫の言っていることがわかるようになるのに、目の前の猫が鳴いても何を言っているのかわからない。
いったい、どうしたことだろう。
「可愛いですねぇ~。」
「猫様いらっしゃいませ。こちらにどうぞ。」
ベアトリクスさんもザックさんも普通に対応している。特におかしなところもないようだ。
茶トラの猫もトボトボと四足歩行をしているが、なんだか歩き方がぎこちないような気がする。足でも怪我をしているのだろうか。
茶トラの猫はぎこちなくジャンプをして、テーブルの上に飛び乗った。そうして、テーブルの上に、小さな座布団らしきものを器用に敷くと、その上に手のひらサイズの卵型の丸い黄緑色の球体を置いた。
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