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二章

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「あの化粧水は全てベアトリクスさんに渡しておりまして・・・。ベアトリクスさん経由でベアトリクスさんの上司もしくは女王様にお渡しする手はずとなっておりまして・・・。」

「ええ。もう、手元にありますよ。それで、私がもらってもいいかしら?」

化粧水が今、手元にないことを説明するとベアトリクスさんの上司と思われる女性がすでに受け取っていると教えてくれた。その後の化粧水をどうすべきかということを確認されていることに思い当たる。

「それでしたら私は問題ありません。ですが、一度女王様に謁見する予定がございまして。もし、女王様から化粧水に関する沙汰があればそちらを優先させていただきたいのですが。あと、あのような化粧水を作ってしまったことに対して何か罰があったりするのではないでしょうか。」

どきどきしながら、女性に確認をする。
でも、女王様に謁見しないといけないということは、化粧水をどうするのか女王様に委ねる必要もあり、私の一存だけでは目の前の女性に渡して良いのか検討もつかない。
そのまま女性に伝えると、女性は目を大きく見開いてから「まあ。うふふっ。」といたずらっ子のように笑った。
隣からベアトリクスさんが、私の服の裾をツンツンと引っ張っている。
どうしたのかと、ベアトリクスさんを見ると、薄っすらとその額に汗をかいていた。

「目の前にぃ~いらっしゃる方がぁ~このレコンティーニ王国のぉ~女王様ですよぉ~。」

「えっ!?」

ベアトリクスさんが小声でこっそりと教えてくれる。
驚きすぎて、目の前の女性を凝視してしまった。
まさか、この美しすぎる女性が女王様だったなんて。
確かに女王様と言えば納得できるだけの威厳も気品も備えられている。
この女性が女王様でなければ誰が女王様なのだろうかというくらいだ。
まさか、こんな宿に女王様自ら来るわけがないという先入観から女王様ではないと思い込んでいた。

「じょ、女王様とは知らずにご無礼を・・・。申し訳ございませんっ!」

私はそのまま女王様に平謝りをする。

「うふふ。気にしないで。ちょっと新鮮だったわ。」

でも、女王様は気にしていないようで朗らかに笑っていた。
どうやら許してくれるようだ。
よかった。女王様が優しい人で。
目の前の女性が女王様だとわかったことで、先ほどまでベアトリクスさんが「来ちゃう来ちゃう。」と慌てていた理由がやっと理解できた。
何が来ちゃうのかと思ったら、女王様だったのね。
それは慌ててしまうよね。
謎がひとつとけてすっきりした。
って、謎は解けたけど、目の前に女王様がいるだなんて俄には信じられない。信じたくない。
だって、こんな着古した服を来ているし、化粧道具を使いきっちゃったから、メイクだってしてないし。
 挙げ句のはてには、女王様だって気づかなかったし。もう、穴があったら入りたいくらいだ。

「で?この化粧水は私にくれるのかしら?」

「はい!もちろんでありますです!」

女王様の言うことには逆らえないし、そもそもこんな騒動の種にしかならなそうな化粧水を持っていても仕方がない。
女王様なら正しく使用してくれそうだし、騒動になることはきっとないだろう。
そう思って化粧水は女王様に献上することにした。この化粧水が後々貴族の間で大騒動を引き起こすのだが、この時の私はまだ知るよしもなかった。

「うふふ。ありがとう。では、お礼になにを差し上げようかしら。やはりお金がいいかしら?それとも爵位?」

「お、お金!?しゃ、爵位!?」

女王様はそんな何気ない感じに告げてくるけど、爵位ってよっぽどのことだと思うんだけど。っていうか、化粧水に関してはおとがめなしなのだろうか。
もう、作らないようにとか言われるかと構えていたのだけれども。

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