211 / 584
二章
2ー92
しおりを挟むどんどんと釣り上がっていく金額に呆然とする。
だんだんとベアトリクスさんの表情も苦虫を噛み潰したようになってきた。
『みぃ~なぁ~さぁ~ん。これは~
化粧水一本のぉ~価格にぃ~なりまぁすぅ~。またぁ~、化粧水はぁ~お一人様各種一本までとぉ~させていただきまぁ~す。』
「30000!」
「35000!」
ベアトリクスさんがまだ化粧水があるということを告げてもまだまだ価格が上昇していく。
該当の金額で購入可能な人は手に持った手のひらサイズの番号が書かれたプラカードを頭の上に掲げているのだが、まだ一人もプラカードを下げない。
最終的には、掲げられているプラカードが10枚以内になれば落札確定だ。
最後までプラカードが上がっていた人、10人が落札者となる。
会場内には231人の参加者がいるが、今のところ誰一人としてプラカードを下げない。
もちろん、ベアトリクスさんも進行役だがちゃんとにプラカードを上げている。彼女もこの化粧水が欲しいようだ。
しかし、猫耳の需要半端ない・・・。
「50000!」
5万ニャールドになったら、少しプラカードの数が減ってきた。
まあ、減ってきたと言ってもまだ8割以上はプラカードを上げたままだ。
どこまで値が釣りあがっていくのだろう。
『流石、我の作った化粧水だな。どんどん値上がるがいい』
私の肩の上で蛇の姿のプーちゃんが踏ん反り返っている。
『マーニャの作った化粧水も負けないのっ!』
『ボーニャもっ!』
『クーニャも化粧水作るのっ!!』
プーちゃんが満足気に威張っているので、どうやらマーニャたちも闘争心が沸きあがったようだ。
自分たちも化粧水を作るとプーちゃんに対して闘志を燃やしている。
今度化粧水を作るときはマーニャたちが手伝ってくれるかなぁと期待する。
ほのぼのとマーニャたちを見つめていると、
「100000!」
ついに10万ニャールドまで金額が跳ね上がった。
とたんにベアトリクスさんが苦悶の表情を浮かべる。
『(もぅ~これ以上はだせないからぁ~。とっておきの追加情報を・・・。どうせ買えないんだったらぁ~金額が上がるだけあげてやるんだから~。)ちなみにぃ~、この化粧水でぇ~猫耳がぁ~生えると、なんとぉ~猫様がぁ~なんて言っているかぁ~わかるようにぃ~なりまぁ~す。それにぃ~ここにいるぅ~女性はぁ~猫耳ついてますぅ~。こんな風にぃ~なりますぅ~。参考にぃ~してねぇ~。』
んにゃ!?
猫の言葉がわかるようになるって効果は初めて聞いたんだけど・・・。もしかして、ベアトリクスさん、自分が化粧水購入したいから低価格で買えるように情報操作してた・・・?
なぁんて、まさかね・・・。
って、私に会場の視線が集中しているし!!ベアトリクスさん、余計なこと言わないで欲しいよ。
「猫耳・・・あんなにすばらしいのか・・・。」
「ぐふっ。何あれ。可愛すぎる。」
「触りたい・・・。」
「ヤバイ………。」
なんだか、会場中がざわざわとざわめいている。そうして、10万ニャールドと聞いてプラカードを下ろしていた人たちが一斉にプラカードを掲げた。
「110000!」
「150000!」
また、値段が上がり始めた。
今度は先程よりも金額が跳ね上がっていく。
ほんともう、どこまであがるんだろう。
「500000!」
『50万ニャールドですぅ~。ちょうどぉ~入札者9名ですねぇ~。じゃあ~今~、プラカードあげている9名の方にぃ~決まりですぅ~。』
ベアトリクスさんが終了の声をかけ、コーヒー味の化粧水はなんと50万ニャールドで落札された。9本分の価格ではなく1本分の価格だ。9本だと450万ニャールドだ。
いっきに私、お金持ち・・・。
信じられなくて、肩に乗っているプーちゃんの頬をつねる。
「・・・痛くない。やっぱり夢かな?」
プーちゃんの頬をつねっても全く私自身は痛くもなんともなかった。どうやらこのオークションは夢だったようである。
そうだよね。こんなに高値がつくわけがないもんね。
『マユ、プーちゃんの頬をつねってマユの頬が痛くなるわけないの。ばかなの?』
「あっ・・・。」
クーニャに突っ込まれて気づく。そうだった。プーちゃんの頬をつねったって私が痛いわけじゃなかった。
『続きましてぇ~。牛乳味のぉ~化粧水にぃ~なりますぅ~。こちらもぉ~お肌がぁ~つるつるにぃ~なりますぅ~。そして~、なんとっ!白い猫様のぉ~尻尾がぁ~生えますぅ~。これでぇ~、猫様とぉ~尻尾でぇ~挨拶できるようにぃ~なりますよぉ~。』
「ぶっ!!」
ベアトリクスさんの説明に思わず吹いてしまった。よかった、本当によかった。化粧水を興味本意で飲まなくて。飲んでたら猫耳と尻尾が両方生えて来ちゃってたよ。
って、コーヒー味と牛乳味の化粧水を混ぜてのんだらどうなるんだろう。味はコーヒー牛乳だよね。別々に飲んだから黒い猫耳の白い尻尾でちぐはぐだけど、混ぜてのんだら灰色の猫耳と尻尾になったりするのかな。
あれ、ちょっと試してみたくなったぞ。
誰か試して見てくれないかなぁ。
『あ、この化粧水はぁ~コーヒー味のぉ~化粧水とぉ~違ってぇ~猫様のぉ~言っていることはぁ~わからないけどぉ~猫様にぃ~言いたいことがぁ~伝わるようにぃ~なりますぅ~。』
なんだってっ!?
つまりやっぱりこの化粧水はコーヒー味と牛乳味を両方飲むことを想定されているような気がする。
ほんと、誰か試して見てほしい。
「・・・コーヒー味と牛乳味を混ぜてみたい。」
『はっ!マユさん~ナイスアイディアですぅ~!コーヒー味とぉ~牛乳味を~混ぜて飲んだらぁ~もしかするとぉ~猫耳とぉ~尻尾がぁ~両方生えてぇ~さらにぃ~猫様とぉ~会話がぁ~できるかもしれません~!ってことでぇ~開始値はぁ~先程のぉ~落札価格のぉ~半分のぉ~25万ニャールドからぁ~開始ですぅ~。』
ベアトリクスさんが声高らかに宣言すると会場中が熱気に包まれた。
なにやらみんなが興奮しているようだ。
さっき、落札できなかった組がとても悔しがっている姿が見える。そうして、落札した組は是非とも次も落札しようと算段しているようである。
「300000!」
「350000!」
「450000!」
こちらもあっという間に値段がつり上がっていく。みんなよくお金あるよねぇ~。と関心しながらオークションの進行を見守っていた。
でも、化粧水って毎回同じ効果にならないよねぇ。不思議だな。
それにしても、納豆味とコーンポタージュ味の化粧水はどんな効果があるんだろうか。
早くベアトリクスさん教えてくれないかなぁ。
43
お気に入りに追加
2,574
あなたにおすすめの小説
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
王宮を追放された俺のテレパシーが世界を変える?いや、そんなことより酒でも飲んでダラダラしたいんですけど。
タヌオー
ファンタジー
俺はテレパシーの専門家、通信魔術師。王宮で地味な裏方として冷遇されてきた俺は、ある日突然クビになった。俺にできるのは通信魔術だけ。攻撃魔術も格闘も何もできない。途方に暮れていた俺が出会ったのは、頭のネジがぶっ飛んだ魔導具職人の女。その時は知らなかったんだ。まさか俺の通信魔術が世界を変えるレベルのチート能力だったなんて。でも俺は超絶ブラックな労働環境ですっかり運動不足だし、生来の出不精かつ臆病者なので、冒険とか戦闘とか戦争とか、絶対に嫌なんだ。俺は何度もそう言ってるのに、新しく集まった仲間たちはいつも俺を危険なほうへ危険なほうへと連れて行こうとする。頼む。誰か助けてくれ。帰って酒飲んでのんびり寝たいんだ俺は。嫌だ嫌だって言ってんのに仲間たちにズルズル引っ張り回されて世界を変えていくこの俺の腰の引けた勇姿、とくとご覧あれ!
転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。
まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。
温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。
異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか?
魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。
平民なんですがもしかして私って聖女候補?
脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか?
常に何処かで大食いバトルが開催中!
登場人物ほぼ甘党!
ファンタジー要素薄め!?かもしれない?
母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥
◇◇◇◇
現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。
しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい!
転生もふもふのスピンオフ!
アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で…
母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される
こちらもよろしくお願いします。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる